コロナワクチン被害救済措置法案を立民が提出 審査未了は依然4500件超
新型コロナワクチン接種による健康被害の救済審査が遅れている問題で、立憲民主党が6月14日、救済制度の周知や審査体制の充実化のための法案を衆議院に提出した。
健康被害救済申請はこれまでに7700件超に上り、約2800件が健康被害を認定されたが、依然として4500件超の審査が終わっていない状態だ。死亡事案の救済申請も700件近くあるが、審査結果が出たのは1割程度とみられる。申請から1年半以上たっても何の連絡もないケースもあるという。
ただ、通常国会は残すところ1週間を切っており、法案は審議されず廃案となる恐れも出ている。
法案提出後の記者会見で、早稲田ゆき議員は、すでになされている健康被害救済申請のうち約6割の審査が終わっておらず、申請者は審査の進捗状況も全くわからない状態で待たされていると指摘。「コロナワクチンの有効性、効果とともに安全性、副反応リスクを両輪できちんと検証する責任が(接種を推進してきた)国にある」として、被害者救済強化の法案提出の意図を説明した。
法案の正式名称は「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種による健康被害の救済等に係る措置に関する法律案」で、主に以下の4点が盛り込まれている。
① 健康被害審査を担当している疾病・障害認定審査会の人的体制の充実
② 請求者に対する審査状況に関する情報提供、自治体の情報提供体制整備のための政府の財政上の措置
③ 有効性・安全性に関する情報の調査研究と分かりやすい形での公表
④ 未接種者に対する不当な差別的取り扱いを防止するための措置
(法案の詳細は立憲民主党サイト参照)
新型コロナワクチンの健康被害の審査は、最初の2回接種が行われていた2021年夏から始まったが、22年春ごろから被害申請が急増した。
審査未了率が75%を超えていた時期もあった(既報=新型コロナワクチン健康被害の審査滞留か 申請4千人超で審査未了率75%に 被害認定は920人)。
昨年11月、加藤勝信厚労相が審査の遅れを認め、迅速化を表明。審査を担当する部会を1つ増設して3つの部会が分担する体制に移行し、今年3月から審査のペースは加速しつつある(審査会のページ)。
ただ、今年4月には、厚労省がそれまで非公表にしてきた死亡事案の救済申請件数が684件に上ることを国会答弁で明らかにしており、その時点での審査の実績(56件)が1割未満だったことが判明している(詳しくは既報=COVID-19ワクチン死亡被害救済申請は684人 4月時点、審査終了は1割程度)。
健康被害者の相談や支援に取り組んでいるNPO団体「駆け込み寺2020」によると、申請から1年8ヶ月がたっても遺族に連絡がこないケースも寄せられているという。
大量の救済申請の審査が滞り長期化しているため、同団体と遺族の会が今年3月、厚労省や各政党に要望書を提出。今回の法案提出につながった。
ただ、通常国会の会期末は、延長がなければ6月21日。委員会に付託されれば継続審議となるが、付託されなければ審議未了で廃案となる(衆議院における法案の取り扱い状況)。
立憲民主単独で法案は通せないため、与党との調整が必要だが、内閣不信任案提出も取り沙汰され、法案の行方は厳しさを増している。
【追記】この法案は6月20日、厚生労働委員会に付託されたことが確認された(衆議院サイト)。
【訂正】最後の図で審査未了件数に誤りがあり、修正しました。岸田首相が先ほど解散見送りを表明したため、解散に関する記述は削除しました。(2023/6/15)
また、加藤勝信厚労相の名前に誤りがありました。お詫びして訂正します。(2023/6/16)
本法案が委員会に付託されたことが確認されたので追記しました。(2023/6/21)