欧州の新型ロケット、軌道上で不具合発生 「アリアン6」打ち上げに成功するもエンジンを再点火できず
7月10日、ヨーロッパの新型主力ロケット「アリアン6」の打ち上げが行われました。超小型衛星の軌道投入には成功しましたが、その後のエンジン再点火ができないというトラブルに見舞われます。
本記事では、アリアン6とはどんなロケットなのか、そして今回の打ち上げで何が起こったのかについて解説していきます。
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■ウクライナ情勢により窮地に立たされた欧州ロケット市場
アリアン6は、ヨーロッパが新たに開発した大型ロケットです。全長は56mであり、H3ロケットの57mと同程度の大きさとなっています。形態はアリアン64とアリアン62の2機種が開発されており、それぞれ固体ブースターの本数を4本か2本に変えることで打上げ能力を変える計画です。
一つ前のシリーズである「アリアン5」は、1996年の初打ち上げから欧州の主力ロケットとして運用されてきましたが、2023年に退役となりました。また、固体ブースターをアリアン6と共用で使用している欧州の小型ロケット「ヴェガC」も、2022年の打ち上げ失敗から運用が停止されています。
そして、後継機として開発されたアリアン6は当初、2020年の打ち上げが計画されていました。しかし、コロナウィルスや、ウクライナ情勢の影響などを受け、2024年まで打ち上げに遅延が発生したと考えられています。さらに、ロシアのロケットが自由に使えなくなってしまったという背景から、アリアン6は打ち上げ前から予約が一杯になっているとのことです。そのため、主力ロケットに空白期間が空いている欧州にとって、今回の打ち上げは何としても成功させる必要があったのです。
■アリアン6の初打ち上げを遂に実施
そして本日7月10日、アリアン6はフランス領のギアナ宇宙センターから初めての打ち上げが行われました。ロケットは順調に上昇、所定の軌道に到達します。そして、搭載していた小型衛星の軌道投入にも成功しました。
その後、ロケットは軌道上でスペースデブリとならないよう、地球の大気圏へ再突入させることで燃え尽きさせるというコントロールを行います。しかし、燃料タンクの加圧装置にトラブルが発生、ロケットを大気圏へ突入させるためのエンジン再点火を実施することができませんでした。これにより、再突入カプセルの分離なども実施できなかったとのことです。
直接的な原因は現在調査中とのことですが、小型衛星の軌道投入まで成功したことから、今後はH3ロケットの競合相手としても台頭することが予想されます。これから激化する宇宙開発ビジネスにおいて、欧州の動きにも要注目です。
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