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ゲーセンデビューに最適 超手軽に遊べる「10円クレーンゲームコーナー」

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
10円クレーンゲーム(※「タイトーステーション府中くるる店」:2020年撮影)

「コロナ禍」直前の2020年頃から、1プレイ10円で遊べる「10円クレーンゲームコーナー」を設置するゲームセンターが相次いで登場した。現在でも、大手オペレーター(※ゲームセンターの経営会社)を中心に「10円クレーンゲームコーナー」を展開する店をしばしば見掛ける。

筆者がゲーセンや駄菓子屋に通い始めた昭和50年代は、10円単位でプレイ料金を設定するプライズ(景品)ゲームのほか、メダルやエレメカゲーム、ガチャガチャもごく当たり前に存在した。当時よりも物価が大きく上昇した現在にあって、なぜ1プレイ10円という激安価格でクレーンゲームを運営する店が存在するのだろうか?

ファミリー客に大好評

タイトー広報によると、同社では2020年8月の「タイトーステーション 府中くるる店」のオープンに合わせて「10円クレーンゲームコーナー」を設け、2024年4月現在、全国の約20店舗で運営している。

利用客からの評価も良く「子供から大人まで年齢を問わず、楽しんでいただいております。また個人のお客様だけでなく、親子連れや学生のグループで楽しんでいる様子も見受けられ、安価にプレイできる点や、獲得しやすい点で好評をいただいております」(タイトー広報)

同じく、大手オペレーターのイオンファンタジーも、何と250店舗で「10円クレーンゲームコーナー」を運営し、全店合計で350台も稼働中とのこと。「10円という手軽さもあり、お子様を中心としたファミリー層の方々にお楽しみいただいております。お客様の反響はたいへん良いです」(イオンファンタジー広報)

今も昔も、子供にとって1プレイ100円の出費は、けっして安くはない金額だ。その10分の1の金額で、景品が取れるか取れないかのスリリングなゲームが楽しめるのが、とりわけ小さい子供がいるファミリー客に支持される要因なのだろう。

「10円クレーンゲームコーナー」は、安価で遊べることもありファミリー客の利用が目立つ(※2020年に「タイトーステーション 府中くるる店」で筆者撮影。以下同)
「10円クレーンゲームコーナー」は、安価で遊べることもありファミリー客の利用が目立つ(※2020年に「タイトーステーション 府中くるる店」で筆者撮影。以下同)

真の狙いは店舗の「賑やかし」

ところで、店側は1プレイたった10円でゲームを稼働させ、しかも景品まで提供してもちゃんと儲かるのだろうか? 筆者の現場時代の経験から言うと、以下の写真のようにたとえ原価の安い景品を使っていても、低料金でコンスタントに利益を得るのは極めて難しい。

イオンファンタジーでは「商材を工夫しながら、全体でバランスを考えて運営しています」(同社広報)とのことで、個々のゲームではなく店舗全体で利益が出るように工夫を施しているもようだ。

筆者が某店の「10円クレーンゲームコーナー」でゲットした景品。左から順にソフビ製のフィギュア、スナック菓子、(トラック型の箱入り)キャンディ、マスキングテープ(※ちなみに総費用は160円)
筆者が某店の「10円クレーンゲームコーナー」でゲットした景品。左から順にソフビ製のフィギュア、スナック菓子、(トラック型の箱入り)キャンディ、マスキングテープ(※ちなみに総費用は160円)

一方、タイトーからは「基本的に原価率より、お客様に楽しんでいただき『またお店に来たい』と思ってもらうことを重視しており『10円クレーンゲーム』は、そのための施策のひとつと捉えています」との回答を得た。

つまり「10円クレーンゲームコーナー」は、これ自体で大儲けをするというよりは、店の入口付近に設けることで、より多くの客を誘引するための「賑やかし」として機能させることが真の目的であると言えるだろう。

事実、イオンファンタジー広報からも「クレーンゲームで遊んだことのないお客様に興味を持ってもらい、まずは遊んでいただくのが狙いです。また、そこにお客さまの人だかりができることで、さらに他のお客さまの興味を誘引できるというのもございます」との回答をいただいた。

「タイトーステーション 府中くるる店」の「10円クレーンゲームコーナー」も、店舗の正面入口にある
「タイトーステーション 府中くるる店」の「10円クレーンゲームコーナー」も、店舗の正面入口にある

ビッグサイズのぬいぐるみ、キャラクターのフィギュアなど人気の景品は、何回プレイしてもなかなか取れない、あるいは常連や上手な客ばかりが取ってしまうイメージを持つ人も少なくないだろう。

そんな人向けに、たとえ儲からなくても景品が取れたときの楽しさを体験させてファンになってもらう。ここにも「10円クレーンゲームコーナー」を続ける狙いがあるように思われる。

お小遣いや食事、買い物の釣り銭を利用しても手軽に遊べる「10円クレーンゲームコーナー」。小さな子供でも、まだ一度もアーケードゲームを遊んだことがない人にとっても、入門用としてこれほどありがたいものはないだろう。

きたるゴールデンウィークは、ぜひゲーセンへと足を運んで、ゲームを存分にお楽しみいただきたい。

(参考リンク)

・「タイトーステーション 府中くるる店」

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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