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朝倉海が絶賛する18歳・秋元強真は「RIZINの新エース」になれるのか?その可能性を考察─。

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
RIZINデビュー戦を勝利で飾った秋元強真。左は朝倉海(写真:RIZIN FF)

目指すは「RIZIN 2階級制覇」

「誰も勝てなくなると思いますよ。先に言っておきます、これからのRIZINは彼が引っ張ります」

朝倉海(JTT)が話していた通り、圧倒的な強さでRIZINデビューを飾った。

9月29日、さいたまスーパーアリーナ『RIZIN.48』第3試合で金太郎(ATT)を1ラウンドTKOで下した秋元強真(JTT)のことである。

序盤にカーフキックをもらい、グラウンドの展開に持ち込まれもしたが落ち着いて対処、その後に左ストレートをタイミングよくヒットさせる。すぐさまグラウンドでヒザ蹴りを見舞い金太郎を戦闘不能に追い込んだ。

196秒の衝撃─。

秋元は、この圧勝劇で一気にファンの心を掴んだ。

朝倉海は言う。

「ある日、JTTで練習していた時に(ジム生が)スパーリングをしているのを何気なく見ていたら、滅茶苦茶いい動きをする奴がいたんです。コイツ、普通じゃないなと。それで話を聞いたら、格闘技を始めて3年しか経っていないと言うので『ガチでヤバイ奴が来た』と思いました」

今年3月のことだ。以降、秋元は朝倉ともスパーリングをするようになる。

秋元は、ディープなファンからは、昨年辺りから知られた存在ではあった。

6歳から始めたサッカーを中学性まで続けたが、テレビで観た朝倉兄弟の闘いに強い衝撃を受け総合格闘家を目指すようになる。

高校進学はせず格闘技に専念することを決意、地元・千葉のパラエストラ柏(現THE BLACKBELT JAPAN)に入門した。アマチュアでキャリアを積んだ後、2022年6月『GLADIATOR 018』で宮川日向(SMOKER GYM)に判定で勝ちプロデビューを飾る。以降は『DEEP』に参戦し3試合連続で1ラウンド勝利を収めている。

今年3月に、さらなる高みを目指すために朝倉兄弟のいるJTTに移籍。直後、AbemaTVの企画イベント『格闘技代理戦争 THEMAX』に出場することになる。朝倉未来(JTT)の推薦だった。

ここでRIZINファイターのアラン・ヒロ・ヤマニハ(ブラジル/ボンサイ柔術)と対戦、前評判を覆してTKOで勝利。ここでの試合内容が高く評価され、また朝倉兄弟からのプッシュもあり、秋元はRIZINのリングに辿り着いた。

バンタム級(61キロ以下級)でありながら、身長177センチ、リーチも177センチ強。これは規格外のサイズだ。それでいて反応能力が極めて高いオールラウンダーで、6戦全勝(5KO&一本)の戦績が示す通り「倒して勝てる」選手。まだ18歳で伸びしろも十分にある。

サウスポー同士の対決。果敢に攻める金太郎(右)に対して秋元は冷静に試合を進めた。反応能力と打撃精度の高さ、勝負勘の良さを18歳の新鋭がファンに見せつけた(写真:RIZIN FF)
サウスポー同士の対決。果敢に攻める金太郎(右)に対して秋元は冷静に試合を進めた。反応能力と打撃精度の高さ、勝負勘の良さを18歳の新鋭がファンに見せつけた(写真:RIZIN FF)

フィニッシュシーン。左ストレートで金太郎を倒し、最後はヒザ蹴りで決めた。秋元の技を繋ぐ動きの速さには目を見張るものがあった(写真:RIZIN FF)
フィニッシュシーン。左ストレートで金太郎を倒し、最後はヒザ蹴りで決めた。秋元の技を繋ぐ動きの速さには目を見張るものがあった(写真:RIZIN FF)

大晦日、秋元の対戦相手は?

金太郎に勝利した後に、秋元は言った。

「生意気なことを言っていたのでプレッシャーも感じていましたが、勝てて安心しました。それに気持ちよかったです。RIZINは、ずっと目標にしていた舞台。目指すは、バンタム、フェザーの2階級でチャンピオンになること。

皆が望んでくれるなら、大晦日にバンタム級のベルトに挑みたい気持ちもあります」

この日の『RIZIN.48』では、バンタム級王座決定戦も行われ、キム・スーチョル(韓国)を1ラウンドTKOで下した井上直樹(キルクリフFC)が新チャンピオンとなった。

UFCでの闘いも含め18勝4敗の戦績を誇る井上と秋元では、キャリアに大きな開きがあるが、実力的には拮抗しているようにも思う。組まれれば面白い。だが、さすがにRIZIN2戦目でタイトル挑戦はないだろう。

秋元の次戦は、おそらく大晦日。対戦相手は、バンタム級上位ファイターになるのではないか。

牛久絢太郎(ATT/元RIZINフェザー級王者)、太田忍(THE BLACKBELT JAPAN/リオ・デ・ジャネイロ五輪レスリング銀メダリスト)、あるいは佐藤将光(坂口道場一族/Fight Base 都立大)─。

実現すれば、ここは大勝負。勝てば王座挑戦が見えてくる。

格闘センス抜群の超新星・秋元強真が、朝倉兄弟が去った後の「RIZIN新エース」になる。その予感あり─。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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