その打率は運か実力か。巨人・大田の3割超えは難しい?
間もなく始まるプロ野球のキャンプ。注目ポイントの1つはレギュラー不在のポジションを争う選手達。新戦力はともかく、前年もNPBでプレーしていた選手について報道する時は昨季の成績を引用することが多い。その成績が出来過ぎだったのか妥当だったのかはある程度推し測ることが出来る。
BABIPは(安打-本塁打)÷(打数-三振-本塁打+犠飛)で計算されフェアゾーンに飛んだ打球の内、安打になった割合を示す。打ち損じや当たり損ないが内野安打になったり野手の間に落ちるということが多ければ、つまりBABIPの数値が高ければ、当然そのシーズンは高打率を残すことが多い。しかし、BABIPはシーズン毎の変動が大きく、例外はあるものの長い期間プレーすればほとんどの選手が平均すれば.300前後になる。そのためBABIPの数値が高いシーズンに高打率を残しても翌年以降も同じような打率を残すことは難しい。
例えば阪神、オリックスで活躍し昨季引退した平野恵一の通算打率は.279で通算BABIPは.323。キャリアハイは打率.350を記録した2010年だろう。ただしこの年はBABIPも.391と非常に高かった。前後のシーズンと比較すると
2009年 打率.270 BABIP.309
2010年 打率.350 BABIP.391
2011年 打率.295 BABIP.335
BABIPは内野安打が多い選手は.300よりも高くなる。平野は左打ちで俊足のため通算BABIPも高めになっているが、それでも4割近いBABIPのシーズンに記録した高打率を維持することは不可能だった。やはりBABIPが下がった翌シーズンには打率も下がっている。それをやってのけるソフトバンク・柳田はトリプルスリーだけじゃない。柳田が残した異次元の記録でも述べたが、ごく稀な例外だ。
昨季のBABIPはセリーグ首位打者のヤクルト・川端 が.372、年間最多安打記録を更新した西武・秋山が.395とやはり高い。好成績を残したシーズンだから当然だ。ただ過去3年間のBABIPは川端が.327、.332、330で秋山が.317、.300、.345だから今季も同等の活躍をすることは難しい。
他にも注目は、隔年でBABIPの高いシーズンと低いシーズンを繰り返す中日の大島は順番で言えば今季は高い数値を残すシーズン。巨人では毎年レギュラー候補として名前の挙がる大田だが、昨季の打率は.277でブレイクしたとは言えない数字。しかしBABIPは.389と非常に高かった。ということは今季の打率は下がることが予想される。打率を3割台に乗せ不動のレギュラーをつかむにはかなりの技術的進歩が必要となる。逆に期待したいのは阪神・大和。守備力は抜群ながら昨季は打率.225と苦しんだ。BABIPは.262。例年.300を超える数値を残していたから今季は打率向上が見込まれる。とは言っても大和の場合、元々打撃が課題で最高でも打率は.280に届いていない。ただこれまでは進塁打を狙って打つなど脇役に徹することが多かった。しっかり振らせる金本新監督の意向とマッチすれば大化けするかもしれない。