東京都調布市で道路陥没。原因は下水道管か工事による地下水障害か
下水道管の老朽化に起因する道路陥没事故は年間3000件超
東京都調布市で道路陥没が発生した。調布市のWEBサイトには、「本日(10月18日(日曜日))、調布市東つつじケ丘2丁目21付近において、市道路線の地盤沈下の事象が発生しました。なお、現在状況を確認中です。」(最終確認2020年10月18日18時40分)とある。
現時点では調査結果を待つしかない。
しかし、都市部で頻発している道路陥没は、老朽化した埋設管が原因であることが多い。埋設管の破損部などから土砂が流入することで発生する。下水道管の老朽化に起因する道路陥没事故は年間3000件超発生している。
埋設管が原因であった過去のケースを見てみよう。
2015年、東京都世田谷区瀬田の国道246号の歩道が陥没。下水道管のつなぎ目がずれて、周辺土砂が管に流入したことが原因。路面に1辺約30センチの穴が開き、その下に縦約1メートル、横約50センチ、深さ約50センチの空洞ができた。
2013年には、北区赤羽の区道が下水道管の破損により陥没し、歩いていた近所の男性が転倒し一時意識不明にな。道路表面1メートル四方に深さ10センチのくぼみができ、地下2メートルに埋めた下水道管2本を接続する箇所に穴が開いて土砂が流れ込んだ。
同じく2013年、大阪府豊中市内で市道に深さ2.5メートルの穴が突然でき、幼児を抱えながら自転車を押していた30代の女性が転落し、2人とも負傷。1966年ごろに敷設された下水道管が劣化し、事故前数日降り続いた雨の影響で陥没が拡大した。
下水道管は上水道管と違い、重力を利用して生活排水、汚水(トイレやお風呂の水)を流す。管自体を坂道になるように敷設し、一定の距離ごとにポンプを設置し、下水を汲みあげて坂道を流し、下水処理場まで運ぶ。日本には合計46万キロ、地球11周以上の長さの下水道管が埋まっている。
コンクリート製の下水道管は詰まったりゆるんだりすると硫化水素ガスが発生し、酸化すると硫酸になり、下水管を溶かす。この状態が続けば下水管に穴が開き、周囲の土砂が吸い込まれて空洞ができる。そこに車両などの重みなど、何らかの衝撃が加わると管が破損し陥没事故につながる。
すでに腐食の激しい下水道管は全国に約10万カ所以上あるとされ、それが時とともに増加している。下水管は敷設から50年程度、下水処理場の施設は15年程度で更新する必要があり、施設の老朽化が徐々に深刻化している。
道路の地下工事との関係は?
一方で東日本高速道路(NEXCO東日本)が現場の地下で工事をしていることとの関係を指摘する声もある。こちらも調査をしないとわからないのが現状だ。
工事による道路陥没で記憶に新しいのは博多駅前道路陥没事故だ。
2016年11月8日、JR博多駅前で大規模な道路陥没事故が発生した。現場は新設予定の駅の近くで、地下トンネルの口径を広げる作業中だった。事前に掘削した幅9メートル、高さ5メートルのトンネルを上に向かって切り広げる作業中、午前4時25分頃、トンネル上部の岩盤がはがれ落ちる「肌落ち」という現象がはじまった。作業員がコンクリートを吹き付けて固めようとしたが効果はなく、午前5時頃、トンネル上部から水が噴き出した。地下水が大量の土砂とともに流れこみ、15分後、轟音とともに道路が陥没し、ガシャーンという音とともに信号機が倒れ、穴は一気に広がった。地下にはガス管、上下水道管などが埋まっていた。穴の大きさは、長さ約30メートル、幅約27メートル、深さ約15メートルあった。
現場は粘土が固まってできた岩盤で、事前の調査では掘削に耐え得ると考えられていた。一般的にトンネルは硬い岩盤層に掘られる。現場の地下は水を通さない硬い岩盤のうえに、水を含んだ砂層があった。
地下水というのは地下のある部分に溜まっているわけではなく、砂の粒と粒の間を流れながら上部の地層を支えている。水を通さない岩盤の底に傷がつくと、水が土砂とともに下に落ち、道路も陥没する。今回の事故もこれではないかという見方もある。
トンネルの掘削法はいくつかある。周囲を補強しながら硬い岩盤を掘り進む「ナトム工法」、軟らかい地層に円筒形の掘削機を押し込んで壁面を固めながら掘り進む「シールド工法」、地表から直接掘り進める「開削工法」などだ。
いずれの場合も、地下水についての考慮が必要だ。水と一緒になると土砂は流れやすく工事は難しくなる。地下水の調査は当然必要だが、地層の状況などから地下水の存在を正確に把握するのは難しい。今回の現場では、円筒形の掘削機がトンネル内を掘り進む「シールド工法」が採用されている。シールド工法は地下水の流入防止に優れるとされ、都市部での工事に多用される。
道路の陥没が起きると、危険であるのと同時に、地下に埋設されている水道やガスなどのライフラインが寸断され、日常生活に甚大な影響を与える。その割には対症療法的な対策しかとれていない。原因の究明と予防が急務である。