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地球沸騰化時代に求められる対策とは?国連最新報告書「2030年に28~42%排出削減が必要」

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
'Cop28 UAE' のロゴ(写真:ロイター/アフロ)

 今日、30日からアラブ首長国連邦のドバイで、COP28(国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議)が始まる。会期は13日間で、「脱化石燃料」や「再生可能エネルギーの普及」、「GGA(適応世界目標)」*などが大きなテーマとされる。今年7月の世界の気温は、12万年ぶりの高さで、世界各地で大干ばつや大規模な山火事等が発生し、グテーレス国連事務総長も「もはや地球温暖化ではない。地球沸騰化の時代に入った」と語るなど、いよいよその深刻さが顕在化してきた中で、今回のCOP28でどのような合意がなされるかは、極めて重要なものとなる。これに先立ち、UNEP(国連環境計画)は、CO2等の温室効果ガスの排出量や各国の排出削減目標などから今後の影響の分析や求められる対応についての報告書「Emissions Gap Report 2023(排出ギャップ報告書2023)」を今月20日に公開した。同報告書にそって、温暖化対策の実相と今後の影響について解説する。

*温暖化対策において、「適応」とは、温暖化の進行で生じる被害を軽減するための対応策(例えば水害対策等)を意味する。この適応についての世界的な目標を定めようというのが、「適応世界目標」(Global Goal on Adaptation: GGA)。

〇2030年に28~42%の削減が必要

 『排出ギャップ報告書2023』の内容をごく簡潔に要約すると、世界の温室効果ガス排出削減は、わずかな進展が観られるものの、現状の対策は全く不十分であり、今世紀末には産業革命以前と比較して「世界平均気温は2.5~2.9度上昇する」と予想している。これは、破局的な温暖化による悪影響を防ぐため世界平均気温の上昇を2度より十分低くし、可能な限り1.5度に抑えるというパリ協定の目標よりも、非情に悪い数字だ。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書では、世界平均温度が2度上昇すると、50年に1度の極端な気温が発生する確率が産業革命以前と比較して13.9倍に増加すると予測している。2度の上昇ですら影響は甚大であるのに、現状の各国のNDC(パリ協定に基づく国ごとの温室効果ガス排出削減目標)のままでは「2.5~2.9度上昇する」というのだから、各国はNDCを大きく見直す必要があると言えるだろう。『排出ギャップ報告書2023』は、2030年時点での求められる温室効果ガス排出削減量は、2度に抑えるためには28%削減、1.5度の場合は42%削減する必要があるとしている。

〇記録的暑さ、先進国のみならず全世界的な対応が必要

 『排出ギャップ報告書2023』がまとめた、今年の暑さは衝撃的だ。産業革命前の水準より1.5 度以上上回る気温が今年10 月初めまでに86 日間記録されたという。9月は記録的な最も暑い月であり、世界の平均気温は産業革命前の水準より1.8度も上昇したとのことだ。また、世界の温室効果ガスの排出も過去最大規模で2022年の排出量は、57.4 ギガトンCO2e *とになったという。

*1ギガ=10億、CO2e=CO2換算。

今年8月にギリシャで発生した大規模な山火事
今年8月にギリシャで発生した大規模な山火事写真:ロイター/アフロ

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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