飛ばないバット導入で高校野球はどう変わる?
来春から高校野球では安全性の配慮のため反発力を抑えた新基準のバットが導入される。夏の甲子園の大会本塁打数は史上最多の68本が乱れ飛んだ2017年を頂点に、2018年が51本、2019年が48本、2021年が36本、昨年が28本で今夏は23本と年々減少傾向。このペースと新基準バット導入となれば来年は20本塁打を切りそうだ。
統一球で本塁打は4割減、平均得点は1点下がった
プロ野球では2011年、2012年に反発係数の低い統一球が使用されていた。ボールが飛ばない時代にどんな変化があったのか。
まずわかりやすく本塁打数が半減し、得点も大きく減少した。2010年の本塁打数は両リーグ合わせて1605本だったが2011年は939本に。約59%にまで減少している。平均得点も2010年と2011年を比較するとセリーグは4.31点から3.41点に、パリーグは4.47点から3.15点と丸々1得点減っている。OPSはセリーグが.734から.643、パリーグが.739から.656と約1割違う。安打の中における長打の割合も30%前後から25%前後に減少した。
統一球の環境下では小技が重視されていた
戦術面にも変化が見られる。三振数に大きな違いはないものの四球数は5108個から4264個へと減った。ストライクゾーンの中で勝負することが増えていたようだ。攻撃面ではセリーグの犠打数が大きく増加した。2010年は750個だったが2011年は911個。これはNPBのホームページで確認出来る2005年以降の中での最多記録だ。盗塁に関してはセリーグとパリーグで反対のアプローチがあった。セリーグは盗塁企図数が671個から511個と少なくなったがパリーグでは759個から848個に増えた。盗塁を減らしてバントを増やしたのがセリーグで、盗塁もバントも増やしたのがパリーグとも言える。反発係数を抑えたボールの使用は事前に通達されていなかったため、チーム方針として多用したというよりはロースコアの展開が多くなる中で自然と選択されたものだろう。2012年の盗塁企図と犠打は両リーグともやや多めであった。そして統一球前の2010年と統一球後の2013年はほぼ同じ(セリーグが671盗塁企図と667盗塁企図、750犠打と758犠打。パリーグが759盗塁企図と781盗塁企図、745犠打と795犠打)。「得点確率を上げるためにはバントが有効」という考えが正しいかどうかは別として、統一球時代の2年間は細かい野球が重視されていたことになる。
守備はどうか。DER(Defense Efficiency Ratio)はフェアゾーンに飛んだ打球のうちアウトになった割合を示す。2010年はセリーグもパリーグも68%を下回る数値だったが2011年はセリーグが70.01%、パリーグが69.69%。2012年もセリーグが70.15%でパリーグが69.59%だった。DERはどのチームも毎年70%前後に落ち着き、大きく変動するタイプの指標ではない。実際に統一球問題明けの2013年もセリーグは69.03%、パリーグは68.79%と前年と同じ水準だった。偶然や誤差の範囲内かもしれないがそれでも2010年と2011年を比べて両リーグ共通で2%の変化というのは無視するには大き過ぎると感じる。強い打球が減ったことでアウトになるインフィールドの打球が増えたと考えるのが妥当ではないだろうか。
来年からの高校野球はこれまで以上にミスが命取りになりそう
高校野球での飛ばないバットの影響がどれほどのものかはわからないが投手有利に働くことは間違いない。程度の差はあれどプロ野球と同じ傾向になることが予想される。つまりバントと野手の打球処理機会は増加して四球が減る。本塁打の価値が高まる反面、アウトが取りやすい環境下では無駄な与四球、失策のマイナスがこれまで以上に重くなる。日本人好みのきっちりした野球が復権するのか、だからこそ打力でアドバンテージの取れるチームが突き抜けるのか。ファーストラウンドとなる来年3月の選抜に注目だ。