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愛犬の誕生日にドローン520機動員――夜空に「おめでとう」と描いた中国富裕層女性はやりすぎか

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
愛犬「豆豆」(右)とドローンで夜空に描かれたイメージ=微博よりキャプチャー

 中国湖南省長沙に住む女性が、愛犬の誕生日を祝うために10万元(約181万円)をかけて520機のドローンをレンタルし、夜空に「おめでとう」を描いた。中国のインターネット上では「そんな大金、社会に役立てよ」「それは彼女の自由」などと賛否両論が渦巻いている。

◇人物像はわからず

 中国メディアの情報を総合すると、長沙の湘江上空で昨年12月23日、ある若い女性の注文を受け、広大な芝生の上にドローン520機が並べられた。その様子を見た市民らは「何かの儀式」「ロマンチックなことが起きる?」「誰かに告白する準備か」などと想像していたという。

 中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」に掲載された映像を見ると、その日の夜、若い女性が芝生の上で、「豆豆(ドウドウ)」と名付けられた小型犬の頭に赤いクリスマスの帽子をかぶせて、座らせた。傍らには小さな緑のクリスマスツリーと誕生日ケーキが置かれていた。

 数分後、上空にドローンによって形作られた「バースデーケーキ」が出現。それには「豆豆10歳の誕生日おめでとう」という中国語のメッセージも添えられていた。

 女性やその友人とみられる数人が「Happy birthday to you」のメロディーに似せて「ワンワ、ワンワン、ワンワン」と大声で歌うと、犬はそれを聞きながら、首を振るしぐさを見せた。

 女性がどのような人物なのかに触れる情報は見つけられなかった。ただ、520機のドローンを借りるために10万元を費やしたことから、富裕層であるのは間違いない。

 中国語の「520」の発音は「愛している」を表す「我愛你」に似ていることから、愛情表現の言葉としても使われる。使用したドローンの数もこれにちなんでいるとみられる。

◇撃墜されていた可能性

 香港の有力英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、この「儀式」は、長沙の高層住宅が立ち並ぶ付近で実施されたという。航空機の管理に関する規則により、付近はドローンの飛行禁止区域に指定されているため、飛ばす際には地元警察の許可を取る必要があったそうだ。地元警察にはこの「儀式」に関する事前情報はなかったといい、当局に発見されていれば、撃墜されていた可能性がある。

 中国のネットメディアを中心にこの「儀式」が報じられ、賛否両論が巻き起こった。

 その中でも中国共産党機関紙・人民日報系「環球時報」が開設している微博アカウントには、この件に関するコメントが数多く掲載されている。

 肯定的なものは「犬は本当に幸せ」「良い飼い主」のほか、「これは女性のプライベート」「彼女の自由」「犬の誕生日を祝うためにドローンを使用できないという規定などない」「他の人の利益を妨げない限り、合理的かつ法的な範囲内だ」などが代表的な意見だった。

 中には「これに何の問題があるのか。金持ちは激しくお金を使うのが一番だ。お金を使えば、誰かが稼ぐことになる。ドローン会社は稼げたではないか」という考えも掲載されていた。

 一方、否定的なものは「そんな大金があれば、本当に社会に役立つことをしたほうがいい」「彼女の行動は理解しがたい」などの声が大半だった。「UAV(ドローン)公演をする余裕のある人はたくさんいる。だが通常の感覚の人は、犬の誕生日に10万元を支払って飛ばすようなことはしない」という見解も記されていた。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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