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「2030年までに6千万人」の観光目標は「正しく」修正が必要

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

以下の様なニュースが飛び込んでまいりました。NHKより転載。

訪日外国人旅行者の消費額目標 1人当たり20万円に引き上げる案

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230209/k10013975131000.html

政府が計画している新たな観光振興政策の目標として、2025年の訪日外国観光客の消費を一人当たり20万円に引き上げることを目標とするという報。この価額はコロナ禍前の2019年の実績をおよそ4万円、25%上回る水準である非常に高い目標ではあります。

但し、昨年末の大幅な円安基調からは脱却したものの、いまだ1ドル110円前後であった2019年当時の為替水準と比べるとまだまだ大幅な円安である現在。訪日外国人観光客の購買力の相対的な高まりがあるのは事実であり、そこで目標を大きく掲げることは妥当な政策であると思われます。

一方で改めるべきは「2030年までに6000万人」と定めていた訪日外国人観光客数の数値目標。今回発表を控えている直近の政府の観光文書内では、未だ中国からの観光客の渡航制限がかかっていることを考慮し、客数目標は「19年水準超え」との表現に留めているとの事ですが、政府はコロナ禍前に掲げられていた「2030年までに6000万人」とされる観光目標は未だ降ろしていない状況にあります。

しかし、訪日外国人観光客数の増加は我々がコロナ禍に見舞われる2020年よりも前、2018年から2019年の時点で、3000全万人を超えたあたりから既に増加率が大幅に低減し、「頭打ち」が見えていたのが実情。

(出所:観光庁)

観光専門家の間では、コロナ禍が始まる前の段階で既に6000万人目標は達成不能であるとする言説が沢山出ていたのが実態であったわけで、寧ろこちらは適正な数字に引き下げることが必要であろうと思われます。実現不能な絵に描いた餅をいつまで掲げていても、現実的な施策の遂行には資しません。目標は正しく修正することで、初めてより実行力のある施策につながるわけです。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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