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防災散歩のすすめ

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
「多摩川決壊の碑」1974(昭和49)年の水害を機に創られた(写真:アフロ)

 新型コロナウィルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言の延長が検討されています。外出自粛要請が続く中、再近よく耳にするのは「運動不足」「つまみ食い」そして「体重計が怖い」です。

 ステイホーム。確かに今は、最優先すべき過ごし方です。ただし、体重増加や体力の低下により、別の疾患を発症してしまっては本末転倒だと思うのです。そこで、提案です。

 「今こそ、散歩を!」それも、ただふらっと歩くのではありません。目的を持って歩くと、とても勉強になるのです。

歩きの効用

 散歩には、いつくか効用があります。ダイエット、体力維持、気分転換はもちろん、晴耕雨読の概念を身につけられる点です。

 晴耕雨読とは「晴れた日は外で(身体を使い)田畑を耕し、雨の日は家で(頭を使い)読書に勤しむ」ことです。天気に合わせて行動を変えて、ストレスの少ない、それでいて充実感のある生活を送るコツなのです。昔の人は本当に、賢いと思います。

 目的を持って歩くと、ある種の発見があります。例えば、東京都心の移動は、地下鉄を乗り継ぐよりも、歩いたほうが早い場合があること。正直、スマホの乗り換え案内を調べたり見たりする時間があれば、さっさと徒歩で行ったほうが効率的と感じることがあります。

 もし、江戸時代に戻ったとすると、都心の有名処は意外なほど距離が近いという発見もありました。例えば、築地から江戸城、皇居までは三〇分くらいです。かつて築地の魚は一時間もすれば、江戸城に届いたと考えられるのです。江戸城、皇居を起点に考えると、予想外に近い。そうした、距離感を散歩で掴むことができるのです。

過去から学ぶ

 さらに、「防災散歩」という考えがあります。洪水や河川の氾濫など何かあった時、どういう経路で逃げたら良いのか?を普段からシュミレーションしておくのです。国土地理院の資料にもありますが、地震や土砂災害など自然災害遺跡などが各地にあるので、それらを散歩で巡ることも可能でしょう。

国土地理院による「自然災害伝承碑」の代表事例

 散歩をすることによって、防災や過去の知見を学び取ることができます。さらに、自分の住んでいる場所を少し離れて歩くことで、別の街とどのように繋がっているか、途中でどんな避難場所があるかなどを、より実態的に捉えることができるはずです。

 ただし、散歩の場合も3密(密閉、密集、密接)、特に人と至近距離になりすぎないよう気を付けて下さい。やむを得ず、人とすれ違うこともありますから、互いにマスクを着けるなどマナーは守って欲しいと思います。

 

 「人の行く裏に道あり花の山」という格言がありますが、人が普段見過ごしている道には、新しい発見もいっぱいあります。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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