約1000年の周期で地球を襲う、原因不明の「放射線増大現象」がヤバイ
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「1000年周期で地球を襲う原因不明の宇宙線バースト」というテーマで動画をお送りしていきます。
●謎の宇宙線増加現象
名古屋大学の研究チームは、西暦774年~775年に形成されたとみられる屋久杉の年輪に、炭素14などの放射性物質の割合の上昇を発見し、2012年に研究成果を発表しました。
樹木は同心円状の細胞層を作ることで成長し、徐々に太くなります。
細胞層は季節ごとに成長ペースが異なり、1年周期で色の濃淡を生じながら成長する場合がありますが、そのような細胞層を「年輪」と呼びます。
年輪を数えることで、ある層がどの年代に形成されたのかが理解できます。
さらにある層に含まれる物質の組成は、その層が形成された年に起きた気候変動などの情報を反映しています。
ここで、原子核内に8つの中性子を含む炭素である「炭素14」は、原子核内の中性子数がより少ない他の炭素同位体と比べて、自然界での存在比が極めて低いです。
そんな炭素14は、宇宙から飛来する高エネルギー粒子である「宇宙線」が地球大気と衝突すると起こる連鎖的な反応の過程で形成されます。
つまり樹木の年輪のある層でこの炭素14の割合の上昇が見られた場合、その層が形成された1年間では宇宙線が多く到来していたことがわかるのです。
名古屋大学の研究チームは、西暦774年~775年に形成されたとみられる屋久杉の年輪に、炭素14などの放射性物質の割合の上昇を発見しました。
さらにその後日本以外でも同様の現象が確認されたことから、西暦774年~775年にかけて宇宙線が大量に襲来した可能性が非常に高くなっています。
実際に当時のイギリスやドイツや中国(唐)、さらには日本で記された書物にも、関連する大規模な天体現象を示唆するような記載が残っていることも明らかになっており、そのことも当時宇宙線が増加したことを裏付けています。
このような突発的な宇宙線の増加現象は、発見者である三宅芙沙氏の名前から「ミヤケ・イベント」と呼ばれています。
その後の研究で、西暦993年、紀元前660年、紀元前5259年、紀元前5410年、紀元前7176年にも、宇宙線の増加現象が確認されおり、大体1000年の周期でこのような現象が発生している可能性が示されています。
●ミヤケ・イベントの発生原因
では、宇宙線が突発的に増大する「ミヤケ・イベント」はどのような原因で発生しているのでしょうか?
特定の年代に形成された年輪の炭素14の急増度合いから、大質量星の一生の終わりに起こる超新星爆発や、ガンマ線バーストなどといった、天体現象の中でも特に高エネルギーの現象が起源であるという説もありました。
ただしこれらは地球に大量の放射線を注がせるほど近距離で起こる可能性が極めて低い非常に珍しい現象であり、約1000年周期で何度も発生しているという研究結果と合致しておらず、現在は有力視されていません。
さらに、記録にある中で最も明るく見えた天体現象とされる西暦1006年の超新星爆発「SN 1006」の前後ですら、炭素14濃度の上昇が見られないことも、超新星やγバーストが宇宙線増大の原因である確率を低めています。
ミヤケ・イベントの原因として現時点で最も有力なのは、太陽表面で起こる爆発現象である太陽フレアです。
ですが観測史上最大とされる「キャリントン・イベント」と呼ばれる1859年の太陽フレアの前後ですら、炭素14などの放射性物質が増加している傾向は発見されていません。
ミヤケ・イベントによる炭素14の増加量を太陽フレアで説明するには、キャリントン・イベントのさらに数十倍というまさに桁違いの規模の太陽フレアが発生していた必要があるそうです。
もし本当に太陽フレアが原因だった場合、「スーパーフレア」と呼ばれるほど大規模な太陽フレアが、1000に1度という比較的短周期で発生するというリスクが懸念されます。
また、過去のいくつかのミヤケ・イベントは数年間にわたって継続したという可能性も示されています。
その場合通常数日間継続する一度のスーパーフレアではなく、強力な太陽フレアが年単位で継続したのかもしれません。
どのみち現時点では、その発生原因について確定的なことまではわかっていません。
●太陽フレアの現実的な脅威
太陽フレアが発生すると、高エネルギーの電磁波や、高エネルギーの粒子(放射線)、大量のプラズマガスなど様々なものが宇宙空間に放出されます。
まず太陽フレアで放出されるX線やガンマ線などの高エネルギーの電磁波は、光速で移動するためわずか8分で地球に到達します。
これが地球に到達すると、電波通信障害が発生するリスクが高まります。
そして高エネルギー粒子(放射線)は、30分~2日程度かけて地球に到来します。
放射線なので、宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士や、飛行機の乗客への放射線被害がリスクとして懸念されます。
そして太陽フレアが発生すると、太陽の大気にあたるコロナを構成する、電気を帯びたプラズマガスが大量に宇宙へと放出されます。
これはコロナ質量放出(Coronal mass ejection、CME)と呼ばれる現象です。
CMEは一般的には2日~3日程度かけて地球に到達しますが、事前に別のCMEが発生していた場合、そのCMEが地球への経路にある物質を一掃するため、その後発生するCMEが1日も経たずに地球に到来する事例もあります。
プラズマの粒子が地球の磁気圏に沿って地球の極域に流入し、地球の大気を構成する物質と衝突すると、光を放ちます。
これがオーロラの正体です。
これだけならただ綺麗なだけですが、磁気圏が乱れると地表の送電線に大量の電流が流れ、発電機構が破壊され、大規模な停電が起きる原因にもなります。
総務省は、100年に1度規模の太陽フレアによって日本がどのような被害を被るのかを推定しました。
この推定においては、太陽活動の1周期で1回あるかないかという規模(X10クラス以上)の爆発が2週間にわたって断続的に発生し、さらにその中で、1859年のキャリントンイベントのような、100年に1度かそれ未満の頻度でしか襲ってこない巨大なフレアも発生した場合が想定されています。
日本における被害としては、2週間にわたって昼間の間は断続的に電波通信が困難になる点が挙げられています。
それによって例えば携帯電話などの電波通信機器が使用困難になり、さらに電車や飛行機などの交通手段にも大きな混乱が及ぶことが想定されます。
さらに2週間にわたって断続的にGPS通信が困難になると想定されています。
また地球を周回する人工衛星にも大きな被害が及びます。
まず人工衛星に搭載された太陽電池が劣化し、衛星の寿命が大幅に短縮されてしまいます。
さらに太陽フレアによって地球の大気全体が熱せられ、膨張すると、地表に近い軌道で地球を公転する人工衛星に及ぶ空気抵抗が増大し、軌道が変化します。
すると他の人工衛星やスペースデブリと衝突したり、さらには地球上に落下して衛星自体が失われてしまうリスクも挙げられています。
なお、今回の仮定である「100年に1度規模のフレア」では、防災が進んだ日本においては停電が発生するかは不明とのことです。
今並べたのは想定される被害のほんの一例にすぎませんが、被害は通信技術が発展した都市ほど大きいため、東京は世界最大の経済的損失を被るとも言われています。
具体的な損失額は、東京だけで3000億円にも及ぶそうです。
もしミヤケ・イベントを発生させたような、この想定すらも上回るスーパーフレア級の規模の太陽フレアが起これば、被害はさらに想像を絶するものとなるでしょう。
この太陽フレアの恐ろしいのは、文明が発展すればするほど被害が甚大になるという点です。
一刻も早く対策をしなければ、必ず近い将来のどこかで大きな実害が出てくるはずです。
太陽活動には周期性があり、その周期は約11年です。この周期通りにいくと、次の極大期は2025年頃と予想されており、この頃になると強力な太陽フレアが発生する可能性が高まります。
私たちはこの太陽フレアが起きたときに適切な行動がとれるよう、その現象の特性と危険性を正しく認知しておくことが重要になりそうです。