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ChatGPTに社外取締役はできるのか?

横山信弘経営コラムニスト
(提供:shutterstock)

■お飾りの社外取締役たち

「これだったら、ChatGPTに社外取締役を任せたほうがよかった!」

ある物流会社のオーナーは、社長にした息子や信じていた幹部たちの経営に失望し、嘆いていた。

業績の悪化や幹部の不祥事により、経営が傾いたのだ。息子や幹部のお目付け役として、銀行出身の経営者やコンサルタントを社外取締役として招いていたのにもかかわらず、である。だからこそオーナーの怒りは収まらない。

こんなレベルなら、ChatGPTに社外取締役を任せたほうがいい、というオーナーの気持ちもわかる。

そこで今回は、「ChatGPTに社外取締役の役割は務まるのか?」について考えてみたい。

■ChatGPTに社外取締役は務まる(理論上)

結論は、「現実にはできないが、ChatGPTに社外取締役は務まる」である。

まずその理由を3つ記そう。

・中立的で客観的

一つ目が、ChatGPTは中立的で客観的だ。感情やバイアス、忖度の影響を受けない。客観的なデータと分析に基づいた意見を出せる。だから経営陣の偏った判断や主観的な意見を退けられるのだ。

どんなに優秀であっても、人間である以上、この点においてChatGPTに勝ることはないと私は思う。

・情報の整理能力

二つ目が、情報の整理能力である。ChatGPTは膨大な情報を効率的に整理し、要点を的確に把握することができる。

情報を調べたり抽出するのは難があるが、整理・優先順位付けなら、人間の能力をはるかに超えるだろう。

複雑で多様なデータを分析し、経営陣にとって重要な情報を整理し、優先順位付けする。そのことで、経営判断のポイントを示すことができる。議論が白熱した際、冷静に情報の取捨選択ができる「人」の存在はとても大きい。

・異視点の提供

三つ目が、ChatGPTは幅広い専門知識、さまざまな分野の情報やトレンドを吸収し続けている点だ。なので、

「他業界では、このように苦境を乗り越えた」

「あの大企業は、こうして事業を成長させた」

といった、現経営陣にはない異なる視点をChatGPTは提供できる。同じ業界、同じ会社で長く経営に携わっていると、画一的な視点しか持てないものだ。この「異視点」を提供することは、社外取締役の大きな役割なのである。

以上3つの理由から、ChatGPTに社外取締役の役割を任せることは有益だ。

■ChatGPTが一つのモノサシになる

不祥事を起こした企業に、ChatGPTは、倫理的な問題や法令遵守の重要性を繰り返し経営陣に対して強調できるだろう。それを基にした透明性の高い意思決定を支援することもできるだろう。

社外取締役は重要な役割を果たすべきである。にもかかわらず、現実には日本を代表する大企業でも、ガバナンスの機能不全やコンプライアンス違反を繰り返している。

もちろん現実には不可能だ。しかし、

「これだったら、ChatGPTに社外取締役を任せたほうがよかった!」

とオーナーに指摘されないよう、社外取締役は自分の存在意義を見直すべきだ。そして自分よりもChatGPTのほうが機能すると考えるなら、安易に社外取締役を引き受けるべきではない。

いっぽう経営陣は、ChatGPTに任せたくないなら、同等のスキルや意欲のある社外取締役を見つけてくることである。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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