小泉進次郎がクールでセクシーになるためにやるべきこと
フーテン老人世直し録(466)
長月某日
今年の国連総会で最も注目を集めたのは16歳のグレタ・トゥンベリさんだ。このスウェーデンの少女は、グテーレス国連事務総長主宰の「気候行動サミット」で各国の政治指導者に対し、大人は若者の未来を考えていないと怒りをぶつけ、「パリ協定」から離脱した米国のトランプ大統領を睨みつけた。
当初「気候行動サミット」に欠席の予定だったトランプ大統領が突然出席し、それも注目されたが、トランプ大統領は何も発言することなく、短時間で会場を後にした。おそらく来年の大統領選挙で地球環境問題が争点になることを予想し、アリバイ作りをするために出席したのではないか。
そのトランプを彼女は険しい顔つきで睨みつけた。サミットに先立つ20日には世界150カ国以上で若者たちがデモを行い、およそ400万人が参加したと発表された。これだけ世界各地でデモが起きたのは70年代のベトナム反戦運動以来ではないか。
フーテンが高校生の頃、「怒れる若者たち」という言葉が流行した。英国で既成の社会秩序に抵抗する若者たちを主人公にした文学作品や映画が次々に作られ、フーテンも随分と映画館に通ったものだ。怒りに満ちたグレタさんの演説を聞いて久々に「怒れる若者たち」を思い出した。若者たちの怒りはこれからさらに広がりまた持続していくのだろうか。
トランプが急きょ出席したのに対し、日本の安倍総理は出席せずに小泉環境大臣だけが出席した。その小泉大臣に演説の機会は与えられず、記者会見だけが行われて外国記者から質問を受けた。そこで小泉氏は「石炭火力発電所を削減する」と発言し、記者から「どうやって?」と問われると、一瞬目が点となり、6秒間の沈黙後に「これから役所の中で議論していく」とだけ答えた。
ニューヨークでは環境団体が安倍総理の顔を描いた大きな風船を掲げ、石炭火力発電を続ける日本に抗議するデモが行われた。東日本大震災以降、日本政府は50もの石炭火力発電所を作る計画を進めており、今年の4月にはベトナムの石炭火力発電所に融資することも発表した。そうしたことで安倍政権は「パリ協定」からの離脱を決めたトランプ政権と同様に「怒れる若者たち」から「敵」と見られる存在になったのだ。
ところが日本の報道は、小泉氏が「気候変動の問題に取り組むことは楽しく、クールに、セクシーにやるべき」と発言した問題ばかりが取り上げられ、表現が適切かどうかだけが議論されている。しかし問題は小泉氏が政治家としてクールでセクシーなのか、ダサいのかという問題である。
フーテンに言わせれば、具体的な方策を持たずに会議に出席する政治家は政治家の名に値しない。前のブログにも書いたが、災害現場にいち早く訪れて被災者の声を聞くのが政治家の仕事だと勘違いしている日本人が多いため、こういう問題が起こる。大臣なら役人を使って情報を集めさせ、それを総合判断し具体策を持ってから現地に赴くべきなのだ。
東日本大震災の時に当時の菅直人総理がすぐに福島の原発事故を見に行ったことをフーテンは「総理の資格なし」とブログに書いたが、小泉氏も菅元総理と変わらない。具体策を持たずに現場を訪れたり、会議に出席するというのでは、政治家としてクールでもセクシーでもない。人気取りで動いているだけのダサい政治家ということになる。
古来、日本人は自然を愛し、自然と共に生きてきた。ところが欧米人はそうではない。キリスト教の影響から自然は神が作ったもので、最後に神の形に作られた人間に従属するものと考えられる。人間が口にする動植物は神が与えたものだから、食事をする前に神に感謝の祈りを捧げてから食べる。
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