Google独占禁止法違反 制裁金は消費税並みで制裁になっていない…
KNNポール神田です。
2023年10月23日(月)Googleが不当に優遇させたとの疑いで、日本の公正取引異委員会が、独占禁止法の疑いで審査と募集を開始した。
■なぜに?今頃なのかの今さら感が否めない。懲りないGoogle
欧米では、何度となく『Google』は公正取引委員会相当の組織から関心を寄せられている。
2019年、EUの欧州委員会がAndroid端末における抱合せで14.9億ユーロ(1,900億円)の制裁金を命令。これで3度目。しかし、Googleは、まったく懲りていない。制裁金を支払っても十分なメリットとお釣りがあるからだ。
■AppleへのGoogleからのリベートは、120億ドル(1.7兆円)超えに
2020年、米司法省と11州が、反トラスト法(独占禁止法)違反としてGoogleを提訴。Appleなどにリベートを年間120億ドル(1.7兆円)程度、支払っていることが明るみになった。
これは、2014年頃からGoogleの『検索エンジン』をAppleのSafariでデフォルト採用することによって、Googleの広告収入の1/4近くをAppleらに支払っており、その金額は前年比で150%で成長している。Appleは全世界で20億台以上ものスマートフォンの『iPhone』が稼働しており、Googleの広告のシェアの半分を握っているからだ。
2019年には120億ドルと推定されている。それでも4年以上も前の話だから現在ではさらに上昇していると考えられる。
■Googleに『独占禁止法』での制裁金を命令しても無意味な理由は消費税程度だから
Googleの合理的な判断の一つとして、制裁金が安すぎるからではないだろうか?
2017年から欧米で支払い続けている制裁金は、Appleなどに支払っている広告収益からの分配リベートと比較すると、約1割程度である。つまり、リベートに対して、日本の消費税10%程度の『制裁金』が外税としてかかっている認識に近い。Appleへのリベートが向上していると、8%、5%、3%というかつての日本のかつての消費税程度かもしれない。
そして、制裁金さえ支払えば何の罪に問われることもないという現在の法律は、消費者に対して、何のメリットもアンチのモチベーションも生んでいない。
■『独占禁止法』がもはやデジタルプラットフォーマーに適応していない
2023年9月12日にも、現在、米国での司法省において、Google側の口頭弁論が開始されている…。
しかし、これらのアナログ時代に制定された概念による『独占禁止法』が、デジタルプラットフォーマーによる社会の弊害が及ぼす影響が、もはや時代にフィットしていないと思える。
重大な競争がなくなった同社は技術革新が弱まり、個人情報保護など他の懸念要素への関心も薄らいだと弊害を指摘とあるが…、Googleでなく、利用者の一人としても、どこか見当違いな弊害の指摘と感じる。
Googleは常にこの独占禁止法問題では、『Googleが便利だから』と答弁している。サービスそのものの品質が悪く、排他的なポジションを取っていれば、かつてのマイクロソフトの独占禁止と同様であるが、現在のGoogleで不満は得にない。
そして、そのうえ、交渉によってAppleらが巨額のリベートを受け取っているのであれば、独占禁止法上で考えると、むしろ、ハードウェア、OS、サービス、アプリケーション、SNSなどの細かな分離をちらつかせるべきだろう。
金銭的な制裁だけでは、単なる『みかじめ料』的な意味あいでしかない。
今回の日本の『公正取引委員会』でも、これは、勝ち目があると見込んでいるのではないだろうか?欧米ほど、日本のAndroid市場は大きくないが、少なくとも制裁金がまかりとおれば、150億円ほどは見込めるだろう。
しかし、それは消費者の保護にも、技術革新の促進でもないような気がしてならない。そして、現在は、名指しをして、情報と意見を集めているという段階である。
■Google LLCらによる独占禁止法違反被疑行為に関する審査の開始及び第三者からの情報・意見の募集について
■情報・意見募集の対象となる独占禁止法違反被疑行為は下記の通りである。
そして、これらの情報と意見の提出を求めるという形式での調査を開始している。
■住所、氏名(法人又は団体の場合は、主たる事務所の所在地、名称及び情報・意見提出者の氏名)及び連絡先(電話番号又は電子メールアドレス)を明記の上、郵送・電子メールのいずれかの方法により日本語にて提出してください。
[情報・意見の提出先]
<郵送の場合>
公正取引委員会事務総局審査局第四審査上席(デジタルプラットフォーマー担当)
〒100-8987 東京都千代田区霞が関1-1-1 中央合同庁舎第6号館B棟
ga_2023-○-jftc.go.jp の「@」を「-○-」としております。
情報提供だけならば匿名でも良さそうなものだが、住所・氏名・法人・団体名が求められているので奇譚のないタレコミ情報は期待ができそうにない。
ただし、『御提出いただいた情報・意見の内容に不明な点があった場合等の連絡に利用するものであり、この連絡以外の目的では利用しません』とある。
そして、期限は 2023年令和5年11月22日(水)18:00必着
■公正取引委員会の使命ー新時代の競争政策ー『エンフォースメントとアドボカシー』は意味不明
この突如として、発生したこのような審査活動は、昨年2022年くらいからの、『エンフォースメント及びアドボカシー』というよくわからない使命があるようだ。
社会経済環境の変化に的確に対応したエンフォースメント及びアドボカシーを行うこととされた。
https://www.jftc.go.jp/soshiki/profile/shimei/index.html
昨年2022年の6月16日の文書
デジタル化等社会経済の変化に対応した競争政策の積極的な推進に向けて【抜粋】
―アドボカシーとエンフォースメントの連携・強化―という文書が別紙として添付されている。
一番の変化は、 個別事件に係る情報・意見の募集 のである。
これまで、公正取引委員会は、事件審査や関係事業者に与える影響を考慮し、当委員会が措置を講ずる(又は審査を終了する)段階までは、個別事件の審査について公表を行っていない。
他方で、デジタル・プラットフォーム事業者の取引やビジネスモデルはオープンに行
われ公知の事実となっている場合が多く、こうした行為に関する競争上の懸念を提起する個別事件の審査を公表することによる審査活動等への影響は、秘密裡に行われるカルテル・入札談合等の場合に比べれば大きくないと考えられる。
むしろ、こうしたデジタル・プラットフォーム事業者の行為の影響は多面的でかつ広範囲にわたることが多く、その市場に与える影響を正確に分析するには、広範囲の事業者等から多様な情報を収集する必要がある。
このため、デジタル・プラットフォーム事業者に対する事件等において、情報収集を効率的・効果的に行う必要がある場合は、公表に伴う審査活動等への影響も慎重に比較衡量した上で、個別事件の審査の初期段階等であっても、事件の概要を公表して、広く第三者から情報・意見を募集する。
この場合、公表して情報・意見を募集する旨を事前に審査の対象となる関係事業者に通知するとともに、審査の対象となるその①事業者名及び②違反被疑行為の概要を明らかにする。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/oct/231023honbun.pdf
■日本では、どのように展開されるのか?
Googleのもはや心配事は、独占禁止法ではなく、生成AIにおける検索行動の変容かもしれない。
しかし、現在のところ、GoogleBardやGoogleSGEなどで、OpenAIの『ChatGPT』の新機能などと対峙している。
しかし、日本という、米国、中国、日本という単一国家では3番目の市場、実質、中国ではGoogleのサービスそのものが使えないので、実質2番目のマーケットでの独占禁止法は米国同様に最終的には制裁金というおとしどころになることだが、果たして、そのための調査活動や報告などの時間コストのほうが、技術革新を弱めてしまわないだろうか?
まずは、日本の中でもGoogleに対抗できるサービスを提供できる事業者がいることが大前提だ。競合するライバルがいない市場で、『独占』を証明するのはとてもむずかしい。
それでもGoogleからの制裁金を取ることで国益が潤うという判断をするのだろうか?