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被害長引く茨城県常総市大水害 東北大震災(原発事故)の教訓活かし、早期再建に向けた支援と取組を

吉川彰浩一般社団法人AFW 代表理事

茨城県常総市で起きた大水害から6日目を迎えました。

常総市三坂町の鬼怒川流域で起きた決壊、その後決壊した水が常総市広域までおよんだ事は広く社会に伝えられました。

現在、多くの方が「命を守る」行動をする状況から、生活再建を目指すフェーズに移っています。

筆者は中学時代までは常総市で育ち、その後福島第一原発で働いた経緯を持つ者です。

東北大震災、原発事故を経験し、そして常総市大水害の最中にいる境遇だからこそ、お伝えできる「早期復興」への提言をつづります。

1.現地ニーズに合わぬ過剰な支援物資は、返って現場に混乱を招きます。

水害から日を追うごとに、必要な物が限定されてきました。未だに現地ニーズが確認されず、いらない支援物資が届く状況が続いています。災害ボランティア、地元ボランティアの手を借り、仕分けに追われています。物より人が欲しいとの声も続いています。これは東北大震災でも起こったことです。せっかくのご厚意が実は現地混乱へと繋がっています。

2.今必要な物は交通手段

水害直後は交通網がかなり限られ、物資の調達に困難を極めました。現状は数キロ走れば日常的に物資が手に入る環境があります。

大きな理由には近隣都市が今回の水害で無傷だったことが挙げられます。ですが広域冠水により移動手段である車を失った方が大勢います。足が無いため物資調達が困難な状況が続いています。

3.外見からは分からない被害長期化の問題

1)継続する広域での断水

現在も冠水が続いている地域に浄水場があるのが原因です。水が引いた後に修理が入るので、見込みでこれから10日程度、断水が続く状況にあります。水が引いた地域では家屋清掃が始まっていますが、断水により家屋清掃が遅々として進まぬ状況が起きています。

2)継続する広域での停電

未だに水が完全に引いた地域でも停電が続いています。漏電による火災の防止と感電防止のためです。広域での被害であること、未だ冠水地域があること、一軒事の漏電確認が終わることが復旧の条件でもあることから、停電回復には数日程度かかる見込みです。

日々ニュース映像をご覧になられている皆さんは、常総市の水の引き具合から「もう大丈夫のようだ、支援はいらないだろう」と感じられるかもしれません、ですが断水と停電、そして日々を追って解消される冠水状況により新な問題も起きています。

3)窃盗被害が増加

原発事故により避難区域となった地域では窃盗被害が相次ぎました。これは家に戻れない環境が生み出したものです。断水、停電により、水が引いても家に戻れない状況が続いている現在、同じように窃盗被害が各地で起きています。原発事故後、窃盗被害を減らしたのは警察の方々だけのおかげではありません。自主的な自警団が作られ、地域住民の「自分達の町は自分が守る」その思いが結果が窃盗被害を減らしました。被害を少しでもくいとめるには、地域連携が必要です。

4)長引く避難所生活

通常の水害と違い数日程度の避難生活では済まなくなっています。水は引いても家に戻れる環境にない、ライフラインの電気、水道が使えない、車もない、清掃も出来ない状況では避難所に身を寄せるほかない方がいます。長引く避難所生活でストレスが溜まります。東北大震災、原発事故でも、長引く避難所生活でのストレスによる健康被害は課題となりました。避難生活者へのケアが課題となってきています。

5)懸念される社会のイメージと実態との格差による支援不足と復興の遅れ

当初甚大被害区域だった石下地区、決壊の模様は社会に大きな衝撃を与えました。その時、現在も甚大被害が続く水海道地区は何ら問題はありませんでした。その後、石下地区よりも低い立地にある水海道地区へと水害の範囲は広がり、今も冠水が続くほどの甚大被害に至っています。常総市に訪れるのは所縁のある方ばかりです。日々の冠水地域の縮小は、現地の人間たちも目を見張るスピードです。報道が入れるようになった頃には、石下地区は日常を取り戻しつつあり、水海道地区は背丈にも及ぶ床上冠水状態を見られる部分が大分減りました。

被害の実態が社会に正しく伝わっているとは思えない状況にあります。懸念されるのが、実態(真の被害)は現地しか知らないことが復興の遅れに繋がることです。東北大震災により津波被害に遭われた地域、原発事故により避難区域となった地域でも、実態とイメージとの格差が現在に渡り尾を引き、復興が遅れています。

4.早期生活再建に必要な支援を

現在も停電と断水という状況を抱えつつ、冠水した家屋清掃が続いている状況にあります。これほどの災害は未だかつて経験がありません。それ故に現地で「常総市を取り戻す」と復興に取り組む方々には、次のステップ「生活の再建」に向けて動ける状況にはありません。

床上以上の浸水をした家屋には想像以上の修繕費用がかかります。生活の基盤である家を取り戻すには「物資」ではなく「資金」が大きな課題になっていきます。常総市へのこれからの支援は「募金」へと切り替えて頂けることが、早期復興へと繋がっていきます。

常総市水害義捐金の口座が開設されました。

災害によって甚大被害を受けた”ふるさと”を取り戻すには多くの手助けを必要とします。それを東北大震災で全国の方が認識されました。

現在も福島県で原発事故により失われた”ふるさと”を取り戻す過程に、身を投じる者として伝えたいのは、何よりも必要なのが現地の人の助け合う繋がりです。

被害が長引く災害被災地では、高齢者、子供達、障害を持った方といった弱者へのケアが必要になります。そして被害程度によって生まれる格差は、地元の人間でしか埋めることが出来ません。

それは細部まで目が行き届くのは、長年そこで暮らし、コミュニティを形成した人間にしか出来ないことだからです。

早期復興には、適切な支援と地元通しが助け合う取組の形成が必要です。

一般社団法人AFW 代表理事

1980年生まれ。元東京電力社員、福島第一、第二原子力発電所に勤務。「次世代に託すことが出来るふるさとを創造する」をモットーに、一般社団法人AFWを設立。福島第一原発と隣合う暮らしの中で、福島第一原発の廃炉現場と地域(社会)とを繋ぐ取組を行っている。福島県内外の中学・高校・大学向けに廃炉現場理解講義や廃炉から社会課題を考える講義を展開。福島県双葉郡浪江町町民の視点を含め、原発事故被災地域のガイド・講話なども務める。双葉郡楢葉町で友人が運営する古民家を協働運営しながら、交流人口・関係人口拡大にも取り組む。福島県を楽しむイベント等も企画。春・夏は田んぼづくりに勤しんでいる。

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