西日本は梅雨前線活発化で大雨に、東日本は梅雨の晴れ間で熱中症と紫外線に警戒
前線上の所々で強雨
令和2年(2020年)の梅雨は、5月10日に鹿児島県奄美地方で始まり、翌11日に沖縄地方でも梅雨入りしました。
最近は、沖縄地方よりも奄美地方のほうが先に梅雨入りとなる傾向がありますが、令和2年(2020年)もそうでした。
その後、5月30日に九州南部、6月10日から11日には関東甲信地方を含む広い範囲で梅雨入りとなりました。
6月12日には沖縄で平年よりかなり早い梅雨明けとなりましたが、その2日後の6月、14日に東北北部も梅雨入りしています(表1)。
現在、梅雨の中休みを挟んで、梅雨の後半に入っており、梅雨がないとされる北海道や、梅雨が明けた沖縄も含めて全国的に雨の所が多くなっています。
ただ、全国どこでも雨が降るのではなく、局地的に激しい雨が降る地域と、晴れている地域が混在しています(図1)。
これは、令和2年(2020年)の梅雨のこれまでの特徴です。
「梅雨の晴れ間」と「梅雨の大雨」
6月27日(土)は、東日本の梅雨前線が少し南下し、西日本で少し北上する予報です。
そして、北海道を低気圧が次々に通過する見込みです(図2)。
このため、北日本は黒曇マーク(雨の降る可能性がある曇り)か、雨マークとなりますが、東日本では快晴マークや晴れマーク、あるいは白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)となる見込みです。
東日本は梅雨の晴れ間になり、貴重な洗濯日和となるでしょう。
これに対し、西日本は雨マークや黒雲マークが多くなる見込みです(図3)。
しかも西日本の雨は、災害をもたらすような大雨で、しばらく続きます。
気象庁では、5日先までに警報を発表する可能性があるかどうかを、早期注意情報として発表しています。
この早期注意情報によると、九州では、27日(土)だけでなく、28日(日)、29日(月)、30日(火)も、大雨警報を発表する可能性が「高」または「中」です(図4)。
九州を中心に西日本は梅雨の大雨となりますので、厳重な警戒が必要です。
梅雨の晴れ間は高温注意
日本は一番暑い月というと8月になりますが、これは、7月は多くの地方で梅雨期間であり、曇りや雨の日が多いからです。
梅雨がなければ、一番暑い月は、太陽高度が一番高くなる夏至(2020年は6月21日)の少し後の7月です。
梅雨のない欧米の夏のバカンスシーズンが7月である所以です。
したがって、梅雨の晴れ間は太陽高度が高いこともあって気温が上昇します。
雨が多い時の気温上昇ですので、暑くて湿度が高く、熱中症に警戒が必要です。
梅雨の晴れ間は、毎年のように熱中症に警戒ですが、特に令和2年(2020年)は、新型コロナウィルスの出現に伴い、感染症防止の3つの基本である「身体的距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗いや3密(密集、密接、密閉)を避ける」等の「新しい生活様式」が求められています。
このマスク着用は、熱中症の危険性をさらに高めます。
マスクをつけていると、体の渇きを感知しにくく、水分補給が不十分になるといわれていますので、熱中症は普段より低い気温で発生すると考えたほうがよいでしょう。
令和2年(2020年)5月に、環境省と厚生労働省は「新しい生活様式」における熱中症予防行動をまとめていますが、この中で、屋外では人と十分な距離(2m以上)を取ったうえで、マスクを外すことを求めています。
梅雨の晴れ間は紫外線にも注意
太陽から地表に届く紫外線は、雲がなければ、太陽高度が一番高くなる夏至の頃が一番多くなります。
梅雨の晴れ間は、夏至の少し後ですので、紫外線が多く降りそそぎます。
図5は、茨城県つくばにおける紫外線のUVインデックスです。
細実線が平均値の推移で、UVインデックスが高いのは7月末から8月中旬です。
ここでいうUVインデックスは、利用のしやすさを考えた数値で、紫外線の強さに対応しており、数が多いほど紫外線が強くなっています(表2)。
6月から7月は梅雨によって雲が多いことで、平均すると、7月末から8月中旬よりは大きな値にはなっていません。
平均的にはこのような年変化をしますが、個々の観測値を見ると、極端に大きな日も散見されます。
夏季は、梅雨の晴れ間も含めて、晴れたら紫外線に注意です。
気象台等が発表する紫外線情報に注意して警戒して下さい。
紫外線情報の普及は平成2年(1990年)の猛暑
一般向けに紫外線情報を最初に発表したのは、日本気象協会で昭和63年(1988年)夏のことです。当時は紫外線を強弱4段階に分けていました。
最初は首都圏向けでしたが、翌年(平成元年)夏からは東北地方、平成2年(1990年)からは近畿と九州に対象範囲を拡大しています。
平成2年(1990年)は、梅雨明け後は各地で最高気温が35℃を越す記録的な猛暑となり、各地で水不足となっています。
特に西日本で猛暑が著しく、化粧品やストッキング、日傘などで紫外線防止をうたった商品が爆発的な売れ行きを見せ、紫外線情報が一気に普及しています。
平成2年(1990年)猛暑の4年後、平成6年(1994年)の猛暑の時は、神戸海洋気象台で予報課長をしていましたが、神戸市の須磨海岸で地元のラジオ局が海水浴客向け紫外線情報を頻繁に放送していたことが印象に残っています。
化粧品会社と日本気象協会がタイアップしての情報提供でしたが、気象情報がいろいろと加工して使われだしたと感じたからです。
時代は、気象情報がいろいろな分野で利用されるようになり、気象予報の自由化と気象予報士の役割が議論されている頃です(気象予報士の誕生は平成6年(1994年)8月)。
また、オゾン層が破壊されて地表に降り注ぐ紫外線が増えるのではないかとの議論が盛んになり、各国の気象機関が本腰を入れて紫外線情報を発表するようになった頃でもあります。
タイトル写真の出典:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート
図1、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。
図2、図5、表1、表2の出典:気象庁ホームページ。