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謎の組織フリーメイソンの正体とは?

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
東京メソニックセンターのブルーロッジ室(フリーメイソンのD.B.I.氏提供)

世界中に数多くの支部を持ち、謎の組織と言われるフリーメイソン。秘密結社として世界を陰で牛耳っているとか、支配しようとしているといった陰謀論が常に渦巻いてきましたが、その正体とはいったいどのようなものなのでしょうか。

9月3日に静岡のSBSラジオの番組「鉄崎幹人のWASABI」で、フリーメイソンについてお話しました。せっかくですので、番組スタッフに事前に送ったメモをもとに、この拙稿ではフリーメイソンについて、基本的なことを紹介したいと思います。なお、筆者はフリーメイソンの会員ではありません。

●フリーメイソンは世界最古で最大の友愛組織

フリーメイソンは、世界最古で最大の友愛組織と言われております。親睦団体です。アメリカを中心に会員は世界で約600万人いるとみられています。

では、日本にはどれほどの会員がいるのでしょうか。フリーメイソンの日本本部に当たる日本グランドロッジに取材しましたところ、その傘下の会員数は約1500人で、そのうち日本人は約250人とのことでした。

日本グランドロッジは東京タワーそばの芝公園にあります。筆者も先日足を運びましたが、独特の雰囲気を醸し出す建物となっております。日本海軍将校の親睦団体「水交社」の本部ビル跡地にあります。連合国軍総司令部(GHQ)の日本占領時に、フリーメイソンの物となりました。興味のある方は訪れてみるとよいでしょう。

グランドロッジの下部組織として、ロッジ(会所)があります。日本では、東京や横須賀、三沢、佐世保、岩国、沖縄など米軍基地のある場所を中心に全国に15カ所存在しております。米軍関係者の中に、フリーメイソンが多いことのあらわれでしょう。

日本各地にあるフリーメイソンのロッジ(出所:橋爪大三郎氏著『フリーメイソン 秘密結社の社会学』小学館新書)
日本各地にあるフリーメイソンのロッジ(出所:橋爪大三郎氏著『フリーメイソン 秘密結社の社会学』小学館新書)

●もともとは石工組合

英語のメイソン(mason)は石工(いしく)やタイル工を意味します。その言葉通り、フリーメイソンの起源は、中世後期のイングランドの石工組合と言われております。つまり、石の大工や石材商人が集まって組合を作り、それが歴史的に友愛団体に発展してきました。

現在につながるフリーメイソンは1717年にイギリスで発足しました。3年前の2017年は、フリーメイソン創立300年の節目の年でした。

なお、英語では、組織をさすのにフリーメイソンではなく「フリーメイソンリー」と言います。短くメイソンリーと言われることもしばしばです。そして、個々のメンバーをさすのに「フリーメイソン」「メイソン」と言っております。しかし、日本語では普通、組織もメンバーもどちらも「フリーメイソン」と言っております。

東京メソニックセンターにある日本グランドロッジ室内(フリーメイソンのD.B.I.氏提供)
東京メソニックセンターにある日本グランドロッジ室内(フリーメイソンのD.B.I.氏提供)

●フリーメイソンはキリスト教から派生

フリーメイソンはもともとキリスト教から派生しました。キリスト教からスピンオフし、世俗化したと言われております。

宗教団体ではありません。あくまで民間の任意団体です。人種や民族、宗教、信仰、所属、階層を一切問わず、誰にでも門戸を開いています。

既存の宗教に属したまま、フリーメイソンに参加することができるのです。仏教徒でもイスラム教徒でも入会できますが、神を信じない無神論者は会員になることはできません。

フリーメイソンには、メンバー加入の儀式や昇格の儀式があります。エプロンをはじめ、独特の衣装に身を包み、一見すると、劇のような儀式に参加しなくてはなりません。宗教の儀式のようにも見えます。しかし、繰り返しになりますが、フリーメイソンは宗教団体ではありません。

フリーメイソン内では、プレンティス(徒弟)、フェロー(職人)、マスターメイソン(棟梁)の主に3つの階級があります。

教義はないのですが、兄弟愛、真実、救済という3つの信条を掲げています。

 フリーメイソンの日本グランドロッジが入居する東京メソニックセンター(高橋浩祐撮影)
フリーメイソンの日本グランドロッジが入居する東京メソニックセンター(高橋浩祐撮影)

●メンバーは原則、男性のみ

メンバーになれるのは原則、男性のみになっています。ただし、アメリカやフランスなどでは女性が会員だったり、女性だけのフリーメイソン関連団体も存在したりしています。

日本にあるフリーメイソンへの入会を考え、前述のロッジと言われる会合支部に参加をしている筆者の友人は、「フリーメイソンは、男の社交クラブのよう」と話しておりました。

●驚くべきフリーメイソンのメンバーたち

フリーメイソンについて調べていて、何よりも一番驚かされるのは、その錚々(そうそう)たるメンバーです。

モーツァルトやイギリスのウィンストン・チャーチル元首相、アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントン、アメリカ建国の父とされるベンジャミン・フランクリンなどがいます。

有力な市民でもあった多くのフリーメイソンがアメリカ独立革命に参加し、主要な役割を果たしたと言われております。アメリカ独立戦争でアメリカ側について戦ったフランスのラファイエット将軍もフリーメイソンでした。

東京メソニックセンターにある日本グランドロッジ室内(フリーメイソンのD.B.I.氏提供)
東京メソニックセンターにある日本グランドロッジ室内(フリーメイソンのD.B.I.氏提供)

アメリカの歴代大統領の中にも、セオドア・ルーズベルトやフランクリン・ルーズベルト、トルーマン、フォードなど数多くのフリーメイソンがいます。

連合国軍総司令部(GHQ)の最高司令官ダグラス・マッカーサーや、その腹心だったGHQ民政局長のコートニー・ホイットニーもフリーメイソンでした。

日本でも、台湾総督府民政局長を務めた後藤新平(第7代東京市長)や鳩山一郎元首相、さらには昭和天皇の叔父にあたり、戦後皇族で唯一首相になった東久邇宮(ひがしくにのみや)殿下もフリーメイソンでした。高須クリニックの高須克弥氏も自らがフリーメイソンであることを公言しています。

●シンボルマークはコンパスと直角定規

フリーメイソンのシンボルマークはコンパスと直角定規です。コンパスは欲望の自制心や克己心、直角定規は道徳規範や美徳をそれぞれ唱えています。

フリーメイソンのシンボルマーク(高橋浩祐撮影)
フリーメイソンのシンボルマーク(高橋浩祐撮影)

Gという文字が真ん中にありますが、それは英語で幾何学を意味するジオメトリーの頭文字から来ているという見方が一般的なようです。神を意味するGodの頭文字とのも見方もあるようです。

フリーメイソンは歴史的に悪魔崇拝をしているとか、世界を支配しようとしているとかいう陰謀論がありましたが、実態はチャリティーなどを行う親睦団体です。ロッジの中では宗教と政治の話をしてはいけないのが原則とも聞いております。

フリーメイソンは、秘密主義が良からぬ陰謀論を生んできたとの反省からか、近年はマスコミの取材を積極的に受け入れ、開放性や透明性をアピールしています。そして、会員も積極的に増やそうとしているようです。

2015年には過去190年分の200万人の会員名簿をインターネット上で公開しました。

筆者も先日、フリーメイソンである友人から、あるロッジの役員就任式への参加を誘われました。本業の軍事防衛の取材などがたてこんでおり、行けませんでしたが、そのバンケット(宴会)参加費用は8000円でした。

フリーメイソンについて、興味のある方にはショーン・コネリー主演の映画「王になろうとした男」がお薦めです。ネット上でも、フリーメイソンに関する数多くの動画をみることができます。

(参考文献)

橋爪大三郎氏著『フリーメイソン 秘密結社の社会学』(小学館新書)

米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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