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通信ケーブルが画期的だった みんなでハマったゲームボーイの名作5選

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
※写真はイメージ(写真:ロイター/アフロ)

1989年4月21日に任天堂が発売した携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」は、国内では3247万台、世界累計では1億1869万台を出荷する大ヒットとなった(※出荷台数は「CESAゲーム白書」より引用)。

発売当初は4階調のモノクロ液晶モニターでサイズもかなり大きかったが、1996年にはよりコンパクトになった「ゲームボーイポケット」が、1998年にはカラー液晶モニターと赤外線通信機能を搭載した「ゲームボーイカラー」が登場するなど、約1200タイトルが発売されたソフトだけでなく、本体のバリエーションも実に豊富だった。

なぜ、これほどまでにゲームボーイが世界中で売れたのか? その要因のひとつが、別売りの通信ケーブルを本体に接続するとプレイヤー同士でいつでも、どこでも対戦または協力プレイができる機能を搭載していたことだろう。

今ではスマホやNintendo Switchが1台あれば世界中のプレイヤーと同時に遊べる時代になったが、当時は通信ケーブルを介して対戦、協力プレイができるだけでも十分に魅力的なハードだったのだ。

以下、本稿では通信ケーブルを使用して遊ぶことで面白さが増した、ゲーム史に残る5タイトルを紹介する(※販売本数はいずれも「CESAゲーム白書」より引用)。

1:テトリス(任天堂/1989年)

旧ソ連の科学者たちによって開発された、いわゆる「落ち物パズルゲーム」の元祖。画面上部から落下してくるブロックを操作してフィールド上に積み、横に1ラインそろえて消していくゲーム。現在でもシリーズ、あるいはアレンジ作品がリリースされ続ける息の長い作品だ。

実は本作よりも先に、1人プレイ専用のアーケード(ゲームセンター)版、およびファミリーコンピュータ版が発売されていたが、ゲームボーイ版は通信ケーブルを使用すると2人対戦プレイができるのが画期的だった。対戦プレイ時の、ブロックを消すと相手側のフィールドがせり上がることで攻撃が仕掛けられるその楽しさは、一度遊んだだけでやみつきになってしまうほどの魅力にあふれていた。

通信ケーブルを利用した対戦プレイの面白さを一躍世に知らしめ、大人気を博したという一点だけでも、おそらく本作は世界のゲーム史に残る1本だろう。「CESAゲーム白書」によると、本作の販売本数は歴代のゲームボーイ用ソフトの中でも最多の424万本、世界累計では3026万本も売れたというのだからすごい。

ゲームボーイ版の「テトリス」(※「スーパーゲームボーイ」を使用して筆者撮影、以下同)
ゲームボーイ版の「テトリス」(※「スーパーゲームボーイ」を使用して筆者撮影、以下同)

2:ポケットモンスター赤・緑(任天堂/1996年)

もはや詳しい説明は不要の、世界中で愛され続けるRPGの人気シリーズ。その第1弾は、今から25年前にゲームボーイ用ソフトとして登場した「赤」と「緑」だ。

本作の素晴らしさは、本体に通信ケーブルを接続することで、プレイヤー同士で集めたポケモンを交換できるアイデアを取り入れたことに尽きる。通信ケーブルを介してプレイヤー同士で戦うだけでなく、協力プレイにも利用が可能で、なおかつゲームがますます面白くなることを最初に示した本作の功績は計り知れないものがある。

出現するポケモンが「赤」と「緑」でそれぞれ異なり、すべてのポケモンを集めるためにはお互いのコレクションを交換することが必須だったので、プレイヤー間で自然と交流が生まれるようになっていた。

対戦ではなく、交換のために通信ケーブルを利用するアイデアを考案したのは、本作の開発者の一人である田尻智氏。同氏はゲームボーイを手に取った当初から、通信ケーブルを使ってプレイヤー同士でデータを交換する構想があったことを証言している。

「(中略)友達同士が向き合い、片方がゲームボーイをケーブルでつなげてみるかいって言ったら、相手もそうだねと言ったときに始まるコミュニケーション、そのツールとしてゲームボーイが働くとしたら、目に見える情報、価値の交換ということになると思ったんです」

「ポケモンストーリー」(畠山けんじ・久保雅一著/日経BP)より

販売本数は、最初に発売された「ポケモン赤・緑」と、後発の「青」「ピカチュウ」「金・銀」「クリスタル」を合わせると、国内だけで何と約2300万本。当時からまさにモンスター級の人気を誇っていた。

「ポケットモンスター赤」のポケモン図鑑より
「ポケットモンスター赤」のポケモン図鑑より

3:遊戯王デュエルモンスターズ(コナミ/1998年)

「週刊少年ジャンプ」に連載されていた漫画をゲーム化した作品で、(デジタルの)カードを集めてデッキを作り、対戦相手とのカードバトルが楽しめる。こちらも後継シリーズのPC、スマホ版「遊戯王デュエルリンクス」が現在も配信中で、リアルのトレーディングカードゲームともども実に息の長いタイトルだ。

本作も、通信ケーブルを使うと2人対戦プレイができるのに加え、カードのトレードも可能。対戦プレイで勝利すると、相手プレイヤーが持っていたカードを1枚奪い取れるが、負けると逆に1枚奪われるルールも採用していた。トレードの際に特定の組み合わせでカードを交換すると、交換したカードの種類が変化する面白いアイデアも採用していた。

また、10人の異なるプレイヤーと対戦するごとに、1人プレイでは出てこない強力なレアカードが手に入り、さらに合計200人と対戦すると超強力なレアカード「火炎地獄」がもらえる斬新なアイデアを採用していた点も特筆に値する。

「遊戯王デュエルモンスターズ」のゲーム画面
「遊戯王デュエルモンスターズ」のゲーム画面

4:ゲームで発見!!たまごっち2(バンダイ/1997年)

その名のとおり、1996年に発売され大ブームとなったペットを育成するデジタル玩具「たまごっち」をゲームボーイ用ソフト化した作品。シリーズ第1弾の「ゲームで発見!!たまごっち」の登場からわずか4か月後に発売されたのだから、当時いかに人気を集めていたのかがわかる。

本作も、通信ケーブルを利用することでプレイヤーが育てた(ペットの)たまごっちの交換、および競技大会モードでの対戦プレイができるようになっていた。初代「ゲームで発見!!たまごっち」には存在しなかった、通信ケーブルを使った遊びが新たに追加されたことで、本家「たまごっち」よりも内容がむしろ充実していた感がある。

本作および初代「ゲームで発見!!たまごっち」は、どちらも145万本を売り上げた。ゲームボーイ版も本家に負けず劣らず、一時代を築いたと言っても過言ではないだろう。

「ゲームで発見!!たまごっち2」より
「ゲームで発見!!たまごっち2」より

5:パックマン(ナムコ/1990年)

1980年に登場し、海外でも大人気を博したアーケード用アクションゲームの移植版。

「パックマン」は1人で遊ぶイメージがあるかもしれないが、ゲームボーイ版では通信ケーブルを使用した2人対戦プレイが可能。対戦プレイ時は、パワークッキー(パワーエサ)を食べ、敵のゴースト(モンスター)がイジケ状態になっている間にゴーストに噛み付くと、相手プレイヤー側にゴーストを送り込めるようになっていた。

現在Nintendo Switch Onlineで配信されている、最大99人で対戦できる「パックマン99」も、相手プレイヤーにゴーストを送り込んで攻撃するルールになっているが、このアイデアのルーツはおそらくゲームボーイ版ではないかと思われる。

実は、本作のマニュアルには「パックマン」シリーズで対戦プレイを導入した「史上初!」(※原文ママ)の作品であることが明記されている。世界的に有名な本シリーズで、対戦プレイを導入した最古のタイトルとしても記憶にとどめておきたい1本だ。

ゲームボーイ版「パックマン」より
ゲームボーイ版「パックマン」より

番外:F-1レース(任天堂/1990年)

1984年に登場したファミコン用ソフトと同名のレースゲーム。ファミコン版は1人プレイ専用だったが、本作はファミコン版よりも車種やコースが増え、通信ケーブルを使用した対戦プレイも可能になった。さらに、別売りの4人用アダプタを接続することで最大4人まで同時対戦ができる。

本作は、お世辞にも大ヒットしたとは言えないため「番外」としたが、4人用アダプタ対応の第1弾タイトルとして、マルチプレイの面白さを世に広めようとチャレンジした点だけでも特筆したい1本だ。

なお、4人用アダプタは初期型のゲームボーイ、および「ゲームボーイブロス」でしか使用できず、対応ソフトも非常に少なかったため、今ではすっかり歴史の彼方に忘れ去られているように思われる。だが、インターネットやWi-Fiがまだ普及していない時代にあって、携帯型ゲーム機でもマルチプレイ環境を実現していたことには改めて驚かされる。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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