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日本人が海外旅行を躊躇する一因?思わず発狂するほど「厄介」な日本帰国に必要なもの(コロナ禍の体験記)

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
日本の検疫時に渡された資料(欧米入国時にはない)。(c) Kasumi Abe

今年の3〜4月にかけてコロナ禍初となる日米渡航をした筆者。国境を跨ぎ、この2年で落ち込んでいた渡航者数が徐々に復活していることを肌で感じた。

出発地のロサンゼルス国際空港で出発3時間前の夜10時、すでにチェックインカウンターには長蛇の列ができていた。コロナ禍では必要書類が何せ多いため、皆早めに来たようだ。搭乗するのは日本の航空会社だったので、日本人らしき人も見かけた。東南アジアの人も経由のために日本に渡航するようだった。搭乗すると座席は隣が1人開いた状態でゆったりしていた。同列の日本人女性は駐在員の娘夫妻の産後ケアで3ヵ月間西海岸に滞在し、その帰りだという。

外国人に対して観光目的の入国を認めていない日本は鎖国状態と聞いていたが、到着した羽田空港には意外と外国人がいる印象だった。

コロナ禍3年目、日本も含め世界は着実に前進しているようだ。

ただ国内では、多くの日本人が今もなお海外旅行に躊躇していると聞く。理由として、新型コロナの感染を心配してというのはあるだろう。しかし80%以上の人がワクチン接種を済ませた今、理由はそれだけではなさそうだ。

コロナ禍の渡航は、以前はなかった手間時間お金がかかる。一言で言えば、厄介な作業が増えた。海外に行く!という熱量が必要で、リスクも孕んでいる。これらも一般の人々が渡航へ二の足を踏む一因になっているかもしれない。

本稿では、筆者が準備段階や入国時に思わず発狂しそうになった面倒な渡航書類などを備忘録として記しておく。数年後に「そんなこともあったな」と笑って読み返す日を願って...。

日本帰国に必要なもの(渡航条件)

コロナ禍の渡航にかかるのは膨大な「手間」と「時間」

前回の記事で、日→米への渡航は、ワクチン接種などの「条件」をクリアすれば、実にシンプルで簡単だと説明した。

それでは楽しいアメリカ旅行が終わり、今度は日本へ帰国するときの話をしよう。

コロナ禍の日本への入国は(たとえ日本人であっても)準備入国時の手続き煩雑だと感じた。昨年欧米を渡航した経験からも、日本だけが特別に込み入った条件を設けている印象だ。

近い将来、外国人に観光目的の入国を認めても、このような複雑なプロセスが継続されていく限り、外国人は尻込みし日本旅行に二の足を踏むだろう。

コロナ禍において、日本政府が日本人を含む帰国者・入国者に対して、入国時の条件として求めているものは主に以下の通り。(パスポートなどはコロナ前と同様なので割愛)

  1. 健康居所確認アプリ(My SOS)のインストール、アカウント登録、情報入力
  2. 接触確認アプリ(COCOA)のインストール、アカウント登録、情報入力
  3. スマートフォン位置情報の設定
  4. 新型コロナの陰性証明書(出発前と到着後の2回)
  5. 誓約書
空港検疫のイメージ写真(写真は20年、成田空港の様子)。22年羽田空港でもこのようなチェックポイントが「永遠」に入国者を待ち受けた。
空港検疫のイメージ写真(写真は20年、成田空港の様子)。22年羽田空港でもこのようなチェックポイントが「永遠」に入国者を待ち受けた。写真:REX/アフロ

健康居所確認アプリ(My SOS)

入国者の居所を確認するためのアプリ。

厳しい水際対策の一環として日本は引き続き入国後の待機期間を設けており、どの地域から入国するか、またワクチン接種が完了か否かで待機期間が異なる。

アメリカからの入国は、ワクチンのブースター(3回目)接種が完了していれば、3月1日より待機日数がゼロになり、筆者もその恩恵を受けた。よって日本滞在中に筆者のMy SOSにビデオ通話がかかってきたことはなかった。

一方、ブースターを含むワクチン未接種者や感染拡大の地域からの入国者は、入国後に一定の待機が求められている。参照

スクリーンショットは筆者が作成。
スクリーンショットは筆者が作成。

接触確認アプリ(COCOA)

陽性者と接触した可能性について通知を受け取ることができるアプリ。

スクリーンショットは筆者が作成。
スクリーンショットは筆者が作成。

このようなアプリのインストールは欧米への入国には一切求められないものだ。「アプリか〜。しかも2個も...。日本は手強いな」というのが正直な気持ち。しかし日本入国にはマストだ。やらねば!と奮起。

筆者の旅程は、羽田到着の1時間半後に国内線搭乗だ。しかし入国時、空港検疫で待っているのは、実に長い作業だった。飛行機が羽田に到着しても、国際線トランジット客の優先降機のため、私のような国内線客は座席での待機が続き、ヤキモキした。我先に降りようと試みた乗客もいたが、客室乗務員にぴしゃりと阻止されていた。

20分ほど待っただろうか、筆者もやっと飛行機を降りることができ、到着ゲートには国内線乗り継ぎ客の1人として名前が張り出されていた。

兎にも角にも国内線の乗り継ぎまで時間がない。だから空港検疫〜入国審査をスムーズにするため、ファストトラックで事前に必要事項(ワクチン証明書など)を入力し、写真データを送り、事前審査も完了していた。すべては「完璧」なはずだった。

なのに、第一関門でつまづいた。

筆者のスマホだけがなぜか空港のWi-Fiに接続できず、アプリの登録情報が見られないトラブル....。係員は「この問題は初めて見ます」と言いながらタブレットがあるテーブルに誘導し、再び一からの入力を求めてきた。Wi-Fiのせいで事前入力しておいた時間と労力が台無しだ。無機質な作業台で途方に暮れた。しかし私だけではない。左右にも仲間がいた。同様につまづいた外国人集団(&一部日本人)が頭を抱えながら入力している。時折舌打ちが聞こえてきた。この作業(ロスタイム)に2、30分ほどかかった。(結局のところ、My SOSの登録済みQRコードが必要だったわけで、筆者のようにならないためにスクリーンショットを取っておくことを勧める)

しかし、これはその後永遠とも言えるほど長〜く続く、ベルトコンベア式の検疫関門の始まりに過ぎなかった。それぞれの関所(チェックポイント)で多くのスタッフが我々入国者を待ち受け、次々に書類を提出したり、新たな書類を手渡されたり・・・。(コロナ禍で入国者のために働いてくださっているスタッフの方々に感謝しております!)

スマートフォン位置情報の設定

2種類のアプリを使用するためには、スマートフォンの位置情報(グーグルマップなど)の設定・保存が求められた。スマホ自体を持っていない人は空港で自費でレンタルしなければならないというルールもある。本当に厄介。これも日本だけ。

厄介と言えば、事前準備の問い合わせもそうだ。書類不備は入国拒否となり飛行機に搭乗できない可能性があるという情報を耳にしたので、事前に情報を入力する際、アプリ入力がうまくできない箇所がいくつかあり、問い合わせ先とされているところにメールを送信したら、返信で「質問はこちらへ」とまた別のメールアドレスに誘導された。質問を再送信したところ「当日現場で解決する」的な返答がきた。こんな不毛なやりとりにも辟易した。

新型コロナの陰性証明書

出国前72時間以内に検査し、結果が陽性であれば飛行機に搭乗できない。また日本入国時に再度検査がある(欧米入国時は再度の検査はない)。入国時の検査で陽性なら、当然だが隔離される。

検査方法も、日本はRT-PCR法などの核酸増幅検査(NAAT)などと「指定」している。

その上、検査証明書も「指定」している(欧米入国には指定フォーマットなどない)。厚生労働省の所定フォーマットに現地医療機関が記入し、署名または押印したものが有効ということだ(任意フォーマットでも記載内容が適切であれば認められるようだ)。

厚生労働省が指定する所定のフォーマット(記入一例)。(スクリーンショットは筆者が作成)
厚生労働省が指定する所定のフォーマット(記入一例)。(スクリーンショットは筆者が作成)

ちなみに、筆者が日本への出発前に受けたPCR検査は、ニューヨークの路上に立っている簡易テントの検査場で受けた。料金は、日本の所定フォーマットの検査証明書の発行も含めて無料だった。

読者から「どこ?」という問い合わせがきているが、近所にある検査場を2、3箇所回って、対応してくれる所を見つけただけであり、別に筆者が受けた所のみならず、対応してくれるところはほかにもたくさんあるはず。滞在中に自分の近くの検査場(市内そこかしこにある)を回って、直接確認すると良いだろう。

この1年で雨後の筍のように次々とNYにオープンしている仮設のコロナ検査場(注:筆者がここで検査を受けたわけではありません)。(c) Kasumi Abe
この1年で雨後の筍のように次々とNYにオープンしている仮設のコロナ検査場(注:筆者がここで検査を受けたわけではありません)。(c) Kasumi Abe

ちなみに日本のみならず世界中どこでも、コロナ禍での渡航は、出発日の〜日前に受けるコロナ検査が求められ、日本行きの場合は結果が出た翌日に所定フォーマットの検査証明書の発行のために再度出向く必要がある。検査&証明書のための時間とお金と労力がかかることにも筆者は辟易している。

合格発表を待つかのような長い検査結果待ち

話を、筆者が到着した羽田空港の検疫に戻そう。

次々と関門(チェックポイント)を突破し、最後は新型コロナの抗原検査コーナーへ。この再度の検査で「陽性」にでもなったら日本で隔離されるから、これから搭乗する国内線の航空券も今後の予定もすべておじゃんだ。お金も時間も無駄になる。自分で行うように言われ説明を読みながら採取した唾液検査の試験管を、神に祈るような気持ちで係員に渡す。

結果が出るまで、大展示場のように広い待合室で時差ボケの中、ボ〜と待機。暇なので周りの人と会話。岩国の米軍基地の米兵や、ブラジルからやって来た女性英語講師と話したが、彼らも就労目的の来日のようだ。

筆者の乗るはずの国内線はすでに出発した。それでもここを通過しなければ日本には入れないわけだから、冷静さと辛抱強さが求められる。自分の番号がスクリーンに映し出されるのをじっと待つ。まるで受験の合格発表のような緊張が走る。1、2時間待っただろうか。ついに自分の番号が呼ばれた。

ドキドキしながら発表を聞きに行く。「陰性」の紙が手渡される。「やった!」。まるで受験に合格した時のように安堵した。

長旅で疲労困憊だが心はうきうき。長い長い廊下をさらに歩を進め、最後の関所、入国審査までやっと到達した。

無事に国内線に乗れたのか?

筆者が予約していた国内線は国際線と同じ航空会社だったため、カウンターで相談したらすんなりと一番早い国内線に無料で変更してくれた。よって羽田空港到着後、当初の予定の3時間遅れで、無事に国内線に搭乗することができた。

これが可能か否かは、購入した航空チケットのポリシーによるだろう。

まとめ

書類の準備は一度やってしまえば何となくコツを掴めるが、未経験の段階ではたくさんの資料を読み込んで理解し、事前の準備と作業をする必要があり、辟易した。よってコロナ禍の渡航にはこの辺の辛抱強さと、国を跨ぐんだ!という熱量が必要となってくる。

(日本人であっても)入国拒否を免れるために、入国者は以下のような資料を読み、理解し、入力し、事前審査を受け、準備万端で本番(空港検疫)に臨むべし(!)。

資料の「一例」(すべてではありません)

新たな水際対策措置

入国後の自宅等待機期間の変更等について

ファストトラック

そして忘れてはならないのが、リスク。

筆者は結果的にすべてのコロナ検査で陰性だったため、スケジュールは予定通りだったが、「陽性」結果にでもなれば飛行機に搭乗できず、延長滞在となり、スケジュールが大きく変わってくる。会社員だと帰国できないことで、会社に迷惑がかかるかもしれない。

また、キャンセルができないポリシーの航空券であれば、買い直しが必要となるなど追加のお金も相当かかってくる。コロナ禍での渡航は「陽性」になった場合を考え、リスクヘッジを考えておくことが必要だ。

最新のニュースでは、経済財政諮問会議で経済活性化のために、民間議員から「観光目的の入国を段階的に再開すべき」との提言があり、入国手続きの煩雑さや空港での待機時間の長さの解消の必要性も訴えられた。

筆者も一連の入国プロセスを経験した立場から大いに賛成。日本の入国作業が欧米並みに簡素化されることを望んでいる!

  • 本稿の情報はすべて2022年4月29日現在

(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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