理論的にあり得ない超巨大構造は「無限ループする宇宙」の痕跡⁉新発見の超巨大構造が話題に
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「宇宙原理に反する超巨大構造と興味深い仮説」というテーマで動画をお送りします。
これまでに、広く信じられている「宇宙原理」で許容される理論限界を超えた大きさを持つ巨大構造がいくつか発見されたことがあります。
本動画では理論的に説明不能な新発見の巨大構造と、その構造を形成した原因に関する興味深い仮説について解説していきます。
●超巨大構造の理論的限界
宇宙において、比較的小さいスケールでは密度の濃淡が非常に顕著です。
例えば銀河間空間より銀河内の恒星間空間の方が高密度であり、太陽系のような惑星系内の空間はさらに高密度である、などといった具合です。
しかし一定以上のマクロなスケールでは、宇宙は一様で等方的であると考えられています。
この考えは「宇宙原理」と呼ばれ、広く知られている宇宙論の多くはこの原理が正しいと仮定した上で語られるものです。
「宇宙マイクロ波背景放射」が非常に高い精度で等方的であることは、この宇宙原理が正しいことを裏付けています。
宇宙原理によると、非常にマクロなスケールでは宇宙は一様かつ等方的で、銀河の分布などの構造の偏りなども存在しないはずです。
さらに光速は有限の値であるため、宇宙が誕生してから膨張しつつ現在に至るまでで、光速で伝わる重力の作用で形成できる天体や構造のサイズには、約12億光年という理論的な限界が存在します。
よって理論的には、重力などの物理的な作用によって形成された、約12億光年を超える銀河の分布の偏りなどの超巨大構造は、この宇宙に存在しないことになります。
●理論限界を超えた構造
これまでに、宇宙原理で許容される理論限界を超えた大きさを持つ巨大構造がいくつか発見されたことがあります。
本動画ではその中でも最近に発見された2つの構造を、その存在を説明する仮説と共に紹介したいと思います。
まず2021年に発見された、地球から現在の距離で約92億光年彼方にある超巨大構造「ジャイアント・アーク」です。
長さ約33億光年にもわたって銀河が周囲より高密度に集まっている領域が広がっており、この構造のサイズは理論的な限界である12億光年を大幅に上回っています。
また2023年には、同じ研究者によって「ビッグ・リング」と呼ばれる超巨大構造が発見されました。
これは直径約13億光年の環状構造で、厳密には奥行きが異なっており、らせん構造を持っているそうです。
ビッグリングは地球から現在の距離で約92億光年彼方に存在していますが、これはジャイアントアークと同じ距離で、しかも天球上の方角も近いため、これら2つの構造は実際に非常に近くにあることになります。
○超巨大構造を説明する仮説
宇宙原理から、これらが何の物理的な作用も受けず、偶然に形成された可能性は極めて低いと言えます。
しかも2つの超巨大構造が物理的に非常に近い位置にあることも、これらが偶然に形成されただけの可能性を低めています。
もし宇宙原理が誤りでないとすれば、これらが形成された原因の説明としていくつかの仮説が提唱されています。
まず、バリオン音響振動という現象の名残であるという仮説です。宇宙が誕生してから約38万年後の「宇宙の晴れ上がり」以前に、宇宙空間を物質の疎密波が伝わっていたと考えられています。
この波は「バリオン音響振動(Baryon Acoustic Oscillation, BAO)」と呼ばれます。
BAOの名残として、現在の宇宙にも銀河の高密度領域が残る可能性が指摘されています。
理論限界を超えた超巨大構造は、このBAOの名残かもしれません。
しかしBAOが由来で残る高密度な銀河の分布は、理論的には三次元的な球面上に分布すると考えられています。
例えばビッグリングは平面的な環状構造に近いため、その点では理論的な予想と合致していません。
最近、「ホオレイラナ」と呼ばれる直径約10億光年の超巨大泡が発見され、こちらもBAOの痕跡である可能性が高いとみられています。
また第二の仮説として、なんと超巨大構造は、今の宇宙が誕生する前に存在していた宇宙の名残である可能性もあるといいます。
宇宙が無限ループしているとする「サイクリック宇宙論」の一種に、「共形サイクリック宇宙論(Conformal Cyclic Cosmology, CCC)」という理論があります。
CCCは2020年にノーベル物理学賞を受賞したロジャー・ペンローズ博士が提唱した理論です。
CCCでは以前に存在していた宇宙の名残が現在の宇宙にも残っている可能性が指摘されます。
確率は極めて低いながら、この仮説が正しければ、巨大構造は以前の宇宙の名残であり、宇宙が無限ループしている証拠ということになります。
CCCによると、以前の宇宙の名残が宇宙マイクロ波背景放射にも「ホーキング・ポイント」と呼ばれる特徴として検出される可能性が語られています。
第三の仮説として、「宇宙ひも」という現象が原因である可能性も指摘されています。
理論的には、宇宙には宇宙ひもと呼ばれる非常に長い物体が存在しており、それが
宇宙の大規模構造の形成に影響を与える可能性があると考えられています。
超巨大構造は、この宇宙ひもの影響で形成されたものかもしれません。
現在信じられている理論で説明できない現象が存在する以上、前提としている数値や理論のうちどれかが誤りであるか、先ほど説明したような魅力的な仮説のうちどれかが正しい必要があります。
どのような結果であってもロマンがあって面白いですね。