Yahoo!ニュース

トランプ氏、安倍氏のイラン訪問の舞台裏を明かす「イランが米国との取引について安倍氏にアプローチ」

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
安倍首相は結果的にイランとアメリカに振り回されてしまったのか?(写真:つのだよしお/アフロ)

 先日のイラン訪問の際、緊張関係が続くアメリカとイランの“仲介役”として、トランプ氏のメッセージを伝えたという安倍首相。安倍首相がトランプ氏のメッセージをイラン側に伝えるまでにはどんな過程があったのか?

 トランプ氏はNBCテレビの政治番組「ミート・ザ・プレス」(米国時間6月23日放送)で司会を務めるチャック・トッド氏のインタビューを受けたが、下記の未編集インタビュー動画の中で、その過程について触れている。なお、そのくだりはテレビで実際に放送された映像では削除されている。

 上記ビデオの4分半〜5分半あたりがそのくだり。

トッド氏:安倍首相を通じて、アヤトラ(イランの最高指導者=アリ・ハメネイ師)に手紙を送ったんですよね。すると、アヤトラは、あなたとは対話したくないと言ったようですね。

トランプ氏:私は手紙を送っていません。

トッド氏:口頭でメッセージを伝えてもらったのですか? 安倍首相は、あなたのために、何を伝えたのでしょうか?

トランプ氏:彼(安倍首相)は素晴らしい人物です。私の友達の1人です。彼(安倍首相)は彼ら(イラン側)にも明らかに近い人物だ。前から、イランの石油の最大のバイヤーだったと思います。

トッド氏:安倍首相は彼ら(イラン側)にあなたのメッセージを伝えたのですか?

トランプ氏:いや、彼(安倍首相)は何かをしたがっていたんです。

トッド氏:OK

トランプ氏:安倍首相によると、彼ら(イラン側)が彼(安倍首相)にアプローチしてきたんです。首相によると、彼ら(イラン側)はこう言った。「トランプとはどう関わったらいいのか、我々は取引できるのか、何かできることはないのか」。安倍首相は私にそう話してくれました。私は(安倍首相に)ききました。「私が言っても構わないのか?」と。すると彼(安倍首相)は「特に構いません」と言ったんです。つまり、彼ら(イラン側)が安倍首相に(トランプ氏と取引できるのか)アプローチしてきて、そして、安倍首相が私に(そのことを)電話で伝えた。私は(安倍首相に)こう言いました。「(イラン側に)以下のメッセージを伝えてほしい。核兵器を所有することはできない。そうしてくれれば、それ以外のことは協議して取引きできる。しかし、核兵器を所有することはできない」と。

 つまり、トランプ氏の話によれば、イラン側が安倍首相にトランプ氏との関わり方や取引について打診してきたことを安倍首相からきいたトランプ氏が、安倍首相を通じてイラン側にメッセージを送ったという過程があったことになる。

 しかし、イラン側が最初にアメリカ側との取引について安倍首相にアプローチしたにもかかわらず、ハメネイ師はトランプ氏との対話をきっぱりと拒否してしまった。

 イラン側は本気でアメリカ側と取引する気持ちがあったのか?

 振り返ると、5月に来日したイランのザリフ外相も「(米国とは)取引しない」と述べ、対米交渉の可能性を否定していた。

 しかし、トランプ氏は「ミート・ザ・プレス」で主張した。

「イランは交渉を望んでいる。彼らは取引を望んでいる」

 一連の過程や状況を考えると、“仲介役”をした安倍首相は、結果的に、イランとアメリカに振り回されてしまったとしかいいようがない。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

飯塚真紀子の最近の記事