令和5年の大相撲で飛び出した「珍しい決まり手ランキング」1位は令和の業師が見せたあの技!?
令和5年の大相撲の本場所すべての取組が終了した。生中継で瞬時に技の名前を口にするのは実況アナウンサーの仕事だが、思いもよらない技が出て判断に迷うこともある。珍しい決まり手がアナウンスされた瞬間に場内が大きくどよめくのは、大相撲ファンが喜んでいる証拠。そこで、昨年に続いて、今年の幕内の土俵で見られた「珍しい決まり手」をランキング形式で紹介したい。
3位 割り出し(11年ぶり)
春場所10日目に翠富士が翔猿に勝った技で、幕内では平成24年秋場所に稀勢の里が舛ノ山に決めて以来11年ぶり。四つに組んで、片方の手で相手の二の腕をつかむか、はずに当ててもう一方の手を上手か下手でまわしを取るか、小手に巻いて寄り切って勝つという特殊技だ。「寄り切り」とよく似ているが、両力士の体が割れたように離れるので「割り出し」と呼ばれる。翠富士自身は「勝手にそうなりました」と振り返る通り、狙うのは難しい。稀勢の里は平成19年秋場所の栃乃洋戦を含めて二度決めていることから、おっつけの強い力士に出やすいとも言えよう。なお、翠富士は「肩すかし」を得意としており、秋場所ではこの技で挙げた6つの白星が光る。
2位 大逆手(13年ぶり)
九州場所3日目に琴ノ若が明生を相手に見せた「大逆手(おおさかて)」は、平成22年初場所に把瑠都が垣添に決めて以来、幕内では13年ぶりに見られた珍しい技だ。大きく肩越しに相手の上手を取り、体を反らさずに、つかんだ腕の方向に投げて勝つ技で、「ひねり手」に分類される。この技にはある程度の腕の長さが必要となり、琴ノ若は1分を超える長い相撲で、土俵際に寄られた際に肩越しの右上手をひねって逆転に成功した。祖父に元横綱、父に元関脇を持つサラブレッドは九州場所14日目までは優勝争いに加わり、5度目の敢闘賞も受賞。今年は6場所すべて勝ち越しを決めて三役の座をキープしており、来年はいよいよ初優勝と大関昇進に期待がかかる。
1位 頭捻り(25年ぶり)
そして、第1位は宇良が昨年の「伝え反り」に続いてランクインとなった。夏場所12日目の翔猿戦で見せた「頭捻り(ずぶねり)」は、平成10年春場所に旭豊が寺尾に決めて以来、幕内では四半世紀ぶりに出た珍しい技である。相手の肩か胸に頭をつけて食い下がり、相手の差し手を抱え込むか、ひじをつかんで手と首を同時に捻りながら倒す技で、読んで字の如く「ひねり手」のひとつ。業師で知られる宇良だが、土俵でこの技を出したのは初めてで、大学時代に同級生にやられていた経験が活かされたそうだ。なお、宇良は九州場所を西前頭筆頭で勝ち越しており、来場所は三役昇進が濃厚。来年も珍しい決まり手でファンを楽しませてくれることに期待したい。
以上が、令和5年の幕内で見られた「珍しい決まり手」の上位3つである。日本相撲協会によれば、過去5年の決まり手は「押し出し」が25.7%で最も多く、次いで「寄り切り」が24.3%と、この2つの技で半数を占めている(例えば、今年引退した栃ノ心が得意とした「吊り出し」はわずか0.1%にしかすぎない)。八十二手と言われる決まり手の中から、目の前で見た技がどれに当てはまるのか、決まり手を考えながら土俵を見るのも大相撲の楽しみのひとつなのである。
※文中敬称略
※年号は和暦を採用