大学ナンバーワン投手、関大の金丸は何が凄いのか
今年のドラフトの投の目玉は関西大学のエース左腕、金丸夢斗(4年・神港橘)だ。最速154km/hのストレートと抜群の制球力はアマチュア最高レベルで3月には侍ジャパンの強化試合に飛び級招集された。大学ラストシーズンでも快投が期待されたが、春に痛めた腰の状態が万全でなく秋季リーグ開幕戦では登板を回避。それでも2回戦の9回に7月末の紅白戦以来となる実戦マウンドに上がると150km/h近いストレートを投げ込み満塁のピンチを切り抜けた。即戦力候補の好投手は毎年いるが、金丸の評価はその枠に収まり切らない。毎年いる好投手と数年に1人の逸材、金丸は何が違うのか。圧巻の成績がその凄さを表している。
球速◎制球力◎本塁打の心配なし
4年春までの通算成績は20勝3敗、奪三振率は11.78で防御率0.88。点を取られない負けない投手であることがわかる。投げるボールも別格だ。最速は昨年の明治大学とのオープン戦で計測した154km/h。金丸の凄いところは力を込めて投げ込んだ渾身の1球ではなくアベレージの球速だ。初回から9回までコンスタントに145km/h以上を記録する。勝ちパターンのリリーバーが9イニングマウンドに立っているような球速帯で押し切れる。しかも球の出所が見えにくいフォームのため体感速度はより速いものになるだろう。加えてパワーピッチャーにありがちな制球の乱れの心配も全くない。それどころか制球力こそが最大の武器と言っていいかもしれない。左右関係なく正確にインコースをつけ、昨秋から今春にかけて37回連続無四球を記録した。失点どころか四球を与えたことが話題になったレベルだ。
関西学生野球連盟のホームページでは個人成績のページが充実しており、1イニング当たりの球数まで公開されている。それによると金丸は1年秋には17.29球と球数の多いタイプだったが2年時は春が14.44球、秋には13.69球と減少。決め球スプリットの精度に磨きがかかり奪三振率を大きく向上させた3年春は16.69球と増加したが、秋は高い奪三振率を維持したまま13.98球に落ち着いた。フォームのバランス、再現性も高く今春は規定投球回到達者の中で最少の12.56球となっている。4球でバッタバッタと三振に打ち取る姿が目に浮かぶ。しかも今春のフェアゾーンに飛んだ打球が安打になった割合は17.8%でもちろんリーグ最少。通算被本塁打も224回2/3を投げて2本だけだ。
2桁奪三振の完封勝利が日常茶飯事
リリーバー並みの出力を9イニング維持出来てアウトの約半分を三振で奪い、前に飛ばされてもほとんどが弱い打球。四球による自滅は望めず待ち球戦法も通じない。関西の大学野球を観ている者にとっては2桁奪三振での完封が当たり前という感覚がおかしくなりそうな好投を続けている。実際、3年春から4年春までの成績を9イニングに換算すると5安打13奪三振1四球で0.69失点。これが金丸の"平均"だ。ドラフト候補に挙がる好投手の好調時のパフォーマンスを日常的に発揮出来る。過去数年を含めてもアマチュアナンバーワン投手という評価は揺らぎようがない。