自民党総裁選後の次の首相は、財務大臣を誰にするか。今後の財政政策・税制を占う
9月29日投開票の自民党総裁選では、8月26日に岸田文雄・前政調会長、9月8日に高市早苗・前総務相、10日に河野太郎・行政改革担当相が出馬を表明した。本稿執筆時点で3名が立候補を表明している(冒頭の写真には、3名そろった写真が使えず、他意なく岸田氏と河野氏だけとしている)。
当然ながら、自民党総裁選の注目は、誰が次の総裁に選ばれるかである。
選ばれた新総裁は、国会での首班指名を経て新首相となり、内閣を組閣する。そこで、財務大臣を任命する。
財務大臣は、今後の財政政策や税制に影響力を持つ。新首相が財務大臣を誰にするかも、それらの行方を大きく左右する。次の財務相は、自民党総裁選で掲げた公約を基に、次なる税財政の方針を決めていくことになろう。
現職の麻生太郎・財務大臣は、2012年12月に就任して以来8年9ヶ月となり、今なお歴代最長の在任期間を更新中である。
別の言い方をすると、その間、財務大臣は他の誰も就いておらず、財務大臣経験者が自民党内に新たに生まれない、という状況になっている。
麻生財務相の前に、自民党内で財務相を務めたのは、麻生内閣における与謝野馨氏である。与謝野氏は、その前任者の中川昭一氏が辞任したのを受けて就任した。2人とも既に鬼籍に入っている。
その前の福田康夫内閣では、内閣改造後に伊吹文明氏が財務相に就任した。福田康夫内閣発足当初は額賀福志郎氏で、第1次安倍晋三内閣での内閣改造後に就任した。第1次安倍内閣発足当初は尾身幸次氏だった。その前の第3次小泉純一郎内閣までは、谷垣禎一氏が2003年から財務相を務めた。
この中で、額賀氏以外は、既に政界を引退したか、今般引退を表明している。
このように、次の財務相は、麻生氏と額賀氏以外となるならば、財務相に就いたことがない人が務めることになる。
ただ、財務相は、予算編成を掌る重職だから、大臣の経験が初めてという初入閣の人を起用するには、新首相も相当な覚悟がいるだろう。そして、財務相が所掌する各政策分野に精通していないと、あっさり官僚の手のひらで踊らされることになろう。
2009年からの民主党政権でも、最初の鳩山由紀夫内閣の財務相には、細川護熙内閣と羽田孜内閣で大蔵大臣を経験した、藤井裕久氏が再入閣して起用されている。
また、そもそもの話にはなるが、自民党総裁選後の次の首相も、来る衆議院総選挙までは、今の政権の枠組みである公明党との連立政権となろう。これまでの自公政権で、自民党の首相が任命する財務相は、ことごとく自民党議員だった。
これは、拙著『平成の経済政策はどう決められたか-アベノミクスの起源をさぐる』(中央公論新社)でも触れたように、財務相は、経済財政諮問会議の常任メンバーで、閣議決定される「骨太方針」などに策定過程から影響力を持っている。2001年に経済財政諮問会議が設置されてから、経済財政諮問会議の常任議員となる大臣を、自民党以外の党から出したことはない。
そしてもう一つ、歴代財務相は、衆議院議員が務めている。これには、予算案に認められている衆議院の優越が影響しているかもしれない。もちろん、財務相は衆議院議員でなければならないという法令はない。蔵相時代には稀に参議院議員も就いたことがある。
そう見ると、自民党総裁選後の次の首相が任命する財務大臣として考えられる
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