シリア北西部でアル=カーイダと自由シリア軍がロシア軍の爆撃に対する報復砲撃を行い、兵士多数を殺害
シリア北西部では10月27日、反体制派がロシア軍による爆撃(「シリアのイドリブ県に対するロシア軍の爆撃でトルコが支援しアル=カーイダと共闘する反体制派78人死亡」を参照)への報復として、シリア軍拠点に対する大規模な砲撃を行い、シリア軍兵士多数を殺害した。
報復砲撃を行ったのは「決戦」作戦司令室を名乗る武装連合体。シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構(旧シャームの民のヌスラ戦線)とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(国民軍、Turkish-backed Free Syrian Army:TFSA)が中心となって2019年5月に結成。シャーム解放機構が軍事・治安権限を握るイドリブ県、アレッポ県西部、ハマー県北部、ラタキア県北東部のいわゆる「解放区」でシリア・ロシア軍に対する抵抗を続けてきた。
この「決戦」作戦司令室が「解放区」に隣接するシリア政府支配地各所に対して、900発あまりの砲弾を撃ち込んだのだ。
砲撃の標的となった市町村は以下の通り。
- イドリブ県:カフル・ウワイド村、ハザーリーン村、ミラージャ村、シャンシャラーフ村、マアッラト・ヌウマーン市、ハーミディーヤ村、マアッルシューリーン村、ジャバーラー村、ハッサーナ村、マアッラト・マーティル町、タッル・マンス村、トゥラムラー村、カフルナブル市、ハントゥーティーン村、ムアスラーン村、サラーキブ市、ハーン・スブル村、ダーディーフ村、ジャウバース村、カフルバッティーフ村、タッル・ディブス村、ジャッラーダ村、カウカバ村
- アレッポ県:カフル・ハラブ村、バスラトゥーン村、第46中隊基地、ミーズナール村
- ハマー県:ハークーラ村、マナーラ村(タンジャラ村)、ジューリーン村
- ラタキア県:アイン・カンタラ村、ムライジュ村、サルマー町、シャラク村、アブー・アスアド丘
英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団によると、一連の砲撃によって、イドリブ県のサラーキブ市でシリア軍兵士3人、ハーッス村で3人、アレッポ県で2人、ハマー県で3人、ラタキア県のアイン・カンタラ村では4人が死亡した。
これに対して、シリア軍も応戦し、「解放区」各所を砲撃し、イドリブ県のアリーハー市、バーラ村、バルユーン村、サラーキブ市郊外、アレッポ県のタディール村、ハマー県のカストゥーン村、ズィヤーラ町を砲撃し、サラーキブ市郊外で戦闘員1人を殺害した。だが、タディール村では、シリア軍の砲撃に巻き込まれ、男性1人と女性1人が死亡、3人が負傷した。
アル=カーイダによる戦果の鼓舞
報復攻撃に関して、シャーム解放機構のアブー・ハーリド・シャーミー軍事報道官は10月27日に以下のような声明を出し、戦果を鼓舞した。
ドゥワイラ山とは、10月26日にロシア軍戦闘機が爆撃し、国民解放戦線に所属するシャーム軍団の戦闘員78人を殺害したとされる現場だ。
ロシア国防省発表
ロシア国防省は10月27日に声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を39件(イドリブ県15件、ラタキア県8件、アレッポ県3件、ハマー県13件)確認したと発表した。
トルコ側の監視チームも、停戦違反を11件確認したと発表したというが、ロシア側はこれらの違反を確認していないとしている。
米国務省の声明
一方、米国のジェームズ・ジェフリー国務省シリア問題担当特使は、シャーム軍団を狙ったロシア軍の爆撃について声明を出し、3月5日のロシアとトルコの停戦合意への違反だとして懸念を表明した。
声明のなかで、ジェフリー特使は、ロシア軍を「親体制部隊」(pro-regime forces)と呼んだうえで、次のように述べた。
そのうえで、国連安保理決議第2254号に基づいた停戦、和平プロセスへの指示を改めて表明し、「アサド体制とその同盟者たちは、シリア国民に対する無用で残忍な戦争を終わらせる時が来ている」と呼びかけた。