NPBを目指して― 阪神、オリックスとの2連戦で最後のアピールをした日本海オセアンリーガーたち
■ラストアピールの場
日本海オセアンリーグ(NOL)にとって、今季最後の試合となった対NPB2連戦。4球団からの選抜メンバーでチームを組み、阪神タイガース、オリックス・バファローズのそれぞれファームに挑んだ。
NPBドラフト会議に向けて、これがラストアピールの場となる。
タイガースは1軍が10月8日からのクライマックスシリーズを、ファームが同日のファーム日本選手権を控えているとあって、この試合を調整の場としていた。よって、出場メンバーが非常に豪華で、オセアンリーガーたちにとっては僥倖となった。
甲子園球場での1軍練習を終えて駆けつけたのは原口文仁選手、陽川尚将選手、島田海吏選手、榮枝裕貴選手で、そのほかマルテ選手、ロハス選手、ロドリゲス選手ら外国人野手3人衆も揃って出場した。
投げては藤浪晋太郎投手や小林慶祐投手ら1軍投手が、そしてスーパールーキー・森木大智投手も“クローザー”として登板した。
一方、バファローズは完全に若手選手中心で、福永奨選手や渡部遼人選手、池田陵真選手、横山楓投手、山中堯之選手、園部佳太選手、大里昂生選手らルーキー勢が顔を揃えた。
ただ一人、ベテランのT―岡田選手が調整で出場していた。
■10月5日 阪神タイガース(鳴尾浜球場)
NOL|000 020 210=5
HT |401 100 10×=7
【試合経過】
初回、虎打線が襲いかかった。先頭の江越大賀選手が先発・菅原誠也投手(滋賀)の144キロストレートをとらえてライトポール際に放り込むと、マルテ選手の四球、原口選手の左前打でランナーをため、仕上げは陽川選手の“ゴリラパンチ”がレフト上部のネットを揺らして、タイガースが計4点をマークした。
三回には松向輝投手(富山)が押し出し四球、四回は松下勇輝投手(富山)が島田選手にソロ弾を献上し、6-0となった。
NOLの反撃は五回だ。先発・川原陸投手から長谷川勝紀選手(滋賀)、大﨑太貴選手(滋賀)が連続四球で一、二塁とすると、矢野広将選手(富山)の犠飛、吉村慎之介選手(福井)の適時打で2点を挙げた。
NOLは七回にも大﨑選手が二塁打で出塁すると、藤村捷人選手(石川)が三塁打で還し、矢野選手も前進守備の間隙を突く三遊間突破のヒットで加点した。いずれも藤浪投手の変化球をとらえたものだった。
その裏、タイガースが高山俊選手の二塁打と北條史也選手の犠飛で1点追加。
八回は根本大輝選手(富山)が小林投手の内よりストレートを捉え、ライトへ弾丸ライナーの一発を叩き込んで2点差にまで迫った。
八回裏は後藤茂基投手(福井)が、タイガースの将来の主砲である前川右京選手、井上広大選手を連続空振り三振に斬って唯一の三者凡退イニングを作ったが、最後は森木投手に抑えられ、7-5でゲームセットとなった。
■10月6日 オリックス・バファローズ(杉本商事バファローズスタジアム舞洲)
NOL|101 002 301=8
OB |700 001 000=8
【試合経過】
初回、エラーのランナーを4番・阪口竜暉選手(福井)が左中間への適時二塁打で還して先制するも、その裏に水野琉唯投手(富山)が緊張からか、6安打と2四死球で7点を失った。
三回に再び阪口選手の適時打、六回に川﨑俊哲選手(石川)の中越適時二塁打と藤村選手の押し出し四球、さらに七回には川﨑選手の押し出し四球と熊谷宥晃選手(福井)の中前2点打で計7点を挙げ、最終回の十回(特別ルール)にもT―若杉選手(富山)の左安打で1点を追加した。
投手陣はトラビエソJr.投手(石川)、岩田隼冬投手(滋賀)が三者凡退でリズムを作り、松原快投手(富山)、松向投手、吉村大佑投手(滋賀)も無失点でアピールした。
バファローズも六回に渡部選手が犠飛で1点を挙げており、通常のルールであれば8-7でNOLは敗れていたが、練習試合の特別ルールによって8-8の引き分けで終了となった。
チーム計13安打を放ったNOLは、同9安打のバファローズをヒットの数では上回った。
■おもな選手のコメント
《松向輝》富山GRNサンダーバーズ
5日…1回 安打1四球3三振2失点1
6日…1回 安打0四球1三振0失点0
「(5日)1軍で出ているいいバッターが多かったので、自分のストレートがどれだけ通用するのかというのを試したくて、ほぼストレートで勝負した。ストレートは走っていたので、よかった。やっぱりストレートが通用しないと上では投げられないので、しっかり投げた。
(先頭の四球)いろいろズレがあって、修正の方法を試したけどうまくいかなかった。自分で何が悪かったのか映像を見て修正したい。でも先頭打者の初球から140キロ台後半の球が投げられた。スピードの面、ストレートの走りはよかったので、もっと真ん中高めに強い球で大胆にいってもよかったかな。
(6日)ストレートの走りは悪くなかったし、スライダーやツーシームの変化球のコンビネーションもできていたかなと思う。
(先頭の四球)出してしまったことはしかたないので、すぐ次に切り替えることが大事。四球が少ないピッチャーじゃないので、なくそうと思って腕が振れなくなるよりはしっかり勝負してと思った。逃げたりはしていなかったので、勝負しにいった中だったので、よかったと思う。
(ドラフト)1年間しっかり投げきったので、やりきった感はある。あとは待つだけです」
《松原快》富山GRNサンダーバーズ
6日…1回 安打1四球1三振1失点0
「(投球)先頭四球だったので、そこだけはちょっと悔いが残っている。でもそのあとは、ある程度修正できたかなと思う。
(どういう修正)変化球とまっすぐのコンビネーションで。まっすぐが入ってなかったので、スライダーで整えるようにした。
(ボール自体)最速147キロだったので、もう一つ高い数字を出したかったかなというのがある。でもシーズン終盤を通して140キロ台後半を維持できたのはよかった。来季はアベレージで150キロをキープしたいと思っている。
今年、アベレージが4~5キロ上がった。去年は140~2キロだったのが、常時147~8キロ出るようになったのは、よかった。
調子を落とした時期もあったけど、今はいい状態に戻っている。
(ドラフト)呼ばれることを祈って、テレビの前で待ちたい」
《根本大輝》富山GRNサンダーバーズ
5日…捕邪飛、空三振、見三振、右本塁打①
「(ホームラン)手応えはよかった。最後のアピールをする場だったので、いい結果を見せることができたらと思っていた。そこまでの打席はよくなかったけど、最後の打席で悔いが残らないようにと思って、しっかり打った。
(今季)自分の中では成長が見られた1年間だった。最初のほうはホームランが狙えるようなバッターではなかったけど、吉岡(雄二)監督や細谷(圭)コーチに意識だったり体の使い方を教わって、シーズン後半からはいろいろ試したりすることができた。
(自分の形は見つかったか)まだいろいろ…現状としていいものはあるけど、そのときの調子とか体も変わるし、相手ピッチャーも違うので、試行錯誤している。
そんな中での最終打席は、普段どおりにやっても詰まり気味だったので短く持って、ちょっと上から叩くようにした。長打は狙ってなかったけど、結果的にああいうふう(ホームラン)になってくれたので、よかった」
《矢野広将》富山GRNサンダーバーズ
5日…一飛、一邪飛、左犠飛①、左前打①、二ゴロ *盗塁1
6日…左飛、左前打、右邪飛、遊ゴロ、一邪飛、左前打
「(5日)打てなかった打席もあったので悔しいというのが大きい。
(チャンスに強い)でも、犠牲フライもタイムリーやホームランで還したかった。
(盗塁)一つでもアピールできるように、盗塁は絶対に決めようと思っていた。
(森木の152キロで二ゴロ)この日の試合の中で一番いいボールだった。
(6日)最後の試合で、NPBに行くための最後のアピールの場だったので、なんとしてもアピールしたいという気持ちが強かったので、必死に頑張るだけだった。
この試合に人生を懸けていったので、そんな気持ちでプレーした。
(今季)結果的にはもったいない部分というか、タイトルも獲れてないし、まだまだという部分もあったので、全然満足のいく1年ではなかった。でも、吉岡監督や細谷さんの指導もあって少しは成長できたので、いい1年だったと思う。
(成長)その日その日、試合ごとにバッティングの形が変わってきた。対応して、変えていきながら、シーズンを通して戦っていけた。自分のフォームや相手ピッチャーの特徴も踏まえて、考え方も変えて対応できた。
これは自分ひとりではできなかったことで、指導があったからこそ、成長できた。ただ、まだもっとできる部分もあったかなとは思う」
《藤村捷人》石川ミリオンスターズ
5日…四球、一邪飛、三飛、右線三塁打①、一ゴロ *盗塁2
6日…中飛、中前打、中前打、四球①、遊ゴロ、二安打
「(5日の藤浪)初球のまっすぐ(156キロ)が今までに見たことないような軌道でズドンと速く感じたし、ピッチャーがすごく近く感じた。
(三塁打)インスラを待っていたわけじゃなかったけど、反応でクルッと回って打てた。一塁線を抜けて三塁までいけるとは思ってなかったけど、いつもいく気でいるんで『いってしまえ!』と思って走った。
(盗塁も2つ)出たら走る気ではいつもいるので。2つ目はちょっとピッチャーのモーションを盗みにくかったので、ディレード気味にいった。スタートを切らないのが一番ダメだと思ったので、それで決められてよかった。
(6日)今年最後になるし、いい形で終われるようにと、後輩たちに姿を見せられるようにと思いながら、1打席1打席を出しきるという気持ちでやった。
(NPBとの試合)自分は即戦力の年齢なので、直接対決できるところで存在感を出してアピールしないとダメだと思っていた。1年間通してNPBとの全試合に呼んでもらったけど、対NPBでは結果も出せて、出しきれたと思う」
《後藤茂基》福井ネクサスエレファンツ
5日…空三振、空三振、遊ゴロ
「(三者凡退)今年最後の試合で、自分自身もいいピッチングができた。これを踏まえて、今年の冬もしっかり体を作っていきたい。
(前川、井上を連続三振)しっかり低めに投げようと思っていたので、その結果。
(今季)ケガもしてしまい、シーズンを通して投げられなかった。シーズンを通して戦うことの難しさを知れた。来年は1シーズン投げられるように頑張りたい。
(シーズンでは2.37で最優秀防御率を獲得)すごく嬉しい。来年はこの賞だけでなく、投手全部の賞を獲れるよう頑張りたい」
《阪口竜暉》福井ネクサスエレファンツ
6日…中二塁打①、左前打①、一邪飛、二安打、四球、三飛
「(最後の試合)振れるというのが自分の魅力でもあるので、それは見せられたのはいいけど、もうちょっと長打が欲しかった。
(NPB相手)ちょっと力が入るところもあるけど、そこは抑えてしっかり自分のプレーができるようにと臨んだのが、今日はいい結果になったかなと思う。
(ポジション)去年はずっとサードで、今年も最近はサードを守っている。基本は内野でレフトも。内外野どっちもできるのは強み。
(ドラフト)ドキドキする。結果も残せていたわけじゃない。リーグ戦でももうちょっと打てたなというのがある。でもそれも踏まえて縁のあるチームに、NPBに行きたい気持ち、それだけです」
■西村徳文 選抜監督の総括
2試合とも指揮を執った西村徳文監督が、総括した。
「オセアンの選手たちはよく粘って、よくやってくれたと思う。当然、レベルの違いはある。でもレベルとは別にいろんな選手のタイプがあるが、ここでしっかり戦えたのは大したもの。ただ、自分の役割を考えてそれが出せれば、もうちょっと点が取れるんじゃないかなと思った。それでもなんとか形にはなった。緊張もあるだろうし力も入るだろうし、最後だからいいところを見せなきゃというのも当然あるし、そんな中、持ち味は出せていた。いいものを見せてくれた」。
一定の手応えを感じているようだった。
■NPBドラフト会議は10月20日
NPBスカウトの前で存分にアピールできた選手、できずに悔しい思いをした選手、それぞれいただろう。しかしなにより、ファームとはいえNPBの本拠地で、自らが目指すNPBの選手と戦えたことは大きな収穫になる。
足りないもの、伸ばしていくべきもの、自身の現在地など、さまざまな気づきがあっただろうし、それは今後取り組んでいくべき課題になる。
今年のNPBドラフト会議は10月20日だ。創設1年目の日本海オセアンリーグから何人が指名されるか、非常に楽しみである。
(表記のない写真の提供:日本海オセアンリーグ)
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