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もはや「安さ」が売りではない。定期借地権付きマンションに起きている方向転換とは

櫻井幸雄住宅評論家
「パークコート渋谷ザ・タワー」は、完成した建物内部が報道陣に公開された。筆者撮影

 渋谷区役所の建て替えによって誕生した定期借地権付き(以下、定借)マンション「パークコート渋谷ザ・タワー」が完成し、その建物がマスコミに公開された。

 建物内を見学し、従来の定借マンションとは異なる特徴に気づいた。それは、最新の定借マンションの多くにみられる新たな方向性でもある。

 そのことを2回に分けて説明したい。

 本論に入る前に、「定期借地権付き(定借)」という分譲マンションのジャンルについて、まず説明したい。

 定借マンションを簡単にいえば、土地を期限付きで借り、建物は自分のものになるというもの。住宅の場合、土地の賃借期間は50年以上とされ、期間の更新はできない。従来の借地権方式(旧借地権とか一般借地権と呼ばれる)では、借り手の権利が強く、土地所有者はそれを嫌って、自分の土地を人に貸すことをしなくなってしまった。

 この状況を打破するため、土地所有者の権利を強く(契約期間終了後、有無を言わさず土地が返還される)し、借地として貸し出される土地を多くしようと考え出されたのが「定期借地権」。1992年(平成4年)借地借家法が改正されて生まれた方式である。

 住宅では、最初、一戸建て分譲で採用され、その後、マンションで定期借地権方式が増加した。マンションでの採用事例が増えたのは2001年以降なので、初期の物件でも20年程度しか経っていない。借地期間は50年以上に設定されるので、期間満了物件が出てくるのはまだまだ先だ。

 が、20年ほどの間に、いくつかの変化が生じている。

 まず、初期の定借マンションは、借地期間50年が当たり前だった。それが、今は借地期間70年以上の「70年定借」が広まっている。

 そして、価格にも変化がある。最初は一般の分譲マンションより2割から3割程度安く購入することができた。その「安さ」こそが、定借マンションの第一の特徴であり、“売り”だった。

 しかし、近年、定借マンションの価格が上昇。「2割から3割安い」とは言えない状況が生まれた。

 そのため、定借マンションは大幅に安いのが当たり前、と思い込んでいると、最新定借マンションは理解しにくいだろう。

 知られざる定借マンションの真実と、これから予想される方向を解説したい。

初期の定借マンションが安かったのは事実だが……

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住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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