「みんなの毎日を安全に楽しく!」アイデアコンテスト(小学生対象)授賞式の開催 #こどもをまもる
小学生を対象としたアイデアコンテスト
2023年4月にこども家庭庁が発足し、安全対策課でこどもの安全が検討されるようになり、経済産業省が玩具や子ども用製品の安全確保に対する規制を強化するなど、こども視点に基づく安全な社会システムの構築が強く求められている。
筆者が理事長を務めるNPO法人 Safe Kids Japanでは、こども中心の社会システム構築活動の一環として、小学生を対象としたアイデアコンテストを実施し、2024年1月28日に、オンラインで授賞式を開催した。
コンテストの目的
本コンテストの目的は次の2つである。
・こどもが、自分たちの危険や安全について考えるきっかけとする
・おとなが、こどもの視点を垣間見ることで、製品開発を含む、より安全な環境作りにつなげる
作品の募集
本コンテストで募集したのは、“生活の中にある「キケン」と「あんぜん」”をテーマとした、写真付きストーリーや夢のアイデアである。アイデアは、手描きのイラストなどで自由に表現し、アイデアについての説明や工夫した点などは、審査員にわかりやすいように文字で補足してもらった。
たとえば、
・こどもが生活の中でケガをしそうだと感じる場面や状況(例:歯みがき中にいすの上に立つ、棒付きのアイスキャンディを食べながら歩く、など)の写真と、その場面や状況を安全にするための工夫やアイデア
・ケガから自分を守るために使っている製品や便利グッズの写真と、その製品・グッズを使っている目的(いつどんな時に使う?なんのために使う?)
・今より安全に過ごすために、「あったらいいな!」と思う製品のアイデアとそう思った理由
などである。
作品の募集期間は2023年11月1日から11月30日の一ヶ月間で、作品はファイルをアップロードする形で送ってもらった。
本コンテストは、経済産業省、消費者庁、こども家庭庁の後援を、アマゾンジャパン合同会社およびNPO法人 とうきょう・はっぴーくらぶの協力をいただいて実施した。また、こども関連製品の安全やデザインに詳しい専門家の方々に審査員としてご協力をいただいた。
送られてきた作品
11月1日に募集を開始したが、一週間経っても二週間経っても一向に作品の応募がない。コンテストの事務局はじめ、Safe Kids Japan一同いささか不安に襲われ始めた頃、一件目の応募があった。タイトルは「アレルギーパスポート」。アレルギーのために食べられないものがたくさんあるクラスメイトが、好き嫌いをしていると思われたり、食べてはいけないものを間違って食べてしまったりしないようにパスポートを作ろう、というアイデアだった。友達を思うやさしい気持ちが溢れるすばらしい作品である。
その後も続々と作品が送られてきた。いずれもこどもならではの視点で作られたユニークかつ有効性の高い作品ばかりだった。
応募総数は14件。数としては決して多くないが、こどものケガを減らすための基本的な考え方である「変えられるものを見つけ、変えられるものを変える」ことを具体化するアイデアばかりであることに驚いた。こどもが重大なケガを負うと、「こどもから目を離さないようにしましょう」「走らないようにしましょう」などと実際には行うことが不可能なことを指摘して、それで予防ができると勘違いしているおとなが多いが、日々現実に向き合っているのはこども達である。こども達は、何をどのように変えればケガをしないようにできるか、を知っているのである。
各賞の決定
審査員の方々に送られてきた作品を見ていただき、「最優秀賞」「優秀賞」などの各賞を決めていただいた。最優秀賞に選ばれたのは、小学2年生の児童が考案した「すいとうななめがけストッパー」である。今は自宅から水やお茶を入れた水筒を持参するよう求めている学校や幼稚園・保育園が多い。水筒を斜めがけにしているこどもも多いが、その状態で前方に転倒すると、首から提げていた水筒が地面とおなかの間に挟まり、腹部を強打して重傷を負うことがある。この児童も通学時に水筒を持参しているそうだが、両親の話などから転倒による重傷例があることを知り、転倒しても水筒が身体の前に来ないようクリップで服の裾に固定する、という方法を考えた。作品には「(水筒を)リュックに入れるようにすすめても、それをやらない人がいると思うので、そういう人達向けの対策を考えました」と書かれている。
消費者庁のこども安全メールVol.635「水筒を持ち歩くときの転倒事故に注意!」には、「子どもに水筒を持ち歩かせるときは、以下のポイントに注意しましょう。」として、
・水筒はなるべくリュックサック等に入れましょう
・水筒を首や肩に掛けているときに走らないようにしましょう
・遊具等で遊ぶ場合は、水筒を置いて遊ぶようにしましょう
と書かれている。しかしリュックサックを使っていないこどももいるだろうし、こどもに「走らないようにしましょう」と言っても走りたい時に走るのがこどもである。この児童は現実を見据え、それを踏まえた対策を取ろうとしているのである。
授賞式
前述のとおり、授賞式は2024年1月28日にオンラインで行われ、日本全国、そして海外から、11人のこども達が参加してくれた。そしてそれぞれの作品を考案した理由や背景、工夫した点などを話してくれた。審査員の方々にもご参加いただき、こども達に直接講評を伝えていただくことができた。
受賞作品は下記のとおりである。
こちらを見ていただくと、今すぐにでも製品化、または応用できそうな作品や、いずれは実現するかもしれないおもしろい作品ばかりであることがおわかりいただけると思う。おとなは「できるはずがない」と考えるかもしれないが、こども達の発想はかくも自由なのである。このような発想が次の時代を作っていくのではないだろうか。
おわりに
今年度ははじめての開催ということもあり、試行錯誤を繰り返しながらの企画・開催となった。作品を送ってくれたこども達や保護者の皆さん、ご多忙の中、作品の審査をしてくださった審査員の方々、そして、後援をいただいた省庁や協力をしてくださった企業・団体の皆さんに、この場を借りてお礼申し上げたい。誠にありがとうございました。
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「#こどもをまもる」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の1つです。
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