梅雨とは思えぬ晴天は紫外線に警戒 紫外線情報を普及させた平成2年の猛暑
今年の梅雨入りは、速報では、九州と山口県では6月6日、関東甲信、近畿、東海、中国、四国で6月7日です。
しかし、今年は梅雨入りのタイミングが難しい年で、梅雨入り早々、東~西日本で晴天となっています。梅雨前線も消えています(図1)。
紫外線が強いのは太陽高度が高い6月
紫外線は可視光線より波長が短い光で、英語のultraviolet からUV と略され、波長の短い順にUVC、UVB、UVAと3つに分けられます。
波長が短いほど危険ですが、大気上層の電離層や大気中層のオゾン層よってほとんどが吸収されます。地表に届く紫外線は、有害紫外線UVBのごく一部と、生物に無害な紫外線UVAです。
紫外線は、太陽高度が高くなるにつれ増えますので、紫外線量が多いのは、夏至(6月21日)の頃です。ただ、この頃は梅雨によって雨や曇りの日が多く、平均すると、7 〜8月より紫外線が強くはありません。
ただ、日々の値をみると、6月の晴れた日には、強い紫外線量となっています。
そして、真夏ほど気温が高くはありませんので、長時間の屋外活動が苦になりません。
このため、浴びる紫外線量が多くなりがちです。
紫外線は、体内のビタミンDの合成を促し、また日焼けした肌には健康的なイメージがあります。しかし、紫外線UVBを浴びると、肌にシミができたり、皮膚がんや白内障といった病気が引き起こされる恐れがあります。また、肌を守るためのメラニンが生成されますが、このメラニンは日焼けのもとになります。
6月10日は紫外線に警戒
気象庁では、札幌、つくば(茨城県)、那覇で定期的に紫外線を観測し、平成17年(2005年)5月から日々の紫外線対策を効果的に行えるように、UVインデックス(紫外線の強さを指標化したもので世界共通、図2)を用いた「紫外線情報」を提供しています。
それによると、6月10日(土)は、梅雨のさなかとは言え、西日本を中心に紫外線が多く降り注ぎます(図3)。
紫外線が入体に及ぼす影響の度合いを示す指標(UV指数)をみると、太陽からの紫外線は、北半球では夏至のころに一番強くなりますが、6月は厚い雲に覆われることが多いため、平均では7、8月ほどUV指数が強くありません(図4)。
しかし、日々の値をみると、6月の晴れた日には7、8月と同じように強くなっています。
気象庁では紫外線の観測は昔から行ってきましたが、一般への紫外線情報の提供は、民間企業のほうが気象庁より早く行っています。
紫外線情報の普及は平成2年の猛暑
一般向けに紫外線情報を最初に発表したのは、日本気象協会で昭和63年夏のことです。当時は紫外線を強弱4段階に分けていました。
最初は首都圏向けでしたが、翌年(平成元年)夏からは東北地方、平成2年からは近畿と九州に対象範囲を拡大しています。
平成2年は、梅雨明け後は各地で最高気温が35℃を越す記録的な猛暑となり、各地で水不足となっています。
特に西日本で猛暑が著しく猛暑日の日数は大分県日田市で43日、京都市で28日、大阪市で20日に達しました。秋以降も太平洋高気圧の勢力が例年以上に強かったため、9月もやや高温になっています。
このため、化粧品やストッキング、日傘などで紫外線防止をうたった商品が爆発的な売れ行きを見せ、紫外線情報が一気に普及しています。
平成2年猛暑の4年後、平成6年の猛暑の時は、神戸海洋気象台で予報課長をしていましたが、神戸市の須磨海岸で地元のラジオ局が海水浴客向け紫外線情報を頻繁に放送していたことが印象に残っています。化粧品会社と日本気象協会がタイアップしての情報提供でしたが、気象情報がいろいろと加工して使われだしたと感じたからです。
時代は、気象情報がいろいろな分野で利用されるようになり、気象予報の自由化と気象予報士の誕生が議論されている頃です。
平成5年の気象業務法の改正により、気象庁以外のものが一般向け天気予報を行うことができるようになり、その予報を行う担当者の技能試験として創設されたのが気象予報士(第一回の試験は平成6年8月25日実施)です。
図2の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100、オーム社。
他の図は、気象庁ホームページより