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3都市が米政権を訴訟へ ── NY市とトランプ政権との闘い

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
トランプ政権を訴えたニューヨークのビル・デブラシオ市長。(写真:REX/アフロ)

ニューヨークのビル・デブラシオ市長は10月22日、全米3都市を、連邦資金を受けるに値しない「アナーキスト管轄区域」指定にするとしたトランプ政権に対し、訴訟を起こすと発表した。

3都市はニューヨーク市のほか、ワシントン州シアトル市とオレゴン州ポートランド市。これらの都市の治安は新型コロナウイルスのパンデミック以降、特にブラック・ライヴズ・マター騒動が起こった春ごろから、悪化の一途をたどっている。

  • トランプ大統領「ニューヨーク(の状態)は最悪だ」

デブラシオ市長はこの日の会見で「トランプ政権の対応は道徳的に間違いであり、法的にも容認できない」と、資金提供に及び腰の国の政策は違憲であると強く非難し、3都市で協力し合って政権と争っていく考えを示した。

米司法省は9月下旬、この3都市を「アナーキスト管轄区域」(アメリカの法律で前例のない呼称)に指定していた。該当の3都市は連邦資金を受けるに値しないとみなされ、ニューヨークだけでも120億ドル(約1兆円2000億円)が宙に浮く可能性がある。訴状はシアトルで提出される。

連邦資金がストップし、治安悪化のNYはこの先どうなるのか?

筆者はこの半年、度々このような記事を発信してきた。

実際のところ、ニューヨークが無法地帯になったかと言えば決してそうではないけれど、「良き時代」を知っている者として今の現状を俯瞰してみると「崩壊」そのものだ。特に今年に入って、発砲事件を始めとする凶悪犯罪が頻繁に起こっている。「昨日は〜人が撃たれ、〜人が亡くなった」というニュースが毎日耳に入ってくる。事件の多さからかBLM運動の影響か、「面倒なので、この程度なら関与しない」と見て見ぬふりをする警官もたくさん目にする。

また今年の発砲事件には、特徴がある。数も増えたが、問題は起こっている場所。今年は度々、マンハッタンの中心地でも発生しているのだ。

18日夕、マンハッタン14丁目の主要な駅で、24歳の男性が首元を拳銃で撃たれる事件が起きたばかり。

グランドセントラル駅(東京駅のような主要な駅)構内でも、8月の土曜日、白昼堂々と発砲事件が発生。その後犯人は逮捕されたものの...。

このような状況の中、街にとって必要な連邦資金が得られないとなると、それこそ「ヴィシャスサイクル(負の連鎖、悪循環)ではないか」と市民は危惧している。

20日には、連邦政府が承認した可能性のある新型コロナのワクチンの安全性に疑問を呈したニューヨーク州クオモ知事に対して、トランプ大統領が「下層社会」と罵倒したばかりだった。(注:もともとトランプ氏とクオモ氏は仲が悪く、ツイッター上でお互い不満を言い合い、罵りあっている)

クオモ知事のスポークスマン、リッチ・アッツォパルディ氏はこのようにコメントした。

「大統領は自分の無能さから離れたいと思いその度に攻撃対象を変えるが、いつもうまくいっていない。ニューヨーカーは愚かではない。アメリカ人は愚かではない。どうぞ2週間後に迫った、フロリダでの引退生活をお楽しみください」

トランプ氏が昨年、生まれ故郷のニューヨークからフロリダに引っ越した際の記事

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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