今年も運転開始 「流氷物語号」 に見るJRと地元との関係
北海道の道東地区、釧路と網走を結んで走るJR北海道の釧網(せんもう)本線は、JRが存続は困難とする路線の一つに数えられていて、大変厳しい状況に置かれています。
でも、この路線は国立公園である釧路湿原の中を走り、丹頂鶴を間近に見ることができたり、オホーツクの海岸線を走るなど世界に誇れる景観を有し、知床半島や阿寒、摩周への入口として、上手に使えば地域資源の掘り起こしのコンテンツとしてたいへん有効な路線です。
その釧網本線の網走-知床斜里間37.3kmで昨日(1月29日)から観光列車「流氷物語号」が走り始めました。
出発式、運転開始日の流氷物語号の写真が入りましたのでご紹介いたします。
網走駅で行われた出発式でJRの運転士さんに手渡されたのは地元の子供たちからのメッセージ。
ちびっ子たちの「がんばってね!」のメッセージはこの列車を地域をあげて応援している様子がうかがえます。
この観光列車の運行をお手伝いするのは網走市観光ボランティアを代表するMOTレール倶楽部(石黒明代表)の皆様。
JRが地域を盛り上げるために観光列車を走らせてくれることをありがたいと、JRと網走市が協力しながら、MOTレール倶楽部の皆様が自分たちでいろいろな企画をして観光客におもてなしをするなど、列車の運行を盛り上げる活動をしています。
車内で沿線の紹介をしたり、記念写真の撮影のお手伝いをするのはもちろんですが、
列車の中でファミコンソフト「オホーツクに消ゆ」とコラボしたオリジナルグッズなどの各種お土産品を車内販売したり、
車内の衛生管理のお手伝いなども行っています。
MOTレール倶楽部の活動につきましては、以前にも筆者がニュースに書いておりますのでご参照ください。
≪手を振って観光列車をお見送り≫ 北海道の豪華観光列車と地域住民の新しいかかわり方(2021年8月26日)
こうした地域の皆様方の応援活動に対してJR北海道の皆様方も独自のおもてなしで対応。
知床斜里駅では駅員さん総出で列車のお見送りです。
トロンボーンで「大空と大地の中で」を演奏する駅員さん。
これは観光客としたら感動ものですよね。
沿線住民とJRの職員の方がこうして協力しながら、手作り感満載の観光列車を盛り上げているのがこの釧網本線なのです。
こういうところは行ってみたくなりますね。
JR沿線では地域住民が二言目には「JRは何やってるんだ。」「ちゃんと列車を走らせろ。」と言った要望ばかりで他力本願的なところがあると筆者は感じていますが、どんなに厳しい状況に置かれても、まずは自分たちで何とかしようと頑張っている地域の皆様方がいて、そういう地域と一緒になって列車を運行しているところもあるのだということを全国の皆様方に知っていただきたくこのニュースを書きました。
都会の人たちが地域にあこがれるのは、素晴らしい景色やおいしい食材はもちろんですが、こうした地域の皆様方の温かいおもてなしや頑張っている姿に感動するものです。
オミクロン株が厳しい状況の中、なかなか出かけることはできないかもしれませんが、こうした手造りの観光列車が北海道の片隅で走っているんだと、遠い北の国に思いを馳せることができれば、それはすでに旅の始まりなのではないでしょうか。
オホーツク海に面した北浜駅。
まもなくこの海にも流氷がやってきます。
浜小清水駅に隣接する道の駅「はなやか小清水」では流氷物語号の関連グッズも販売しています。これなら乗らなくても応援できそうです。
観光鉄道は乗っていただいてナンボではありますが、車で旅行する観光客にとっては列車に乗るというのはなかなかハードルが高いものです。
でも、こういう形でちょっと立ち寄って記念グッズ類が購入できれば売り上げにつながるのはもちろんですが、列車に乗るというハードルも低くなるのではないでしょうか。
観光列車を地域への集客のコンテンツと考えた場合、乗車運賃以外にどうやって観光客の財布のひもを緩めるかという仕掛けづくりが地域に求められると筆者は考えます。
観光客がお金を使いたくなるようなお土産品や食事、あるいは泊まりたくなるような宿泊施設があれば、鉄道が地域に利をもたらすインフラとして機能するようになる。
そう考えると、列車には乗らずに写真を撮りに来るだけの「撮り鉄さん」たちだって、地域にとっては立派なお客様だと筆者は考えています。
※本文中に掲載した写真はMOTレール倶楽部さん、大熊一精氏の撮影によるものです。(すべて1月29日撮影)