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≪手を振って観光列車をお見送り≫  北海道の豪華観光列車と地域住民の新しいかかわり方

鳥塚亮大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長

JR北海道が伊豆急(静岡県)の特別車両を借りて運行する「ザ・ロイヤルエクスプレス 北海道クルーズトレイン」が去年に続き今年もスタートしています。

札幌を起点に十勝、知床、富良野で宿泊する3泊4日の回遊ツアーで、ぐるりと北海道を一周するその名の通り「クルーズトレイン」ですが、乗車料金はお1人様70~90万円とかなりお高めの設定にもかかわらず、なかなかの人気を博しているようです。

こういう観光列車はすべてプランニングされたコースを巡るため、なかなか地域住民の皆様方との接点がありませんが、自分たちの地元にせっかくこういう列車が走るのだからと、積極的に活動をしているグループがあります。

オホーツク海で列車に手を振ろう

網走市に拠点を置くMOTレール倶楽部(石黒明代表)は地域の皆様方に呼び掛けて、地元釧網(せんもう)本線で一番景色が良い場所で列車に手を振ろうというキャンペーンを展開しています。

3泊4日のコースのうち、釧網本線の網走地域を走るのは毎週日曜日。

「せっかくJR北海道が自分たちの路線にこんなに素晴らしい列車を走らせてくれるのだから、自分たちとしてできる限りのことをして列車と乗客の皆様方におもてなしをしたい。」(石黒代表)

ということで、初日の8月15日、2回目の22日と列車がオホーツク海に沿って走る浜小清水駅-北浜駅間の絶景区間で、一般の住民の方々を集めて手を振る活動を行いました。

釧網本線の列車の中でおもてなしをするMOTレール倶楽部の皆様。左が石黒明代表。(筆者撮影)
釧網本線の列車の中でおもてなしをするMOTレール倶楽部の皆様。左が石黒明代表。(筆者撮影)

旅先という知らない土地で、通過するだけの場所ですが、地元の皆様方が総出で歓迎してくれる。

窓越しに手を振るだけの交流ですが、これは乗客の皆様方にとっても思い出に残るような嬉しいことなのではないかと思います。

撮影 近藤憲治氏
撮影 近藤憲治氏

撮影 奥山優樹氏
撮影 奥山優樹氏

撮影 千葉英介氏
撮影 千葉英介氏

撮影 MOTレール倶楽部
撮影 MOTレール倶楽部

撮影 MOTレール倶楽部
撮影 MOTレール倶楽部

こうして地元の皆様方がオホーツク海に沿って走る絶景区間でわずか1分足らずの通過時間中に一生懸命列車に手を振っているのです。

鉄道会社というのは会社と乗客だけの関係ではありません。どうやって地域に根付いているかが問われる商売です。

今の日本の田舎では住民の皆様方は日常生活では列車に乗って出かけるという機会はほとんどないのが実情ですが、だからと言って「乗らないから廃止する」という短絡的議論は「そのやり方ではうまく行かない。」ということは昭和の時代に結論が出ています。

令和に生きる私たちは、先人たちが残した鉄道という資産をどうやって上手に使って地域の衰退を止めるかが問われています。

そういう意味で網走市のMOTレール倶楽部の皆様方の取り組みは、先進的な試みとしてきちんと評価されるべきではないでしょうか。

プロジェクトを伝えるMOTレール倶楽部のポスター。
プロジェクトを伝えるMOTレール倶楽部のポスター。

今、JR北海道には会社再建ができるかどうかが問われていますが、このように地域と一体となった取り組みをどうやって全道に広げていくことができるかが、会社再建のカギになると筆者は考えます。なぜなら、地域に愛される会社にならなければ企業に未来は無いからです。

新型コロナウイルスの感染が広がっています。9月26日までのあと5回、何とか運行を継続して地域の皆様方が応援できることを願っています。

北海道の皆様、頑張ってください。

大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長

1960年生まれ東京都出身。元ブリティッシュエアウエイズ旅客運航部長。2009年に公募で千葉県のいすみ鉄道代表取締役社長に就任。ムーミン列車、昭和の国鉄形ディーゼルカー、訓練費用自己負担による自社養成乗務員運転士の募集、レストラン列車などをプロデュースし、いすみ鉄道を一躍全国区にし、地方創生に貢献。2019年9月、新潟県の第3セクターえちごトキめき鉄道社長、2024年6月、大井川鐵道社長。NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」顧問。地元の鉄道を上手に使って観光客を呼び込むなど、地域の皆様方とともに地域全体が浮上する取り組みを進めています。

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