小倉トースト50食のツワモノも。「小倉トーストスタンプラリー」を盛り上げたのはオジさん世代だった!
「小倉トーストの日」=9月10日制定を目標にスタンプラリーを開催
「9月10日を『小倉トーストの日』に!」
こんな野望を掲げて今年2月に発足した小倉トースト普及委員会。同会が主催する食べ歩きイベント「小倉トーストスタンプラリー」が6月末まで開催されました。
スタンプラリーは名古屋を中心に愛知、岐阜、静岡の喫茶店49店舗が参加し、期間は4月29日~6月30日のおよそ2ヵ月。各店で小倉トーストを食べてスタンプを集め、10個集めるとステッカーおよびイベント参加証が進呈されるというものでした。
スタンプラリーの目的のひとつが、9月10日(オグトー)を「小倉トーストの日」として記念日登録すること。参加店で小倉トーストを1食食べるごと15円が寄付に回され、1万食×15円=15万円が記念日登録費用15万円にあてられるという仕組みとなっています。
委員会発足時に取材した筆者は思わず「1万食とは大きく出ましたね!」とツッコミを入れたのですが、果たしてこの数字はクリアされたのでしょうか?
(関連記事:「『小倉トーストの日』制定へ普及委員会が発足。野望は名古屋めし界の下克上!」 2023年2月28日)
残り5日で2000食。厳しい状況に応援モードが加速!?
筆者自身、スタンプラリーの一参加者としてせっせと喫茶店めぐりを楽しんでいたのですが、期間を通して興味深かったのは活発なSNS投稿でした。毎日多くの人が「#小倉トーストスタンプラリー」のハッシュタグをつけて小倉トーストの写真を投稿。参加店も、オリジナルの小倉トーストの写真など積極的に投稿するケースが目立ちました。
ラリー参加者を熱くしたのが、目標達成までのハラハラ感でした。最後の土日が終わった6月26日時点の累計食数は8000食余り。平日5日間で残りおよそ2000食とかなり厳しい状況でした。
それでも、「みんなで頑張れば何とか…?」という微妙なハードルの高さが参加者たちの心に火をつけたのか、ここから怒涛のラストスパートが起こります。ラリー参加者にとってはスタンプカードがいっぱいになるスタンプ10個がひとつの目標。しかし、最終盤では「1万食達成に貢献したいから」と、既にスタンプ10個を達成した人や、残り数日で10個には届かないという人も盛んに小倉トーストを食べ歩き、全体の食数増につなげようという動きが活発に。参加者にとってのラリーの目標が、自分のためではなく、この活動全体のためにとシフトし、俄然一体感が強まっていったのです。
参加店全店舗からの結果が集計され、Twitterで結果が発表されたのは7月6日。
「約2か月間で皆さんが召し上がった小倉トーストは…10395食!!」
かくして、主催者と参加者の願いが通じ、1万食の目標は見事達成されたのでした…!!
小倉トースト普及委員会インタビュー。「1万食は余裕だと思っていました」
小倉トーストスタンプラリーはなぜこんなに盛り上がったのか? そして次なる野望は? 小倉トースト普及委員会委員長の高野仁美さん、副委員長の阿部充朗さんにお聞きしました。
――小倉トースト1万食の目標達成おめでとうございます!
高野さん・阿部さん(以下「高野」「阿部」)「ありがとうございます!」
――本当に1万食に届くのかハラハラの展開でしたが、正直クリアできると思っていましたか?
高野「6月半ばを過ぎたあたりでまだ6000食台。3日前の時点で『このままだと9000食前後での着地となりそうです」とツイートしたように、かなり厳しいと思っていました」
阿部「始める前は余裕で行ける!と思っていたんです。私が運営する『喫茶七番』では月間約400食出るので、参加40店舗前後×2ヵ月ならそんなに難しい数字ではないと考えました」
高野「GWにスタートしたので最初は無茶苦茶いいペースだったんです。特に『喫茶モーニング』さんのような観光のお客さんが多い店は好調で、“1店舗で1万食行っちゃうじゃん!”と思ってました」
――結果的に、思いのほか苦戦した、という印象だったのですね。その原因は?
阿部「普段から小倉トーストを名物にしている強力な人気店から参加を取りつけられなかったこと。某大手も担当者レベルでは好感触だったものの、準備期間が短かったこともあって最終的に協力を得られませんでした」
--参加は49店舗。参加店全体の傾向、小倉トーストがよく出るお店の特徴は?
高野「岐阜や、遠くは静岡まで広範囲のお店が参加してくれました。喫茶店に食材を卸す焙煎業者さん、パンメーカーさんからのご紹介で、古くから続くお店が参加してくれたのもうれしいことでした。単品メニューだけでなく、モーニングに小倉トーストをつけられるお店はたくさんのスタンプが集まりました」
参加者で目立った中年男性層。50食達成のツワモノも!
――参加店の反応は?
阿部「『初めての若いお客さんがわざわざ来てくれた』という声もあり、効果があったというご意見をたくさんいただきました。この活動に協力したいという思いを持ってくれたお店も多く、スタンプがたくさん集まらないと『あんまり貢献できなくてごめんね』とおっしゃってくれたりして。参加してもらえただけでありがたいのに恐縮してしまいました」
――参加したユーザーの傾向や反応は?
阿部「スタンプ10個達成者は92人。うち全店舗コンプリートした人が1名。その人たちを中心に、ユーザーは大きく3つの層がありました。1つは名古屋めしを含むローカルカルチャーに関心が高い中年男性層。この層は非常に熱心でスタンプ10個の達成者も多かった。49店舗すべて+1軒を回ったスタンプカード5枚達成者が一番のツワモノでした。2つ目はあんこ、カフェコンテンツが好きな若い女性層。3つ目は喫茶店の常連のシニア層。SNSには関心がなく表には現れないのですが、この層の人たちがなじみの喫茶店で小倉トーストを食べてくれたのも食数の底上げにつながりました」
高野「SNS発信が多かったのはやはり若い女性層です。特に会期後半はこの層を中心にツイッターのインプレッションがグッと増えました。ひと言で小倉トーストといっても店ごとに形状も違えば、もちろん見た目も異なります。参加店もアカウントを持っているお店が多く、小倉トーストはSNSと相性がいい、と感じました」
“小倉トーストはみんなのもの!” 喫茶店文化の発展に
――小倉トースト普及委員会の今後の活動は?
高野「まずは9月10日を『小倉トーストの日』に申請登録の手続きを進めます。同時に9月10日当日に記念イベントを開催するので、何をやるのか考えなきゃ(笑)」
阿部「スタンプラリーと、そこで一番スタンプが押されたお店を表彰する『小倉トーストアワード』は来年以降も続けられたら、と思っています」
――あらためて今回の「小倉トーストスタンプラリー」をふり返って感じたことは?
阿部「スタンプラリーも含めて、小倉トースト普及委員会の目的は、単に小倉トーストをたくさん食べてもらいたい、というよりもこの地域の喫茶店文化を盛り上げること。参加者の皆さんに多くの店に足を運んでもらえたので、その目的もある程度かなえられたかと思います。また、参加店の店主さんも、結構他のお店に小倉トーストを食べに行ってくれたそうなんです。喫茶店って家族経営でお休みも少ないので、他のお店とあまり交流がない。お店同士で交流する機会につながったのもよかったです。そもそも小倉トーストについてあれこれ考えたり話題にしたるすること自体、面白い。みんなでそれを体験できたのがよかったです」
高野「『小倉トーストの日』が制定されたら、いろんなお店が自由にこれを販促に活かしてもらえたらと思っています。“小倉トーストはみんなもの!”。スランプラリーを通してそれをあらためて実感できました!」
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「小倉トーストはみんなのもの」。小倉トースト普及委員会委員長・高野さんの言葉は、まさにスタンプラリーを通してお店や参加者が実感できたことでした。
小倉トーストは名古屋で大正末期に生まれたと伝えられるれっきとした100年フード。まさしくみんなが愛してきたからこそ続いてきた郷土の食文化です。若者だけでなく、筆者を含めてオジさん世代が反応したのはその証。おしゃれなカフェのスイーツはちょっと気恥ずかしいけれど喫茶店の小倉トーストなら堂々と食べられる。そんなかねてからある甘党男性からの支持が、スタンプラリーの盛り上がりにも反映されたといえるでしょう。
「小倉トーストの日」制定を話題作りのひとつとして、名古屋発祥の元祖喫茶スイーツが、より多くの店で愛され続けることを期待しましょう!
(写真撮影/すべて筆者。円グラフ、棒グラフの図案は小倉トースト普及委員会提供)