安倍政権の「ネギ鴨外交」がトランプ政権との交渉を不利に導く
フーテン老人世直し録(278)
睦月某日
米国のトランプ大統領は、オバマケアの見直し、TPP離脱、メキシコとの「壁」の建設、移民の制限強化など次々に大統領令に署名して選挙公約の実行を国民にアピールしている。オバマ時代の記憶を1日も早く消し去りたいようだ。
「ケミストリーが合わない(相性が悪い)」とみられたオバマ前大統領に安倍総理は「ネギ背負った鴨が這いつくばる」ように取り入り、日米同盟の復活強化を大々的に宣伝したが、トランプ大統領への交代によって再び「ネギ鴨」を演じなければならなくなった。
安倍総理にとってトランプ大統領とは「反リベラル」という共通項があり、オバマ前大統領よりケミストリーは合うはずだが、しかしオバマ時代に築いた日米関係をすべてゼロにしなければ許してもらえない。今度の「ネギ鴨」はこれまでより厳しくなることが予想される。
第一次政権時代の安倍総理にとって最大の敵は実は小泉純一郎元総理であったというのがフーテンの見方である。小泉元総理は安倍総理を後継指名して育て上げるつもりでいたが、安倍総理は就任するや否や、小泉総理が自民党から追放した郵政民営化反対議員たちを自民党に復党させた。
飼い犬に手を噛まれた思いの小泉元総理は中川秀直幹事長を通じて安倍政権をコントロールしようとし、安倍総理と中川幹事長の間には終始隙間風が吹き続けた。また小泉元総理の靖国参拝が日中関係を悪化させたことで安倍総理は自らの靖国参拝を封印せざるを得ず、それが支持者を裏切ることにもなった。
しかも誰もが認めるブッシュ・小泉の盟友関係に安倍総理は立ち入ることができない。米国の信頼を得たい安倍総理はインド洋で海上自衛隊が米軍に給油活動することを国際公約したが、2007年の参議院選挙で自民党が惨敗し国際公約を果たすことが難しくなった。
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