「北海道と首都圏では2倍の運賃格差」 JR北海道・運賃値上げ公聴会で指摘された政治課題
2024年9月3日、JR北海道が来年4月からの実施を予定している平均7.6%の運賃値上げについて、国の運輸審議会が市民から広く意見を聞く公聴会が開かれ、意見を述べた一般の公述人4人のうち3人が運賃値上げに反対。賛成した1人についてもJR北海道の経営について厳しい注文を付けたことはこれまでも報じてきた。
今回は、反対意見を述べた公述人のうち、JR北海道の値上げは基本的人権にかかわっての「ユニバーサルサービス」の喪失という政治問題であるとの意見を紹介したい。公述内容は国土交通省ホームページでも公開されている。
北海道と首都圏では2倍の運賃格差
この公述人の住む札幌市内の札沼線(愛称・学園都市線)最寄駅から札幌駅までの運賃は現在440円であるが、来年4月の運賃値上げにより470円に上がるという。これが首都圏であれば、同じ距離の山手線の運賃は、今年3月に値上げしたばかりのJR東日本で210円であるという。これは地下鉄との運賃調整という理由があるとはいえ、北海道の利用者は東京の2倍以上の運賃を求められることになる。こうしたことから、これが移動の権利という人間の基本的人権にかかわる「ユニバーサルサービス」の喪失という政治問題になるという意見だ。
JR北海道は2023年度の決算で849億円の売上高を計上、うち鉄道事業の売上高は698億円で、本業の損益を示す営業損失は574億円の赤字だった。これの経営安定基金の運用益で315億円や国からの支援金159億円などを計上した結果、33億円の黒字決算となっている。経営安定基金については、鉄道・運輸機構に2021年7月から2970億円を利率5%で順次貸し付けをおこなっていることから、経営安定基金の運用益についても実質的には国からの支援金となっており、こうした支援金でどうにか経営を維持しているのがJR北海道の現実である。そもそもJR北海道は1987年の会社発足の時点で年間約500億円の赤字が見込まれることを前提として発足している。
しかし、この公述人は、世界に目を向けると「鉄道復権」が叫ばれており、北海道と道東の面積を持つオーストリアでは4000kmの鉄道網を維持しており、国と州を合わせて年間1250億円の公的資金を投入していること、スイスでも、「世界一遅い」氷河特急に2886億円の公的資金を投入していることに触れた一方で、わが国では2024年度の道路予算約1.8兆円に対して鉄道関連の予算が3000億円でそのうち2275億円が線幹線建設に充てられていることを指摘。毎年5000億円を超える北海道開発予算でも道路に2000億円が充てられている一方で、鉄道には「使えない!」とされていることは不合理だと主張した。
(了)