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メルカリ「サポート強化」で何が変わる? 運営に聞いてみた

山口健太ITジャーナリスト
返品トラブルの対策が加わった(メルカリのWebサイトより、筆者撮影)

11月25日、メルカリはサポート体制の強化と補償範囲の拡大を発表。個人間取引のトラブルが話題になっている中で、対策を打ち出してきた形になりました。

今後のサポートはどう変わるのか、また過去に納得のいく対応を受けられなかった人はどうなるのか、運営に聞いてみました。

実物を確認する「商品回収センター」を開設

メルカリを始めとするフリマアプリでの個人間取引は、「自己責任」が原則とされています。

利用規約の第1条では、売買などはすべてユーザーの自己責任で、メルカリは取引の遂行に一切関与しないと明言されています。

第1条 本サービスの内容及び弊社の役割

本サービスは、オンラインフリーマーケットサービスです。ユーザー(次条で定義します。)間の物品の売買の場・機会を提供するもので、ユーザー間の売買契約、出品、購入等の保証等に関しては、すべて当事者であるユーザーの自己責任とし、弊社は自ら売買を行うものではなく、売買の委託を受けるものでもありません。弊社は、本規約中に別段の定めがある場合を除き、売買契約の取消し、解約、解除、返品、返金、保証など取引の遂行には一切関与しません。また、本サービスは、競りの方法(オークション)により物品の売買を行おうとする者のあっせんを行うものではありません。

メルカリ利用規約(強調部分は筆者によるもの)

オンラインに限らず、見ず知らずの人との取引には、本来はさまざまな危険が伴うはずです。そこでメルカリが間に入って仕組みを提供することで「比較的」安心・安全に取引できる環境が維持されているのが現状といえます。

今回の発表においても、基本は自己責任という建て付けは変わっていないものの、返品詐欺などを含む「お客さま間で解決が難しい問題」について、サポート強化や補償範囲を拡大するものになっています。

背景として、特に話題になったのが返品にまつわるトラブルです。メルカリで買った商品とは別のゴミなどを返品することで、購入者は商品を手元に残しつつ不正に返金を受けていたとみられる事例が報じられています。

なぜこんなに単純な詐欺をメルカリが見抜いてくれないのか、疑問に感じるところですが、メルカリとしても「実物」を見ていない以上、出品者と購入者の説明に食い違いがあった場合、判断を誤ることがあったと考えられます。

その対策として出てきたのが「商品回収センター」です。このセンターはすでに開設されており、「すり替え・模倣品などの商品回収」や「商品画像・説明などと商品実物の照合・調査」ができるとしています。

商品回収センターを新規開設したという(メルカリのWebサイトより)
商品回収センターを新規開設したという(メルカリのWebサイトより)

利用者向けには、ヘルプセンターの返品についてのページを更新し、「購入者から出品者へ返送された商品に問題があった場合」という項目に、商品回収センターについての記述があります。

返品詐欺を含むトラブルを想定したと思われる記述が加わった(メルカリのWebサイトより)
返品詐欺を含むトラブルを想定したと思われる記述が加わった(メルカリのWebサイトより)

また、「届いた商品が説明文と違う/壊れている」というページも更新されています。いずれも詳細は伏せられていますが、事務局の判断で商品回収センターの利用を案内する場合があるようです。

補償範囲の拡大についてはどうでしょうか。利用規約には、売買代金を上限とした補償についての記述があるものの、メルカリの担当者から個別に補償の連絡があったとの事例から、「SNSで騒がないと補償されないのか」と不満の声が上がっていました。

今回の発表では、「正しくご利用いただいているお客さまへの補償」という項目が加わっています。新たに開設した商品回収センターやオンライン本人確認を活用することで、不正利用に対策しつつ、補償の範囲を広げるとの判断に至ったようです。

補償の範囲を拡大したという(メルカリのWebサイトより)
補償の範囲を拡大したという(メルカリのWebサイトより)

とはいえ、メルカリの取り分となる販売手数料は10%のまま変わっていません。補償の負担が大きくなれば、やがては手数料の値上げやサービスレベルの低下につながるなど、正しく利用している人に不正利用のコストを転嫁する事態にならないか、懸念されます。

この点については「不正利用者の排除」として、本人確認の対象拡大や警察などとの連携強化、監視の徹底といった対策が入っています。

不正利用者の排除についての方針も加わった(メルカリのWebサイトより)
不正利用者の排除についての方針も加わった(メルカリのWebサイトより)

個人間取引で被害に遭った利用者は、警察などに相談して解決を図ることになりますが、そのためには大変な手間がかかります。被害金額にもよりますが、実際には泣き寝入りする人が多いのではないでしょうか。

しかしメルカリが補償をすることによって、これが「メルカリ」対「不正利用者」の構図に変わります。メルカリが不正利用の排除に積極的に取り組む動機付けになるのではないかと期待したいところです。

もちろん、メルカリによる補償を狙った新たな詐欺が出てくる可能性もゼロではないものの、個人を相手にした詐欺に比べると、メルカリのような企業を相手にするのはかなりハードルが高そうです。

ところで、過去に起きたトラブルについてはどのような扱いになるのでしょうか。SNSに上がっている報告を見ていると、サポートの手違いによって濡れ衣を着せられ、アカウントの凍結に至ったような事例もあるのではないかと思われます。

メルカリ広報によれば、サポート強化の方針は新しい取引のみが対象ではなく、過去の取引についても問い合わせを受け付けるとのことです。過去のトラブル対応に納得していない人は、あらためて問い合わせをしてみる価値があるかもしれません。

「自己責任」だけでは片付けられない事態に

個人間取引ではない選択肢として、中古業者を利用するのはどうでしょうか。筆者も個人的にフリマアプリは利用していますが、トラブルに遭うと面倒なので、高額の商品については業者に下取りに出すことが増えています。

もし何も問題が起きなければ、フリマアプリのほうが欲しいものをより安く買えて、不要品をより高く売れることが期待できます。しかしその「差額」は、取引のリスクを自分で被ることに対する報酬ともいえるわけです。

ただ、本来であればリスクの大きい個人間取引が広く普及してしまったことで、「自己責任」だけでは片付けられない事態になりつつあるのが現状でしょう。トラブル解決にあたって、メルカリに警察のような役割を期待する人が増えているのもそうした背景があるように思います。

利用者目線では、あたかもメルカリが不正利用者を放置しているかのように見えているかもしれません。絶対的な数としてはごくわずかだとしても、それが大きく報じられることでイメージダウンにつながり、社会貢献エコへの取り組みも効果が薄くなりかねません。

また、一般に不正利用においては仕組みが最も弱いところが狙われる傾向にあります。メルカリが対策を強化したことで、不正利用を狙う人が他のフリマアプリに流れることはないか、注意を要します。

最近、クレジットカードの不正利用に対しては業界各社が連携した事例がありました。フリマアプリについても各社の連携を期待したいところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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