年間5000億円の「北海道開発予算」が鉄道に使えない不合理 鉄道活性化のため突破口を開くべきだ
2024年9月3日、JR北海道が来年4月からの実施を予定している平均7.6%の運賃値上げについて、国の運輸審議会が市民から広く意見を聞く公聴会が開かれ、意見を述べた一般の公述人4人のうち3人が運賃値上げに反対。賛成した1人についてもJR北海道の経営について厳しい注文を付けたことはこれまでも報じてきた。
北海道開発予算の鉄道への投入の突破口を
記事(「北海道と首都圏では2倍の運賃格差」 JR北海道・運賃値上げ公聴会で指摘された政治課題)で、JR北海道の運賃値上げについて反対意見を述べた公述人は、世界に目を向けると「鉄道復権」が叫ばれており、北海道と道東の面積を持つオーストリアでは4000kmの鉄道網を維持しており、国と州を合わせて年間1250億円の公的資金を投入していること、スイスでも、「世界一遅い」氷河特急に2886億円の公的資金を投入していることに触れた一方で、わが国では2024年度の道路予算約1.8兆円に対して鉄道関連の予算が3000億円でそのうち2275億円が線幹線建設に充てられていることを指摘。毎年5000億円を超える北海道開発予算でも道路に2000億円が充てられている一方で、鉄道には「使えない!」とされていることは不合理だと主張している。
この公聴会に公述人の一人として出席した北海道教育大学の武田泉准教授は、公聴会後の筆者からのインタビューに対して、「北海道開発予算の鉄道への投入の突破口を開く方策として、石北本線西女満別駅の移設による女満別空港駅化が考えられるのではないか」という。「ホーム移設は社会資本整備交付金事業になるが、駅舎や空港との連絡橋の建設は開発予算で、高規格道路延伸と一体化して道の駅と一緒に整備するなどの方法が考えられる」という。「福島県庁はJR只見線絡みで、国定公園区域を拡張して只見線眺望ポイントをその中に入れ、ビジターセンターなどの建設を行っている」。こうしたことからも柔軟な発想で予算措置を講じ「女満別空港駅にもそういったものを併設し、道東の周遊ゲートウェイにすべき」と述べた。
(了)