ゴジラに猫、恋や遊園地? みんなが大好きなストロベリーデザートブッフェの系譜と今
様々なテーマ
ゴジラ、猫、1980から1990年代、イギリス・フランス・ベルギー、ひなまつり、恋、森のパーティー、遊園地と聞いて、何を連想しますか。
それぞれには全く関連性がみられず、バラバラであるように感じられるかと思います。
しかし実は、全てがストロベリーデザートブッフェに関係しているのです。
- ストリングスホテル東京インターコンチネンタル「ザ・ダイニング ルーム」
「イチ・ゴジラ」/2019年1月15日~5月31日
- ヒルトン東京「マーブルラウンジ」
「ストロベリーCATSコレクション」/2018年12月26日~2019年5月中旬予定
- ヒルトン東京お台場「シースケープ テラス・ダイニング」
「きらきら★いちごドリーム」/2018年12月29日~2019年3月17日
- コンラッド東京 オールデイダイニング「セリーズ」
「いちごスイーツジャーニー」/2019年1月12日~4月5日
- 京王プラザホテル「樹林」
「ストロベリー ガールズセレブレーション」/2019年2月1日~3月31日
- ANAインターコンチネンタルホテル東京「シャンパン・バー」
「ストロベリー&ルビー ときめくスイーツブッフェ」/2019年1月15日~4月26日
- ホテル椿山荘東京「ル・ジャルダン」
「苺&ランチブッフェ ~森のストロベリーパーティー~」/2019年1月16日~3月20日の平日
- ヒルトン東京ベイ「ラウンジ・オー」
「ストロベリー・ワンダーパーク」/2018年12月29日~2019年3月31日の土日祝
どれもちょうど現在、東京のホテルで行われているストロベリーデザートブッフェのテーマとなっています。
テーマを重ねる
200以上の品種を開発し、世界でもイチゴが特に好きな日本人にとって、苺・イチゴ・ストロベリーといったキーワードは多くの消費者やメディアの注目を引きつけます。しかし、人気があってどこでも行われているので、他と差別化を図るために、ストロベリーデザートブッフェにさらなるーマが設けられているのです。
つまり、それだけストロベリーデザートブッフェが人気となっており、様々な試みが行われているといってよいでしょう。
では、そこまで支持されているストロベリーデザートブッフェとは一体何者なのでしょうか。
デザートブッフェの歴史を振り返ってみながら、ストロベリーデザートブッフェの進化についてみていきます。
デザートブッフェの流れ
ますデザートブッフェにおける時代の流れを簡単におさらいしてみましょう。
1980年代にヒルトン東京がデザートブッフェを始めたことが、日本における起点です。その頃はフェアが行われていませんでしたが、ゲストのリピート率を高めたり、メディアの注目を高めたりするため、2000年代始め頃からフェアが行われるようになりました。
ランチブッフェやディナーブッフェでは、北海道や九州、フランスやイタリアというように、地域や国がテーマとなることが多いですが、デザートブッフェではストロベリーやマロン、クリスマスやハロウィーンというように、食材やイベントがテーマとなるのが特徴です。
数あるフェアの中で爆発的な集客力を誇るのが、先に紹介した12月下旬から5月上旬にかけて行われるストロベリーフェア。開催ホテルのほとんどで、連日ほぼ満席となります。
物語性のあるデザートブッフェ
ホテルがデザートブッフェに磨きをかけていき、おいしいこと、種類がたくさんあることに加えて、フェアが魅力的であることが大切になってきました。
さらには、デザートそのものだけではなく、デザートを彩る装飾にも力を入れるようになり、ブッフェ台が重要性を高めるようになっています。
それと平行して物語性をテーマに掲げるようになりました。
マリー・アントワネットの時代や大正のお嬢様の部屋をイメージしたものから、オズの魔法使いやピーターラビットを再現したものまであり、装飾で表現することはもちろん、その中で描かれているシーンをデザートで創作したり、世界観と調和するスイーツの名前を付けたりしているのです。
SNSで発信する人が多い現代では、インパクトのある物語が拡散力を強めます。
ストロベリーデザートブッフェの系譜
では、ストロベリーデザートブッフェに関してはどのような変遷を経てきたのでしょうか。
イチゴの食べ比べを2005年あたりから始めたのが横浜ベイホテル東急「ソマーハウス」でした。今では数種のイチゴを食べ比べることができるのも当たり前という贅沢な時代となりましたが、その先駆けとなり、しかも、当時は8種ものイチゴを揃えていたことは実に衝撃的です。
ストロベリーデザートブッフェの転機となったのは、2010年にグランドプリンスホテル新高輪「マルモラーダ」で行われた「いちご3スタイルズブッフェ」でしょう。「マダムいちご」「オトナいちご」「森ガールいちご」とテーマを設けてストロベリースイーツを提供し、単調なるストロベリーデザートブッフェに一石を投じました。
ちなみに「マルモラーダ」は2017年4月に「スロープサイドダイナーザクロ」というブッフェレストランにリニューアルしています。
アーティスティックなストロベリーデザートブッフェ
ストロベリーデザートブッフェの大きな分水嶺となったのが、2014年にヒルトン東京「マーブルラウンジ」で行われた「ストロベリー・ピクニック」です。可愛らしくポップなストロベリースイーツと誰かに伝えたくなる鮮烈なプレゼンテーションでストロベリーデザートブッフェを革新しました。
その後もチャレンジは続きます。
2015年「ストロベリー・アート」、2016年「ストロベリー・エンジェル」、2017年「シルク・ドゥ・フレーズ」、2018年「ストロベリー・サイケデリック60s」と、アーティスティックで世の女性に響く企画を創り上げながらも、決して前年と同じことはせず、常に進化させているのです。
(ストロベリーデザートブッフェは年末から始まり、年をまたいで翌年に開催されることが多くなっていますが、「年」と表記する際には主となる開催期間である翌年を記載しています。たとえば、2018年12月末から2019年5月に開催する場合には2019年としています)
そして現在では、アーティスティックであったり、物語性を強く含有していたりし、SNSで共有したくなることが、ストロベリーデザートブッフェのテーマにおける大きなトレンドになっているのです。
王道のストロベリーデザートブッフェ
こういった流れに対して、補足しておきたいことがあります。
興味深いテーマを設けたストロベリーデザートブッフェが人気となり、目を引くようになっていますが、王道のストロベリーデザートブッフェも引き続き支持を得ているのです。
エグゼクティブペストリーシェフ鈴木一夫氏によるクオリティの高いスイーツが一堂に会するウェスティンホテル東京「ザ・テラス」には、コアなファンや熱心なリピーターがいることで有名で、「ストロベリーデザートブッフェ」でも開店前から長蛇の列ができています。
グランド ハイアット 東京「フレンチ キッチン」で行われている「桜&ストロベリー アフタヌーンティー ブッフェ」では、世界の製菓大会で活躍したパティシエたちを輩出するペストリーチームがスイーツを監修しており、エレガントな女性たちでいつも賑わっているのです。
ホテルニューオータニ「ガーデンラウンジ」の「サンドウィッチ&あまおうスイーツビュッフェ」では福岡県あまおうが食べられるとあって、品川プリンスホテル「DINING & BAR TABLE 9 TOKYO」の「Floating Strawberry Field」では高層階からの眺望もあって人気を博しています。
美しくておいしそうに見えるという文脈において、こういった王道のストロベリーデザートブッフェも十分にSNS映えしており、FacebookやInstagramに投稿されているのです。
斬新なコラボレーション
話を戻しましょう。
インパクトのあるテーマを掲げた2019年のストロベリーデザートブッフェを冒頭に挙げましたが、中でも特に斬新な試みとして考察しておきたいものがあります。
それは、ストリングスホテル東京インターコンチネンタル「ザ・ダイニング ルーム」で行われている「イチ・ゴジラ」です。
店内に大きなゴジラのオブジェが置かれていたり、ゴジラが連想されるスイーツを提供していたりと、前代未聞のイチゴとゴジラによる協業が行われています。
どうしてこのような企画が生み出されたのでしょうか。
マーケティング&PR部長を務める徳田依子氏は「ゴジラが最初に上陸したのが品川。ストリングスホテル東京インターコンチネンタルは品川にあるので、イチゴとゴジラをかけたら面白いのではないかということで、企画が持ち上がった」と振り返ります。
今年はゴジラが生誕65周年を迎える年であり、映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」が2019年5月31日に全世界同時で劇場公開される予定です。
ゴジラが世界規模で盛り上がりをみせる中で、こういったコラボレーションが行われるのであれば、必然的に多大な関心が寄せられることでしょう。
ストロベリーデザートブッフェは日本が世界に誇るキャラクタをテーマに据えるまでとなっているのです。
ストロベリーデザートブッフェのコト消費
デザートブッフェ、それもストロベリーデザートブッフェは、ホテルにとって極めて重要なコンテンツです。
なぜならば、それなりに単価が高く客席数も多い商品であったり、将来的にホテルが狙っている婚礼や記念日で訪れる若い女性を獲得できたり、見栄えのよさやお得感からメディアに取り上げられたりするからです。
それだけに、ストロベリーデザートブッフェでは、消費者の好奇心を刺激したり、新しい体験ができたりするテーマを設けなければなりません。
テーマを聞くだけで「何が食べられるのだろう?」と関心を持たせたり、写真を見たら「SNSでシェアしよう!」と思わせたりする内容でなければ差別化できないのです。
ストロベリーデザートブッフェはもはや、日本人が好きな苺・イチゴ・ストロベリーを使った様々なおいしいスイーツを食べられるだけの場所であってはなりません。
エンターテインメントとして体験できる場所であるべきなのです。食べたらなくなってしまうモノではなく、そこにいるだけで誰かに伝えたくなるコトへと昇華される必要があります。
そこにいるだけで幸せであるかどうかを感じられるか、それがストロベリーデザートブッフェの価値となるのです。