バイエルンの可変式3バックを考察。中盤の「数的優位」とウィングの配置の妙。
ビッグマッチを、制した。
チャンピオンズリーグ決勝トーナメント一回戦、バイエルン・ミュンヘンはパリ・サンジェルマンと対戦した。2試合合計スコア3−0でバイエルンが完勝して、ベスト8へと駒を進めている。
決定的なシーンになったのは、セカンドレグの前半38分の場面だ。GKヤン・ゾマーのミスから、パリが決定機を得る。だがそれをマタイス・デ・リフトがゴールライン際でスライディングしながら掻き出し、ピンチを救った。
「デ・リフトは常に守備に専心している。10人中9人のDFが、あの場面で『ゲームオーバーだ』と考えるだろう」と語ったのはユリアン・ナーゲルスマン監督だ。
「ファーストレグで、我々はプラン通りに試合を進められなかった。あまりに相手にスペースを与えていた。セカンドレグでは、守備面で改善できた。そして、ボールを持った時には、危険を作り出せた。バイエルンがラウンド突破に値したと思う」
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■バイエルンの可変の3バック
デ・リフトのスーパープレーは大きかった。ただ、バイエルンが欧州の8強入りを果たしたのは、チームとしての力と確かな戦術があったからだ。
バイエルンはビッグマッチで特殊なシステムを使った。
バイエルンの伝統のシステムは【4−2−3−1】である。だがナーゲルスマン監督は片方のサイドバックを上げて、右肩上がりの【3−4−3】を形成した。
パリは【4−4−2】のシステムだった。従って、第一にビルドアップの時に最終ラインのところで数的優位ができる。3対2の状況だ。
デ・リフト、ダヨ・ウパメカノ、ベンジャミン・パバールと、バイエルンにはビルドアップ能力が高い選手がディフェンスラインに揃っている。
また、このシステムでは、選手が入れ替わりながら、配置を変換できる。
例えば、シャドーとウィングバックが替わりながら、【3−4−3】中盤ダイヤモンド型が形成される。
このようにして、相手のマークを外す。あるいは、プレスの的を絞らせ難くする。
CBの一枚がボールを保持したまま中盤に侵入すれば、ミドルゾーンで5対4の数的優位も作れる。
そうなると、相手は撤退せざるを得ない。
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