ひき逃げで中1死亡 コロナ禍の今「交通事故」から子どもの命を守るには
またしても、痛ましい事故のニュースが飛び込んできました。
5月7日、自転車に乗った中学1年の生徒が車にひき逃げされ、死亡したというのです。
『ひき逃げされ男児死亡 コロナ影響で休校中に 東京 江戸川』 (2020.5.7/NHK)
車はそのまま千葉方面に逃走したため、警視庁はひき逃げ事件として捜査を進めていましたが、まもなく千葉県松戸市内で当該車両を発見。
夜になり、過失運転致死と道路交通法違反の疑いで、江戸川区在住の無職の男(53)を逮捕したということです。
ゴールデンウィーク明けのこの日は木曜日でした。
新型コロナウイルスに関する制限が緩和された一部地域の学校では登校を再開し、授業が始まっていました。
しかし、東京都内の小中学校ではまだ休校が続いていたのです。
事故が発生したのは正午ごろです。報道によれば、被害生徒は自宅で勉強をした後、公園へ向かう途中だったそうです。
普段であれば学校で授業を受け、間もなく昼休みの時間だったはずです。
感染拡大を食い止めるために致し方ないとはいえ、コロナによる休校措置さえなければ、こうした被害に遭うことはなかったのだと思うと残念でなりません。
■先月も休校中の正午頃に同様の事故が発生
実は、先月も神奈川県で同様の事故が発生しました。
4月9日正午ごろ、川崎市で自転車に乗った小学3年生の男児(8歳)が、68歳の男性が運転する乗用車にはねられ、意識不明の重体に陥ったのです。
この日も木曜日の平日でした。そして、被害男児の通う小学校は新型コロナウイルスの影響で休校中でした。
私は4月12日、以下の記事を執筆しました。
『新型コロナ休校で、子供の重大事故発生 ドライバーや保護者は今まで以上の注意を!』
そして、こう記しました。
『今まさに、感染症とは別の危険が全国各地に潜んでいることを、ドライバーも、そして保護者も心しなければなりません』
■「ひき逃げ」という極めて悪質な行為に遺族が怒り
今回、江戸川区で発生した事故の状況については、まだ詳しいことはわかりません。
ただ、ひとつだけはっきりしているのは、事故を起こした加害者が、道路に横たわる生徒を救護することなく、現場から逃走したということです。
これは「救護義務違反」という極めて悪質な犯罪行為です。
今から9年前の2011年2月25日、山梨県甲斐市志田の国道20号線で発生したひき逃げ事件で、息子の隆史さん(当時24)を亡くした平野るり子さん(66)は、冒頭のひき逃げのニュースを知り、早速コメントを寄せてくださいました。
「事故自体は誰もがその当事者になりえます。でも、ひき逃げは『過失』ではありません。倒れている被害者を放置して逃げるというのは、殺人にも近い、大変悪質な行為です。そしてその行為は、遺族をずっと苦しめ続けるのです」
平野さんの息子さんが死亡したひき逃げ事件は、発生から9年以上たった今も未解決で、犯人は逃げ続けています。
今回のひき逃げ事件は日中に発生したこと、そして警察の素早い追跡により、短時間で加害車両の発見に至りました。
衝突の衝撃でフロントガラスを破損させ、白昼堂々、現場に多くの部品を散乱させたまま逃走した加害者は、なぜ逃げたのか?
その理由は間もなく明らかになるでしょう。
こうした身勝手で悪質なドライバーが、休校中の子どもたちのすぐ近くを走っていると思うと本当に恐ろしくなります。
しかし、これは現実なのです。
■コロナ休校中に高校生以下の子どもの事故多発
冒頭で紹介したNHKの記事によると、
とのことです。
『三密』を避け、ウイルスの感染から身を守るために取られているはずの休校措置が、結果的に重大交通事故の被害につながってしまうとすれば、本末転倒です。
現在、救急医療がひっ迫しており、万一事故に遭った場合、平時なら受けられるはずの医療が受けられない可能性が高まっています。
また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、交通量と事故件数が減少している反面、死亡事故は増えています。
全国の警察が、「スピードの出しすぎ」に注意するよう警鐘を鳴らしています。
実際に、車の時速が50キロを超えると、死亡事故率が急激に高まります。
ドライバーの皆さんは、平日の日中でも子どもたちが近くにいることを意識し、運転には十分に気をつけてください。
一方、保護者の皆様も普段よりスピードを出しがちな車が多いことを、お子様たちに伝えてあげて下さい。
新型コロナウイルスの感染、そして交通事故、いずれも命に係わる重大な危険です。
どうか子どもたちを守るために、この現実を恐れ、しばらく続く「非日常」を乗り切っていただきたいと思います。