岸田新内閣で問われる感染拡大防止と経済の両立。内閣は感染症専門家とどう向き合うか。
9月29日の自民党総裁選挙で、岸田文雄氏が新総裁に選出された。10月4日に招集予定の臨時国会で、岸田自民党総裁が首班指名されて新内閣が発足する見込みである。
9月30日で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置はすべて解除され、次なる感染拡大防止と経済の両立をどう図るかが、新内閣にとって重要な課題となる。
これまで、どちらかといえば感染拡大防止に重きが置かれ、経済活動の抑制を続けてきた。新内閣発足と、図らずも時を合わせたかのように、経済活動の再開に期待が高まる。
そうなると、これまで感染拡大防止を強く唱えてきた政府部内の感染症専門家を、岸田新首相はどうするのか。
菅義偉内閣では、今年に入り、長きにわたり緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を断続的に発令せざるを得ない状況に追い込まれた。これが、内閣支持率の低迷につながり、菅首相の退陣の遠因となったと言ってよい。
確かに、東京五輪開催が制約となって、感染拡大防止と経済の両立が適時適切に図れなかった面はある。
しかし、政府部内で感染症専門家の意見を尊重した結果として、経済活動より感染拡大防止が重視された。時には、政権中枢からの原案を、感染症専門家が覆して、経済活動の抑制に踏み切ることすらあった。ワクチン接種率が高まっても、医療体制の逼迫が主因となって、9月まで宣言解除には至らなかった。
ここにきて、感染第5波がほぼ収束するとともに、内閣も代わることとなった。東京五輪など他に配慮しなければならない事情もなくなっている。感染拡大防止と経済の両立について、新たな局面でそのあり方を再検討できる環境が整った。
感染第6波をできるだけ起こさないようにすることは、もちろん必要だ。ただ、ワクチン接種率が上昇して抗体カクテル療法の普及も進んでいるわけだから、緊急事態宣言等の発令要件をこれまで通りにしておく必要はない。
そして、緊急事態宣言等の発令要件の決定(改訂)に、政府部内で感染症専門家の知見をどのように取り入れるかは、まさに新内閣の姿勢にかかっている。
10月からスタートする予定の岸田内閣で、特に注目されるのは、菅内閣までの感染症専門家を
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