組織における「問題」とは? 組織マネジャーが理解すべき用語解説
■問題が問題になっていないケース
「問題」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか?
それは単に気になっていること、困っていること、心配していること、になっていないか?
私たちが組織マネジメントにおいて直面する「問題」の真の意味を、シンプルで明確な式を使って今回は解説していきたい。
マネジャー研修をしていて、私は必ず「ある質問」をする。その質問とは、
「今の職場で抱えている最も重要な問題は何ですか?」
である。
「重要な問題なので、日ごろから考えているでしょう。パッと思いつくままに書いてください」
と促す。そうすると、
・問題(1):部下のモチベーションが低い
・問題(2):仕事が偏っている
・問題(3):情報共有ができていない
・問題(4):仕事の効率が悪い
・問題(5):報連相がない
などと返ってくる。しかし、
「その問題のあるべき姿は何ですか?」
と質問すると、たとえば「部下のモチベーションが低い」と答えたマネジャーは、
「部下のモチベーションが高い、ことでしょうか」
と自信なげに答える。次に、
「そのあるべき姿に対して、現状はどうなっていますか?」
と質問すると、さらに困った顔で、
「だから……モチベーションが低いのです」
と問題と同じことを言うのだ。これでは堂々巡りである。悩みを深めてしまうマネジャーは次のような思考のクセがある。
・問題の反対があるべき姿になっている
・問題と現状が同じになっている
これでは問題を解決しようがない。
■問題の公式を押さえよう
問題とは、あるべき姿と現状とのギャップである。誰でも知っている問題の定義だ。式で表現すると、こうだ。
・問題=あるべき姿-現状
わかりづらいから、
・あるべき姿-現状=問題
こうしたほうがいいかもしれない。なぜなら、問題というのは、あるべき姿と現状がハッキリしない限り表現しようがないからである。
わかりやすい事例で表現してみよう。
・あるべき姿:テストで90点をとる
・現状:70点しかとれない
・問題:20点足りない
これだ。何度も読み返さなくても、スッと頭に入るはずだ。式で表現すると、
・90-70=20
である。
・あるべき姿が問題の反対になっていないか?
・問題と現状が同じになっていないか?
で、チェックしてほしい。クリアしている。
このように、問題とは、まず「あるべき姿」と「現状」が頭に思い浮かんだあとでなければ表現できないものなのだ。
「あなたの3番目に好きな果物は何ですか?」
と問われているのと同じである。1番目に好きな果物、2番目に好きな果物が思い浮かんでからでなければ、答えられない。それと一緒なのだ。
だから、
「今の職場で抱えている最も重要な問題は何ですか?」
と質問されて、「あるべき姿」と「現状」を頭に思い浮かべもせず、すぐに答えたら、それは「問題」ではないのである。
では、それは何なのか?
単に、自分が困っていることだ。気になっていること。心配していることだ。問題ではないのである。
だから、いつまで経っても、問題が解決しないのだ。ビジネスにおいて問題を解決するためには、まず問題を正しく捉えるべきだ。
<参考図解>