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内閣官房カジノチーム、解散の危機か!?

木曽崇国際カジノ研究所・所長

早朝に目が覚めてメールを開いたら、以下の記事に関して海外から問い合わせがガンガン入っているのですが。。以下、GGR Asiaからの転載。

内閣官房カジノチーム、解散の危機か!?

Japan Cabinet casino task force might be disbanded

http://www.ggrasia.com/japan-cabinet-casino-task-force-might-be-disbanded/

A special task force of public servants set up to drive the progress of Japan’s casino policy might have to be disbanded, further complicating and possibly further delaying the process, a Japanese source with direct knowledge of the situation told GGRAsia.

日本のカジノ法制を進捗させるために組成されていた特任官僚組織が解散させられるかもしれない、そして更に法案進捗が遅延し、混乱をきたすかもしれない、GGR Asiaに対して日本の関係筋が語った。

先のロイターによる報道(参照)からボチボチと問い合わせが入っていたのですが、本当に関連業界までもを巻き込んで文字通り大騒ぎの様相です。一応、断っておくと上記GGR Asiaの記事は、「日本の関係筋」とする人物のコメントを引いただけの完全なる憶測記事です。

関係筋とされる人物が、官房チームが解散する理由として挙げているのは「根拠法がない中でチームを維持するのは難しいのではないか?」という事なのですが、そもそもこのチームは根拠法がない中で総勢数十名という規模で組成され、これまで維持されてきたワケで、これが再び「根拠法がない」ことを理由にして急に解散させられるなんて事が有り得るのでしょうかね。勿論、状況に応じてチームの組成が変えられるという事はあると思いますが。。

カジノ業界では「●●が候補地として内定」的な情報も含めて、この種の様々な憶測記事が出がちなのですが、こういうものに一喜一憂しても仕方がないわけで、粛々と情報を集めながら「事実」に基づいて柔軟にアクションを行ってゆくしかないわけです。

ただね、問題はこういう混乱を引き起こしている「そもそも論」の部分の問題です。以下、3月11日に報じられたロイターからの転載。

焦点:カジノ法案が瀬戸際に、上程先を国交委に変更する案も

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0M70Y520150311

カジノを含む統合型リゾート(IR)の運営を解禁するための法案(IR推進法案)が、瀬戸際に立たされている。IRを推進する議員連盟は、法案の付託先をこれまでの内閣委員会からほかの委員会も視野に検討し、可決・成立を目指すが、審議入りの時期は未定。[…]

「モメンタムはもう去った」(ゲーミング担当アナリスト)との認識も、少数派ではない。岩屋幹事長は、現状について「議連として大変危機感を持っている」と焦りをにじませる。IRの関係者は、5年後の東京オリンピックまでに国内でカジノを開業するのは、物理的、時間的に不可能とみる。

しかし、岩屋氏は「どこかの施設が五輪までに開業し間に合うことが、五輪後の吸引力をキープすることにつながる。そこから逆算すると、あまりモタモタできない」と、2020年を開業のターゲットとする旗を降ろすつもりはないようだ。

冒頭のGGR Asia、そして上記ロイターも含めて「もうダメなんじゃないか」という憶測を呼んでいる根本の原因は、議連が「日本のIRは東京オリンピックと同時開業」なんていう旗を立ててこれまで我が国のカジノ合法化と統合型リゾート導入を推進してきた故です。この点に関して私は長きに亘って「オリンピックとの同時開業なんてもはや無理だし、その必要もない」という主張をし続けてきたワケですが、どうしてもこの「オリンピックと同時」という旗を降ろせない/降ろしたくない人達が居る。その方々が議連の基本方針の中にまでその方針を無理やり押し込み、未だに意固地になって離さない、というのが実情です。

一方で、もはや実務的にどう計算してみても、オリンピックまでに統合型リゾートを開業させるには相当無理があるわけで、そうなってくると当たり前のように「2020年までに開業は無理?」→「モメンタムはもう去った」→「官房チームも解散か?」などと、連鎖的に憶測が広がる。それが、今回の一連の海外報道を呼んでいるわけです。

【参考】

海外事例にみるカジノ開業までの現実的タイムライン

http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8697242.html

これは、昨年から何度も本ブログ上で主張してきた事であって、もはや繰り返しにしかならないのですが、我が国の統合型リゾートは原則的に「アフターオリンピック」の振興策として開業目標が設定されるべきものであって、オリンピックと同時開業は必要ありません。

そもそも、我が国では少なくともオリンピックまでは公民合わせて様々な開発事業は目白押しですし、観光に関しても今の為替水準が大きく変わらない限りは一定の活況が続くことは容易に予想されます。一方で、これら開発の前提となる建築労働者や建築資材は慢性的な供給不足からの価格高騰の環境にあるワケで、そこにわざわざ照準を合わせて新たに大きな観光開発事業をぶつけてくる必要はない。

「オリンピックと同時開業」を主張する論者たちは、世界各国からやってくる観光客に他の日本の魅力として統合型リゾートも紹介するのだと息巻きますが、オリンピックがいかに大きなイベントだと言えども、パラリンピックまで含めて二か月足らずの短期間のイベントです。

一方、我が国の観光振興には「2030年までに訪日外国人3000万人」という大きな目標があるワケで、2020年なんてのはその観光目標にとっては通過点にしかすぎない。近年の計画は、なんでもかんでもオリンピックに紐づけて語りがちですが、私からすればもうすでに開催が決まったオリンピックなんかよりも、その後に来る「アフターオリンピック」の経済停滞をどのように乗り切るのか?を考える方がよほど重要で、そこに統合型リゾートの照準を定めずして「何が観光振興の為のIR導入か?」と思います。

この辺は完全に過去エントリの繰り返しになってしまうのでここでは深く突っ込みませんが、ご興味のある方は以下の記事をご参照ください。

カジノはオリンピックまでに必要か?オリンピック後に必要か?

http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8546298.html

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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