忘れ去られたら残念すぎるゲームボーイの名作7選 なぜか移植されない傑作も
1989年4月21日に発売された懐かしの任天堂の携帯型ゲーム機、ゲームボーイ。同日に「アレイウェイ」「スーパーマリオランド」「ベースボール」「役満」の4本がローンチタイトルとして登場し、現在までに約1300タイトルものソフトが発売された。
すでに発売されて久しいが、驚くことに一部のタイトルはニンテンドー3DSのダウンロード専用ソフトとして移植版が現在も配信されている。この事実だけでも、いかにゲームボーイ用ソフトが多くのゲームファンに愛されていたのかがわかるというものだ。
だが残念なことに、非常に面白い作品でありながらゲームボーイで発売されたのが最初で最後、一度も移植やリメイク版が登場していないタイトルも少なからず存在する。このまま人々の記憶から忘れ去られてしまうにはあまりに惜しい、ぜひ3DSなど現行のプラットフォーム機に移植してほしい良作が、探せばまだまだたくさんあるのだ。
以下、筆者が有名・無名を問わず独断と偏見で選んだ、後世にぜひ残したい傑作7タイトルを紹介する。
1:カエルの為に鐘は鳴る(任天堂/1992年)
大魔王デラーリン率いるゲロニアン軍にさらわれた、ミルフィーユ王国のティラミス姫を助けるべく、冒険の旅に出るサブレ王国の王子を主人公とするアクションロールプレイングゲーム。現在でもニンテンドー3DSで配信されている。
王子は旅の途中で、カエルとヘビに変身できる能力を身に着ける。カエルに変身するとジャンプ力がアップして高い所に飛び移れるようになり、ヘビになると狭い通路を通れる能力が得られるなど、状況に応じて姿を変えながら冒険を進め、隠された謎を解き明かしていくのが楽しい。
反射神経や細かい戦略、操作が一切不要のシンプルなバトルシステムも本作ならではの特徴だ。王子が敵に触れると自動でバトルがスタートし、放っておくだけですぐに勝敗が決まる。バトルは王子の能力(体力や装備品)が敵を上回っていれば必ず勝てて、逆に劣っていれば必ず負けてしまうので勝因、敗因が極めてわかりやすい。
謎解きの要素もそれほど難しくはなく、随所に盛り込まれたギャグも楽しめる本作は、アクションRPG初心者の入門用タイトルとして最適だろう。昨今はスマホなどでも、簡単操作で短時間でエンディングまで到達できる、カジュアル志向のRPGがいくらでも無料で遊べるようになったが、本作は今遊んでもまったく見劣りしない面白さがある。
2:F-1スピリット(コナミ/1991年)
その名のとおり、フォーミュラカーを操作して遊ぶレースゲーム。見た目はいたってシンプルなので「ただ走るだけ」の単純なゲームかと思いきや、いざ遊んでみるとこれが実に面白い。
本作は車のエンジンやシフト、ウイングなどのパーツをレース前にセッティングすることができる。レースに勝つためには「ただ走るだけ」では駄目で、コースごとに最適なセッティングを見出せるかどうかも重要なポイントとなる。ダメージを受けたパーツやタイヤを交換する、ピットインのタイミングも勝敗に大きく影響するので、レース戦略を臨機応変に考えながらプレイするのが楽しい。
拙稿「通信ケーブルが画期的だった みんなでハマったゲームボーイの名作5選」(12/15掲載)でも紹介した任天堂の「F-1レース」と同様、本作は別売りの通信ケーブルと4人用アダプタを接続すれば、最大4人まで対戦プレイが可能。まだインターネットが普及していない時代にあって、携帯型ゲーム機でありながらマルチプレイに対応していた点も特筆に値する。
レースを大いに盛り上げる、ノリノリのBGMもこれまた素晴らしいのだが、残念なことに本作はゲームボーイで発売されたのが最初で最後、現在に至るまで一度も移植されていない。このまま忘却の彼方へと消え去ってしまうには、あまりにも惜しい1本だ。
3:レッドアリーマー 魔界村外伝(カプコン/1990年)
かつてゲームセンターで人気を博し、不気味な世界観と難易度の高さでも有名なアクションゲーム「魔界村」シリーズのスピンオフ作品。本シリーズの主人公である、騎士のアーサーのライバル的存在であるモンスター、レッドアリーマーが本作の主人公だ。
本作は敵キャラと戦うだけでなく、フィールド上に点在する村に入って「はなす」「しらべる」などのコマンドを実行すると、仲間の悪魔たちから攻略に必要なさまざまな情報やアイテムを入手することができる。本家「魔界村」シリーズにはなかった、アドベンチャーゲームの要素も盛り込んでいるのが特徴だ。
フィールドを移動中に敵キャラに遭遇すると、強制的にバトル画面に切り替わる。バトルが始まったら、レッドアリーマーが口から吐き出すファイア、バスターなどの魔法で敵を攻撃し、全滅させると勝利となる。レッドアリーマーは、背中に生えた羽を利用してホバリング(※一定時間だけ空を飛ぶ)もできるので、アーサーを操作するのとはまた違った面白さがある。
バトル時に出現する敵の種類、地形のバリエーションも豊富で、触れただけでダメージを受けてしまうトラップもたびたび出現する。塔や城など、広大なマップのアクションエリアでは、「魔界村」シリーズと同様に強力なボスキャラとの対決も楽しめる。
難易度は高めだが、硬派なアクションとアドベンチャーゲームの要素を融合させた面白さと、「魔界村」シリーズらしいグロテスクな世界観を堪能できる1本だ。現在でもニンテンドー3DSで配信中。
4:カプコンクイズ ハテナ?の大冒険(カプコン/1990年)
4択方式のクイズに解答しながらマップ上を進み、最終地点に出現する敵のボスとのクイズバトルに勝利してマップ制覇を目指すクイズゲーム。問題は「歴史」「文学」「理科」「スポーツ」「グルメ」など幅広いジャンルから出題され、「1943」「ファイナルファイト」など、歴代カプコン作品のキャラクターが登場する世界観も独創的だ。
かつて、90年代のゲームセンターでは、同じくカプコンが発売した「カプコンワールド」が人気を集めたのを機に、すごろく形式でマップ上を進み、ストーリーに沿って出現する敵キャラが出題するクイズに解答する形式のクイズゲームが次々とリリースされた。本作のベースとなったのも、アーケード版の「ハテナ?の大冒険」である。
内容はアーケード版から大幅にアレンジされているものの、本作は往時のクイズゲームならでの面白さを堪能できて、なおかつ携帯用ゲーム機で遊べる、数少ない貴重な1本だったように思う。
昔はゲームセンターの定番ジャンルだったクイズゲームだが、後に家庭用に移植されたケースは少なかった感があり、今ではすっかり見掛けなくなってしまった。かつて一世を風靡したクイズゲームの楽しさを、これからもずっと後世に伝えてほしい、そんな思いも込めて本作を選んだ。
5:「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 大地の章・時空の章」(任天堂/2001年)
現在もシリーズ作品が出続けている、アクションアドベンチャゲームの金字塔「ゼルダの伝説」シリーズのうち、数少ないゲームボーイ用(※正確にはゲームボーイカラー専用)ソフトとして発売された作品。本作は「大地の章」と「時空の章」の2種類が同時に発売され、基本ルールは同じだがゲーム内容はそれぞれまったく異なる。
さらに驚くべきは、エンディング到達時に表示される「あいことば」を別バージョンに入力してゲームを始めると、なんと物語の続きが楽しめるようになる、その名も「リンクシステム」と銘打った斬新なアイデアを導入していたことだ。
例えば、「大地の章」をクリア後に表示された「あいことば」を「時空の章」プレイ時に入力すると、「時空の章」で「大地の章」とつながった物語の続きが遊べるようになる。また「リンクシステム」を利用して、ゲーム中に獲得した指輪(アイテム)を異なるバージョン間で受け渡すこともできる。
「大地の章」「時空の章」のいずれか一方を遊ぶだけでも十分に面白いが、「あいことば」を利用して双方をさらに楽しくさせるアイデアは、今さらながら実に見事だ。現在もニンテンドー3DSで配信中で、しかも2本とも安価で楽しめるのが嬉しい。
6:ゲームボーイギャラリー(任天堂/1997年)
80年代前半に大人気を博した、携帯型ゲーム機「ゲーム&ウオッチ」シリーズとして登場した「マンホール」「オクトパス」「ファイア」「オイルパニック」のアクションゲーム4タイトルを収録したオムニバスソフト。
ゲームボーイ版は単なる移植ではなく、どのタイトルもマリオをはじめ、ピーチ姫やヨッシー、キノピオ、ドンキーコングなどおなじみのキャラクターが登場するアレンジ版が遊べて、なおかつ非常に面白いところに本作ならでの価値がある。
例えば、トランポリンを広げた2人の人間を操作して、火事になった建物から飛び降りてくる人を受け止めるゲーム「ファイア」は、オリジナル版では無表情の人間しか出てこない。一方アレンジ版では、主人公がマリオとルイージとなり、キノピオやヨッシー、ドンキーコングなどが登場するので、見ているだけでも楽しめる。
しかも、アレンジ版はただ見た目が変わっただけでなく、オリジナル版には存在しなかった楽しさがいろいろと追加されている。「ファイア」に登場するキノピオは空中高くジャンプするのに対し、大柄なドンキーコングはジャンプの軌道がとても低くなるので、キャラクターごとに異なる軌道を見極めてキャッチする必要がある、といった具合だ。
オリジナル版が持つ面白さを損ねることなく、巧みに進化させたアレンジ版が遊べて、なおかつ懐かしの名機「ゲーム&ウオッチ」シリーズを後世に伝える存在としても、本作は貴重な1本と言えるだろう。本作は現在でも3DSで配信され、さらに続編にあたる「ゲームボーイギャラリー2」と、海外でのみ発売された「4」も配信中だ。
7:Kid Icarus: Of Myths and Monsters(任天堂/1991年)
天使である主人公のピットを操作して、弓矢などの武器で敵を倒しながらステージをクリアしていくアクションゲーム。1986年にファミリーコンピュータのディスクシステム用ソフトとして発売され、109万本を売り上げ人気を博した「光神話 パルテナの鏡」の続編にあたる。(※販売本数は「CESAゲーム白書」より引用)
実は本作、1991年に北米で、1992年にはヨーロッパで発売されたが、日本国内では未発売だったこともあり、当時の筆者は本作の存在すら知らなかった。その後、2012年にニンテンドー3DSで国内でも配信されたが、恥ずかしながら配信開始の情報もしばらくの間見落としていたので、配信の報を初めて聞いたときは本当に驚いた。
本作は日本向けにローカライズされていないため、メッセージはすべて英語で表示されるが、ありがたいことに3DS版は日本語のデジタルマニュアルが実装されている。基本操作やアイテムの使用法も前作とほぼ同じなので、遊んでいて特にストレスを感じることはないだろう。
ゲームの出来の良さだけでなく、当初は諸般の事情で国内では未発売だった作品を最新のプラットフォームに安価で配信し、シリーズ作品をすべて遊びたいというファンのニーズに21年の時を経て応えた(特に目立ったプロモーションはしていなかったが……)、良き先例になった点も評価したい1本だ。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】