先住民サーミがノルウェー国会前に「引っ越して」テントで座り込み抗議
ノルウェー国会前の広場に緑色のテントが設置され、若い男性が議会の外の広場で寝泊りを始めた。
先住民サーミ人であるミフカル・ハエッタ(Mihkkal Hætta)さん (22)は、ノルウェー政府がサーミの人権を侵害して700日目に突入したことを抗議している。極圏カウトケイノから首都オスロの国会前広場に「引っ越して」、現在進行中の人権侵害を訴えている。
人権侵害700日目
ノルウェー政府はフォーセンという地域に風力発電所を建設したが、風車はサーミ人のトナカイ放牧を困難にしていた。ノルウェー最高裁は、風力発電所がフォーセンで生活を営む「サーミ人の人権を侵害している」と判決を下したが、最高裁は「風車をどうするべきか」までは進言しなかったために、政府は「対話」で解決策を探る道を選ぶ。
結果、風車は撤去されないまま、判決が下されて9月11日目には700日目を迎えた。つまり、サーミの人権が侵害されて700日目ということになる。10月には最高裁の判決から2年が経過する。
ハエッタさんはトナカイ放牧者が牧草地を取り戻すまでは議会の外に留まるつもりだ。
「人権侵害がノルウェーでまだ続いていることを皆に思い出させるために、このようなことをしています。政府が人権を侵害し続ける限り、私は留まり続けるつもりです」とハエッタさんは取材で語った。
ノルウェーでは植民地主義はまだ続いている
「ノルウェー政府は『グリーンエネルギー』という名目で風力タービンを設置し、私たちの土地を破壊しています。ノルウェーのような国では植民地主義がまだ続いているんです」
「先住民である私たちは、土地や環境と特別なつながりを持っています。だから大地がいつ泣いているのか、大地に異変が起きていることも知ることができるんです。だからこそ私たちの声をノルウェー政府に聞いてもらおうと必死なんです。しかし、彼らは私たちの言葉に耳を貸さない。とても悔しいです」
先住民サーミは、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、ロシアに居住する。かつては「劣った民族」として見なされ、ノルウェー政府によってサーミ語を禁止され、ノルウェー語を教育され、サーミの血は「恥」であるなどアイデンティティを植え付ける「同化政策」を強いられてきた。過去の抑圧の歴史は反省されているが、現在、「再開発エネルギーを推し進めたい政府」と「トナカイ放牧などで自然との共存を守り続けたいサーミ」との間で、「土地」の権利を巡る対立が深刻化している。
環境を名目とした利益のために、すでに虐げられていた他者の資源や土地をさらに搾取する「グリーン・コロニアリズム」(緑の植民地主義)は、ノルウェー政府と先住民サーミとの間で悪化の一途をたどっているのだ。
環境団体やサーミ人による抗議活動はこれまでもあったが、国会前の広場のテントで男性が生活を始めた光景は強力なメッセージを放っている。ノルウェー政府は風車をどうにかする態度は見せていないため、寝泊りはこれから数か月続く可能性もある。
Text: Asaki Abumi