Yahoo!ニュース

コロナ禍によるダメージ回復が最も遅い都市は東京/ビッグデータで読み解く

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:イメージマート)

7月14日、政府の新型コロナウィルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、国内感染者が5ヶ月ぶりに9万人を超え、新型コロナウィルスの感染拡大が第7波の入口に至ったとの認識を示した。まん延防止等重点措置などの行動制限については今のところ必要ないとしているが、一方で政府は今月より開始予定としていた全国旅行支援の施策実施を少なくとも8月末まで延期すると発表している。

感染再拡大によって再び緊張感が増してきた我が国の経済状況であるが、一方で国内主要各都市のコロナ禍からの回復はどの様な状況になっているのだろうか。ヤフー・データソリューションが提供する「DS.INSIGHT」のビッグデータを元に紐解いてゆきたい。

今回比較の対象としたのは、東京、福岡、大阪、札幌、仙台の中心市街地へ当該区域外から訪れた来訪者数データ(2019年10月1日~2022年7月14日)である。本稿では、「中心市街地」の範囲を各地域の中核ターミナル駅(東京:東京駅、福岡:博多駅、大阪:大阪駅、札幌:札幌駅、仙台:仙台駅)が所在する「区」と設定した。

上記対象都市の中でコロナ禍からの回復が最も遅いのが東京都の中心市街地である。東京駅の所在する東京都千代田区では、コロナ禍発生以降、最も来訪者数が減少したのが2020年4月から開始した第一回目の緊急事態宣言の時である。この時期はコロナ禍発生前の2019年10月冒頭と比較して、当該区域への来訪者数がおおよそ43%程度にまで減少した。その後、2020年の5月末に行われた緊急事態宣言の解除によって来訪者数の回復は起こったが、最新のデータにおいても未だにコロナ禍発生前と比べると来訪者数が80%以下に留まっており、コロナ禍からの回復の立ち遅れが見て取れる。

2019年10月1日来訪者数を100%とした場合のその後の来訪者数変動

出所:ヤフー・データソリューション 提供の「DS.INSIGHT」データを元に筆者作成
出所:ヤフー・データソリューション 提供の「DS.INSIGHT」データを元に筆者作成

一方、今回の調査対象都市においてコロナ禍からの回復が最も好調であるとみられるのが仙台市の中心市街地である。仙台駅の所在する仙台市青葉区でも同様に、コロナ禍発生以降、最も域外からの来訪者数が減少したのが第一回目の緊急事態宣言時であるが、同期間における来訪者数はコロナ禍発生前(2019年10月冒頭)と比べるとおおよそ70%と、減少率は30%程度に留まっている。また、その後の回復も順調であり、域外からの来訪者数は2020年11月にはほぼコロナ禍前の水準にまで戻ってきている。その後、政府が発令する行動制限要請の度に来訪者数の増減は見られるが、2022年7月現在の最新データでは来訪者数がコロナ禍発生前(2019年10月冒頭)のおおよそ95%前後の水準にまで戻してきている。

2019年10月1日来訪者数を100%とした場合のその後の来訪者数変動

出所:ヤフー・データソリューション 提供の「DS.INSIGHT」データを元に筆者作成
出所:ヤフー・データソリューション 提供の「DS.INSIGHT」データを元に筆者作成

また、今回の調査対象都市の中で他都市とは異なる来訪者数の変遷を示したのが札幌市の中心市街地である。札幌駅の所在する札幌市北区では、他都市と異なりコロナ禍以降で来訪者数が最も減少したのは第一回目の緊急事態宣言時ではなく、2022年の1月から2月末までの期間である。この時期は全国的にまん延防止等重点措置が敷かれていた時期であるが、札幌市ではこの煽りを受けてこの時期唯一の集客イベントであるさっぽろ雪まつりが無観客での開催となった。この時期の札幌市は、さっぽろ雪まつりを除くと真冬の観光オフシーズンにあたる時期であり、この中止を受けて札幌市北区では、来訪者数がコロナ禍発生前(2019年10月冒頭)比で70%前後の最低となった。札幌市の中心市街地における来訪者数のその後の回復も鈍く、最新の2022年7月現在のデータではコロナ禍発生前(2019年10月冒頭)比で80%前後と、東京の中心市街地に次ぐ来訪者数の回復の遅れが見て取れる。

2019年10月1日来訪者数を100%とした場合のその後の来訪者数変動

出所:ヤフー・データソリューション 提供の「DS.INSIGHT」データを元に筆者作成
出所:ヤフー・データソリューション 提供の「DS.INSIGHT」データを元に筆者作成

東京都・特に今回、基準点として選定した東京駅が所在する千代田区は丸の内・秋葉原・有楽町など大規模商業地および観光地を抱える区域でありながら、同時に日本国内屈指の大企業が本社を連ねるオフィス街である。この地域での来訪者の回復が遅いのは、これら大企業においてリモート勤務環境が整えられ、コロナ禍による行動制限措置が明けた後もそれが続いていることが、一因として想定される。この種の地域では、既にコロナ禍による行動変容が定着している地域であるとも考えられ、今後は当該地域での商業のあり方そのものに関しても、その変化に合わせた再考が必要となってくるものと考えられる。

その他、今回の調査対象都市とした大阪、福岡の来訪者数データも文末に示す。

ヤフー・データソリューション | DS.INSIGHT

※この記事は、Yahoo!ニュース 個人編集部、ヤフー・データソリューションと連携して、ヤフーから「DS.INSIGHT」の提供を受けて作成しています。

※ヤフー・データソリューションは、ユーザーのデータを統計データとしたうえでデータの可視化や分析結果を提供するサービスであり、個人を識別できるデータ(パーソナルデータ)については、ユーザーから新たな同意がない限り外部に提供することはありません。

2019年10月1日来訪者数を100%とした場合のその後の来訪者数変動

出所:ヤフー・データソリューション 提供の「DS.INSIGHT」データを元に筆者作成
出所:ヤフー・データソリューション 提供の「DS.INSIGHT」データを元に筆者作成

2019年10月1日来訪者数を100%とした場合のその後の来訪者数変動

出所:ヤフー・データソリューション 提供の「DS.INSIGHT」データを元に筆者作成
出所:ヤフー・データソリューション 提供の「DS.INSIGHT」データを元に筆者作成

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

木曽崇の最近の記事