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「冗談でしょ? 無責任極まりない」G20・米露首脳会談でのトランプ氏の言動に海外メディア驚愕 

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
プーチン氏に「選挙に干渉するな」と言ったトランプ氏だが、その態度に問題ありか!?(写真:ロイター/アフロ)

 G201日目に行われた、注目の米露首脳会談。

 アメリカのメディアがこの会談でのトランプ氏の嫌味な言動を問題視している。

 中でも、「冗談でしょ?」と驚愕の色を隠しきれないのが、トランプ氏の“宿敵”CNNだ。

 「トランプ、ロシアの選挙介入をこうあざけった」というタイトルで、その態度を痛烈に批判した。

見下した態度

 今回のトランプ氏とプーチン氏との会談で注目されていたことに、トランプ氏がプーチン氏に「アメリカの選挙に今後干渉するな」と釘を刺すかどうかということがあった。

 そして、G20の際、プーチン氏と並んで座ったトランプ氏は、あるレポーターにこう聞かれた。

「ロシアの大統領に、アメリカの選挙に今後干渉するなというのですか?」

 これに対してトランプ氏はニヤニヤ笑い、指を振り動かしながら、まるで冗談でも言うようにプーチン氏にこう言ったのだ。「選挙には干渉しないで下さいよ」(下記動画)。

 CNNは、この時のトランプ氏の様子について、「冗談でしょ?」と驚愕している。

 トランプ氏のこの態度には「素晴らしい男性(プーチン氏)に向かって、私につまらないことを言わせたいのか? 言ってやるよ、そうすれば嬉しいんだろう?」とでも言いた気な、否定的で見下している姿勢が見え見えだからだという。

 プーチン氏に言う必要はないとトランプ氏が感じていたところの発言(「今後選挙に干渉するな」)をぞんざいに、メディアや視聴者向けにしてみせたように見えたのだ。

 

 また、同様の態度は、先日、NBCのMeet The Pressでインタビューされた際にも現れていたという。筆者も、この番組は視聴したが、確かに、トランプ氏は、司会者に「G20では、ロシアの選挙介入についてプーチン氏と話すのですか?」と聞かれた時、「君が望むなら、そうするよ」と答えていた。選挙介入なんて話題にしたくはないけど、君たちは話題にしてほしいんだろ?、だったらするよ。腹の底では、そう感じてるような様子だった。

 CNNがトランプ氏のこの態度は最悪だと問題視しているのは、アメリカの諜報機関とムラー氏の調査で、ロシアがトランプ氏を勝たせるために2016年の選挙にアグレッシブに干渉しようとしたことが確認され、また、2020年の選挙でも干渉する可能性が指摘されているからだ。

 そのため、CNNは「選挙に干渉をしようとした国に2度と干渉するなという考え方をあざけったトランプ氏の態度は無責任極まりない。ロシアに“また選挙に干渉せよ”と言っているのと基本的に同じだ」と批判している。

ロシアより自国の政敵を懸念

 ワシントン・ポスト紙も、同様に、トランプ氏のこの態度を以下のように批判している。

「プーチンとの会談で、“ロシアが2016年の大統領選に真剣に介入する努力をしてトランプを勝たせようとしたという十分な証拠をトランプが受け入れず、また、その証拠を損なおうとすることにより、国の安全を危険にさらした”という政府の批判が復活したように思われる」

 折しも、プーチン氏は、今週、ファイナンシャル・タイムズ紙のインタビューで「自由主義は廃れ、目的をもう失っている」と民主政治を攻撃する発言をしたばかりだ。そんなプーチン氏に対して、強く毅然とした態度で「選挙に干渉するな」と釘を刺さなかったトランプ氏は批判されて当然かもしれない。

 一方、トランプ氏とは対照的なのがイギリスのメイ首相だった。プーチン氏との会談後、「ロシアが他国への干渉やサイバー攻撃といった無責任で安定を脅かす行動をやめない限り、英露関係の正常化はない」と毅然とした態度を示した。

 そのため、ワシントン・ポスト紙は、

「他の指導者たちはプーチンにプレッシャーを与えようとしたが、トランプは自国のライバルにフォーカスした」と皮肉った。

民主党から社会主義党に改名?

 実際、トランプ氏はG20に参加しながらも、同じ時間に、アメリカで行われていた、大統領選でライバルとなる民主党大統領候補によるテレビ討論会が気になって仕方がなかったようだ。

 討論会1日目の様子についてトランプ氏は「退屈だ」と言い放ち、2日目の討論会に出たジョー・バイデン氏とバーニー・サンダース氏については「スリーピー(眠たそうな)・ジョーやクレージー・バーニーにとっては、いい日じゃなかったそうだ。1人は疲弊し、もう1人は狂っている」とツイートしている。

 また、メルケル首相との会談の冒頭「(討論会を)見るより、あなたと時間を過ごすことを楽しみにしている」と言ったものの、会談直前まで討論会を視聴していたトランプ氏は、討論会の参加者全員が不法移民に医療サービスを提供することに賛成したことについて「残念ながら、彼らは米国民に何を与えるか議論していない。良くないことだ」と語った。

 また、ブラジルのボルソナーロ大統領と会談冒頭では「民主党員が党名を民主党から社会主義党に変えようとしているという噂がある」とまで言っている。

 つまり、トランプ氏はG20よりも討論会の状況を懸念していたのだ。

 確かに、G20という場で、選挙介入をしたロシアには甘く、自国の政敵には厳しい態度を見せるのはいかがなものか? それでなくとも、以前から、ロシアには甘いと批判されてきたトランプ氏なのだ。

 

 6月29日には米中首脳会談が行われるが、トランプ氏が習氏にどんな態度を見せるのか注目されるところだ。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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