【コラム】ウクライナと中東、東アジアの平和をセットで実現し、地球環境の危機も乗り越えていくには
ロシアによる侵攻へのウクライナの抵抗は、米国からの軍事支援が滞っているため、ロシアの物量による猛攻に押され、極めて厳しい状況にある。仮に、今後、米国からの支援が再び増加したとしても、いずれにせよ、ウクライナ側の犠牲は少なくはないだろうし、欧米側の財政的負担も重いものとなる。他方、この侵攻でロシアのプーチン大統領を勝たせることになれば、ウクライナのみならず、国際社会において、自由や民主主義、そして法の支配を重んじる側の敗北となり、今後の世界秩序にも大きな悪影響を及ぼすことは避けられない。だからこそ、武力のみならず、外交の力でロシアを封じ込めることが必要だ。その上で重要なのは、ロシアと経済的なつながりの強い国々を説得すること、エネルギー政策の劇的な転換、そして、もう一つの大きな危機であるイスラエルによるガザ攻撃への対応であろう。ウクライナの平和を実現する上で、東アジアの平和、中東の平和も両立させ、全人類に対する脅威である地球温暖化への対応も促進させることが望ましい。とりわけ、日本は地政学的に重要かつ独特なポジションにあり、世界の平和に貢献できうる国である。様々な課題を統合的に解決するための外交が、今こそ必要だ。
〇戦争をやめさせるための外交の重要性
元々の国力でロシアと大きな開きがある中で、ウクライナは相当に善戦していると言える。しかし、ロシアは圧倒的な物量、特に砲弾の数、兵員の数でゴリ押ししてくる上、米国議会で共和党がウクライナ支援を頑なに拒んでいるため、ウクライナはますます苦戦を強いられている。また、ウクライナ軍の死者・負傷者の数は公表されていないが、こちらもかなりの被害があるだろうことは、欧米系のメディアでも報じられている。
雲行きはかなり怪しくなっているが、それでも、プーチンを勝たせてしまってはならないだろう。侵略戦争を禁じた国連憲章は、国際秩序の要だ。とりわけ、日本は自衛隊という世界屈指の実力組織を有するものの、戦争や武力の行使を否定し、正義と秩序を基調とする国際平和を希求すると、憲法に定められている。ウクライナ侵攻でプーチン大統領を勝たせることは、「正義と秩序を基調とする国際平和」が大きく揺らぐことであり、ひいては日本の安全保障にも多大な悪影響が及ぶ。さらにそうした状況の中で、日本の財政での防衛費増がさらに進むことになり、それは社会保障の削減、増税と、日本の人々の生活を著しく圧迫することになるだろう。
武力のみならず、外交でウクライナ侵攻を止めることが重要であるが、プーチン大統領をただ説得することは極めて難しい。「ウクライナの非ナチ化」というプーチン大統領の掲げる戦争の目的は、要するに民主的に選ばれたウクライナの政権を武力で崩壊させ、自身の傀儡政権を発足させるか、あるいはウクライナそのものを併合することであり(実際には非現実的ではあるが)、それは侵攻開始当初から現在に至るまで変わっていない。また、仮にプーチン大統領が交渉に応じるとしても、侵攻開始後に占領した地域の返還には応じないだろう。
〇ウクライナと東アジアの平和を両立せよ
だからこそ、プーチン大統領が戦争をしたくても戦争を続けられないようにロシア経済を封じ込めることが必要だ。既に、ロシアに対しては、欧米や日本が制裁を科しているが、侵攻を止めるための十分な効果があるとは言い難い状況だ。それは、中国やインド、トルコといった国々がウクライナ侵攻開始後に、ロシアとの経済的なつながりを、むしろ強める傾向があるからだ。また、欧州や日本は侵攻前に比べれば減少させたとは言え、今なお、ロシアの天然ガスや原油等を輸入し続けている。 つまり、まず中国、インド、トルコといった国々に対し、ロシア産天然ガスや石油を輸入を減らすよう、働きかけることが重要であり、同時に欧米や日本もエネルギーでのロシア依存を無くしていくことが重要だ。
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