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名古屋銘菓・ういろうのガチャガチャが異例のヒット! 鍵は驚きの完成度と地元愛

大竹敏之名古屋ネタライター
青柳ういろうミニチュアマスコット。カプセル入り300円、7個入りセット2300円

渋谷店ではわずか2~3日で完売。名古屋以外で意外な人気

「『名古屋でしか売れないでしょ』『ニッチすぎる』といわれていたのですが、渋谷の店で一番売れていて、発売から2~3日で初回分が売り切れました」

こう語るのはカプセルトイベンダー、ドリームカプセル(名古屋市)代表の都築祐介さん。企画した当の本人もびっくりのヒット商品となっているのは名古屋銘菓・ういろうのカプセルトイ、いわゆる“ガチャガチャ”。2021年12月15日に発売し、通常この手のローカル系商品は販売機1回転分(約40個)を売るのに1カ月ほどかかるところ、予想をはるかに上回るスピードで売れているといいます。

「北は仙台から南は沖縄まで、全国に約50ヶ所ある当社直営ショップ限定の商品なのですが、渋谷でヒットしているだけでなく、各地でまんべんなく売れています。名古屋よりむしろ他エリアの方が販売ペースが早いほどです」(都築さん)

商品はういろうの代表的ブランド、青柳ういろうの7種類の味をモデルにしたミニチュアストラップ。1個300円のカプセル入りの他、7個箱入りギフトセットを同社のネットショップで限定販売し、こちらも既に100セット以上が売れているといいます。

販売機のポップには、名古屋人にとっては懐かしいテレビCMのアニメーションに登場した7人の子どもたちが描かれている。写真はドリームカプセルマーケットスクエアささしま店(名古屋市中村区)
販売機のポップには、名古屋人にとっては懐かしいテレビCMのアニメーションに登場した7人の子どもたちが描かれている。写真はドリームカプセルマーケットスクエアささしま店(名古屋市中村区)

ガチャガチャ市場はコロナ禍で急成長。品質向上とニッチ化で大人買いも

人気の要因は青柳ういろうのブランド力、そして完成度の高さ。「名古屋から転勤などで転居した人は全国に数多くいて、青柳ういろうは誰でも知っていて懐かしく感じられる。また、ういろうらしい色にこだわり、箱に印刷された文字も極小ですがちゃんと再現しました。カプセルトイはいかに本物に近づけるかが生命線で、出来がよければもう1個2個…と続けて買ってくれるんです」と都築さん。

カプセルトイはコロナ禍で急成長した分野のひとつ。自販機専用商品なので対面接客が不要で、アニメなどをモデルとした商品の人気で集客力があるため、商業施設からの出店要請が急増。市場規模は今や500億円にも上るといわれます。国内には約30のメーカーがあり、1カ月に発売される商品は300シリーズ以上。競争が激しいため商品の完成度はどんどん高くなり、それにともない大人のコレクションアイテムとしての価値が高まり、コンプリート狙いの“大人買い”が増えて客単価もアップ。ターゲット層が広がったことで、企業のライセンス商品などマニアックでニッチな商品も増えています。

長さ約65mmと本物のういろうをおよそ1/4にミニチュア化。本物同様に紙のパッケージを使用し、中に2本のういろうのサンプルが入っている。虫メガネでないと見えないほど小さな文字も本物通りに再現している
長さ約65mmと本物のういろうをおよそ1/4にミニチュア化。本物同様に紙のパッケージを使用し、中に2本のういろうのサンプルが入っている。虫メガネでないと見えないほど小さな文字も本物通りに再現している

名古屋人が愛する“7つの味”復活が商品化のきっかけ

ういろうのカプセルトイもそんな市場動向の中で生まれたものといえますが、実は商品化の原動力は都築さんの熱い地元愛でした。

「私は生まれも育ちも名古屋で、青柳ういろうのCMソングを聴いて育ったんです。手土産はいつもういろうで、取引先から『ういろうのおじさん』と呼ばれているほど(笑)。昨年、懐かしいCMの歌詞にあった“しろ・くろ・抹茶・上がり・珈琲・ゆず・さくら”の『7つの味』が復活したと知り、“今しかない!”と商品化に着手しました」(都築さん)

特にこだわったという色の再現のためには、妥協を許しませんでした。「ういろう特有の透明感を出したかった。色が濃いと粘土のように、薄いとゼリーのように見えてしまいます。特に淡い色の『さくら』や『しろ』は難しかった。工場に現物を送って何度も試作してもらい、ようやく納得のいく仕上がりを実現できました」

またネットショップ限定の箱入りギフトセットは、箱にもこだわりが。「お土産なので箱がむきだしのままではお届けしませんよね。そこで、7個を揃えて詰める箱の外側にさらにスリーブといわれるスライド式の箱もつけました。年賀の挨拶で配って回ったんですが、中身のういろうが出てくるまで包装が三重あるので、開けていくたびに驚きがあり、大いに喜ばれました(笑)」

自称“ザ・名古屋人”のドリームカプセル代表・都築祐介さん。「商品サイクルが早いカプセルトイは最初につくった分を売り切ったら終わり、という商品が多いのですが、これは長くずっと売るつもりです」
自称“ザ・名古屋人”のドリームカプセル代表・都築祐介さん。「商品サイクルが早いカプセルトイは最初につくった分を売り切ったら終わり、という商品が多いのですが、これは長くずっと売るつもりです」

おひざ元でも販売開始! ガチャガチャで名古屋を元気に!

こんな都築さんが熱い視線を注ぐのは、ういろうだけにとどまりません。

「今、進めているのは某名古屋めしブランドの商品。あんかけスパ、台湾ラーメン、ひつまぶしなど名古屋には名物が多いので名古屋めしシリーズもイケるのでは、と思っています。和菓子店や飲食店などコロナ禍の影響を受けたお店に、またお客さんが足を運ぶきっかけになるような商品をつくりたい。カプセルトイで“名古屋を元気にしたい!”と思っているんです」

そんな思いがリアルになる動きも。青柳ういろうの製造販売元である青柳総本家の店舗でも、このカプセルトイを販売することになったのです。

直営の3店舗に販売機を設置して1月18日から販売します。いつもとは違ったお客様にも足を止めていただけるでしょうし、ガチャガチャで出たのと同じういろうを是非買っていただければと期待しています」と同社広報の木下美幸さん。

青柳総本家の大須本店、KITTE名古屋店、守山直営店で販売。7つの味を全部揃えたくなる。またガチャガチャの色に合わせていつものお気に入りの味とは違う味を試してみるチャンスにもなりそう
青柳総本家の大須本店、KITTE名古屋店、守山直営店で販売。7つの味を全部揃えたくなる。またガチャガチャの色に合わせていつものお気に入りの味とは違う味を試してみるチャンスにもなりそう

地元愛や地域貢献、コロナ対策など、小さなカプセルトイにはたくさんの思いが詰め込まれているのでした。

ガチャガチャと回して何味のういろうが出てくるか、ワクワクしながら名古屋銘菓を楽しめそう。そして、次にどんな“名古屋ガチャガチャ”が登場するかも大いに楽しみです!

(写真撮影/すべて筆者)

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「名古屋名物・ういろう。幻だった『7つの味』が13年ぶりに復活!」(2021年4月6日)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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